子どもが言い訳ばかりする本当の原因は「親の間違った怒り方」
何度も同じ間違いを繰り返したり、注意しても言うことを聞かなかったり…つい子どもにイライラして、感情任せに怒ってしまうことに悩む親御さんは少なくないでしょう。かつて同じように育児に悩みを抱えていた野村恵里さんは、子どもを叱る時に気を付けるべきポイントは4つあると語ります。親子の気持ちをラクにする叱り方について紹介します。
※本稿は野村恵里著『とっさの怒りに負けない!子育て』(すばる舎)から一部抜粋・編集したものです。
野村恵里(感情保育学研修所代表)
日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントコンサルタント(R)。社会福祉法人旭川荘厚生専門学院児童福祉学科特任講師。保育士として20年勤務。二人の息子へのイライラで爆発寸前の時にアンガーマネジメントに出会う。適切に怒る方法や、子どもに響く伝え方を会得したことで、子どもとの関係も良好になり、子育てが一気にラクになることを実感する。2014年から保育者養成校で勤務する傍ら、アンガーマネジメントの伝え手として各地で保育・教育・子育て現場で講演活動を行っている。実感のこもった、当事者目線の情熱的な講演は人気を博している。
「怒るときのコツ」は4つある
怒るときの口癖ってありませんか? 私がよく使っていたのは「いい加減にしなさい!」「何回言ったらわかるんよ!」というセリフでした。人によっては、「絶対ダメ!」「前にも言ったでしょ!」「お兄ちゃんが悪い!」「なんでそんなことしたの?」なども、あるあるのフレーズではないでしょうか。
実はこれ、アンガーマネジメントでは、やってはいけない怒り方の代表的な台詞です。
「やってはいけない怒り方」は次の4つです。
1. 「怒る基準」を機嫌の善し悪しで変える
2. 関係ないことを持ち出す
3. 原因を責める
4. 一方的に決めつける
これさえ気をつければ、NGな怒り方をする頻度が減っていき、上手に怒れるようになります。では、具体的に見ていきましょう。
1. 機嫌の善し悪しで、態度を変えない
×イラッとしたら、気分に任せて怒る
〇イラッとしたら、「怒る理由を説明できるか」を考える
子どもが粗相したとき、ママの機嫌によって怒ったり怒らなかったりすることはありませんか?
これをやり続けると、子どもまで落ち着かない行動が目立つようになってしまいます。それは、一番身近な存在であるママの機嫌がダイレクトに子どもに伝わるからです。
それに、ママの機嫌や気まぐれで怒り続けていると、子どもの善し悪しを判断する基準が「ママの機嫌」になっていきます。これが、怒る基準を機嫌で変える怒り方がNGであることの理由です。
例えば、子どもが「牛乳をこぼした」とします。ゆとりのある休日なら、「気をつけなさい」と注意する程度にとどめたのに、朝の忙しい時間にこぼされると、イライラして烈火のごとく怒ったとします。このとき、子どもから「なんで今日は怒るの?」と聞かれたらどう答えますか?
今の私なら具体的な理由が伝えられないので言葉に詰まってしまいます。でも、当時の私は堂々と、「あんたがこぼすからでしょ! 文句言わんの!」と、言っていました。自分の機嫌が悪いからなんて、絶対に言えないですからね。
それでは子どもは、納得できませんよね。でも、仕方ないから「今日は母ちゃんの機嫌が悪いから怒っているんだ」と無理矢理、自分を納得させていたのかもしれません。
このように、同じ出来事に対してママの機嫌が良いときには怒られない、でも、機嫌が悪いときには怒られる、という経験をした子どもはとっさにママの顔色を伺うようになります。
この怒り方では、いくら大切なことを伝えようと思ったとしても、その真意が伝わりにくくなってしまいます。
上手に怒るためには「怒る基準を機嫌で変える怒り方はNG」なのです。怒るときは、「怒っている理由を子どもに説明できるか」を意識してみてくださいね。
2. 関係ないことを持ち出さない
×「過去の話」を持ち出して怒る
〇「今、伝えたいこと」を1つに決める
子どもに何度注意しても、同じことを繰り返すことはありませんか? 私も「またやってる!」と感じることはしばしばあります。でも、怒るときに、過去のことを持ち出すのはNGなのです。
「また牛乳をこぼしたの!? こぼさないでって、この前も言ったよね。保育園でも給食のときのお茶を、こぼしたんでしょう。いい加減、こぼさずに飲めるようにしなさい!」
こんなセリフ、言ったことありませんか? これにはいくつもの情報が含まれている上に、「いい加減、ちゃんとしなさい」という、曖昧な言葉で伝えているので、子どもはどういう状態がちゃんとしたことになるのかさえわかりません。
怒るときは、今一番伝えたいことを1つに決めて怒りましょう。そして、怒りっぱなしにするのではなく、どうすれば問題が解決するかを一緒に考えてあげましょう。
「コップを持つときは、両手で持つようにしてみようか」
「手が当たってこぼれないように、机の奥側にコップを置くようにしてみようか」
「左手でコップを持たずに、右手(利き手)で持つようにしてみようか」
と、改善できそうな提案をするイメージです。さらに、
「こぼさずに飲めるようになると、今より楽しくご飯が食べられるね。ママもこぼさずに飲めるようになると嬉しいよ」
このように、子どもにとってもママにとっても、この先の未来は「HAPPYなんだよ」というイメージを具体的に伝えられるといいですね。