激動の中東、ウクライナ…なぜ争う? 親が子どもの疑問に答えるための「地政学」

監修:出口治明

大陸の心臓部「ハートランド」 海岸に沿った「リムランド」

ここでは、「ランドパワー」「シーパワー」の特性をもつ領域について説明するよ。

ランドパワーをもつ領域は「ハートランド」。「ハート」は「心臓」という意味で、代表的なのはロシア。雨が少なくて農業には不向き、広いユーラシア大陸の中央部にあって、北側の海はこおってしまい、こおらない海には遠いんだ。「ハートランド」と名付けたのは、イギリスのマッキンダーという地理学者。ハートランドを支配できれば、各地を結ぶ道を通ってアジアにもヨーロッパにも中東にも行ける。マッキンダーは、ハートランドをおさえれば世界を制することができるといったよ。

もうひとつのハートランドが、アフリカ大陸。砂漠や草原地帯で閉ざされているところが「北のハートランド」であるロシアに似ていることから、「南のハートランド」とよばれているよ。

一方、アメリカの政治学者スパイクマンが提唱したのが「リムランド」。「リム」とは「周縁」という意味。リムランドはハートランドをぐるりと囲っている沿岸の領域で、雨が多くて農業に適していて、比較的温暖で人が住みやすい。海が近いので貿易にも好都合。インドやオランダ、スペイン、フランスなどだよ。

リムランドではランドパワーとシーパワーがせめぎ合う

陸のハートランドと海沿いのリムランドを比較してみると、人が暮らす上で厳しい環境にあるのはハートランド。歴史的に、ハートランドの国はランドパワーを発揮し、あたたかくて暮らしやすい場所を求めて常に南に向かって勢力をのばそうとしてきた。

その南にはリムランドの国々が位置していて、シーパワーでむかえうつ。だからランドパワーとシーパワーは、たびたびリムランドで衝突としてきたんだ。歴史的な例としては、ランドパワーのソ連(今いまのロシア)と中国が北朝鮮を支援し、シーパワーのアメリカが韓国を支援して争った朝鮮戦争(1950~1953)、1960年代には、ソ連が北部を、アメリカが南部を支援して争ったベトナム戦争があったよ。争いの舞台となった朝鮮半島もベトナムも、沿岸部に位置するリムランドなんだ。

土地だけでなく、太平洋や大西洋といったワールドシー(大海)につながるマージナルシー(縁海か)も重要な場所。上の地図にある通り、リムランド沿いの海をマージナルシーというよ。海路をもたないハートランドの国は、ワールドシーに出ていきたいんだけど、そのためにはリムランドとマージナルシーを手に入れる必要がある。一方リムランドの国は、マージナルシーを明けわたすわけにはいかない。そこでせめぎ合いが起こるんだ。

(監修:出口治明 立命館アジア太平洋大学学長)

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