文字に表れる子どもの心理状態とは? 筆跡から読み取る本音と解決策

石﨑白龍

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筆跡診断士として2万人の子どもたちに筆跡改善の指導をしてきた石﨑白龍さんは、「心が整えば文字が整うのと同時に、文字が整えば心が整う。心が整うと、成績アップにもつながります」と言います。欧米では100年以上の歴史を持つ「筆跡心理学」の観点から、文字に表れる心の問題やその改善方法について石崎さん解説してもらいました。

※本稿は、石﨑白龍著『頭がよくなる! 集中力アップ! 小学生のための文字練習帳』(かんき出版)の一部を再編集したものです。  
 

筆跡を改善して、悩みや心の問題点を解決する

「字は人を表す」という言葉があるとおり、文字には、書いた人の性格や心理状態がはっきりと表れます。

欧米では、筆跡診断は「筆跡心理学」として広く普及し、多くの人が自分の個性を伸ばしたり、才能を開花させるために診断を受けています。

たとえば、ハネるべきところをハネていない文字を書く人がいたら、筆跡診断士は「ハネがない」という問題点に着目し、「この人はやる気をなくしている可能性がある」と診断します。

ここで、「やる気のなさ」から脱却するために行うアプローチこそが、筆跡改善です。

つまり、文字トレーニングを通して筆跡を改善することで、その人が抱えている悩みや、心の問題点を解決していくのです。

「心が整えば文字が整う」は同時に、「文字が整えば心が整う」ということですね。

私は、20代で書道教室を開き、後に筆跡心理学の草分け的存在である森岡恒舟氏に師事して、筆跡心理学を筆跡診断士としての活動を30年、子どもの筆跡を専門に研究をはじめてからは23年目をむかえます。

現在は、私が2万人の子どもたちの文字と向き合い、「改善前」と「改善後」のデータ収集をして研究を進め、つくり上げてきた「石﨑白龍メソッド」をベースに、教室で子どもの筆跡改善の指導をするほか、大学、社会福祉協会、教育委員会、家庭教育大会、小学校や中学校で「子どもの書いた文字からその心理状態をいち早くキャッチする」をテーマに、セミナーや講演活動を行っています。

心が楽になれば自ずと成績が変わってくる

「いじめ」「不登校」「ひきこもり」がニュースで取り上げられるたびに心を痛めていた私は、「子どもの文字から心のSOSを受け取り、手を差し伸べなければ」という一心で文字改善を行ってきました。

長い間指導を続けていると、「気持ちが落ち着くようになった」という声のほかにも、「文字改善をしたら成績が上がった!」という声が寄せられるようになりました。そこで「成績アップ」をテーマにデータを集めて分析したところ、週に2回のペースで文字改善を行った子の多くが、約半年で成績が上がっていたことがわかったのです。

とはいえ、文字改善によって効果が得られるのは成績ではなく、あくまでも心。文字改善によって「落ち着きがない」「自信がない」「やる気がない」「感情的でキレやすい」「逆境に弱い」といった心の問題をとりのぞくことで、向上心や集中力や忍耐力が高まり、その結果として成績がアップするのです。

我が子の成績を上げ、優秀な学校に入って立派な人生を歩んでほしいという親心は痛いほどわかります。でも、だからといって強制したり、うまくできないことを叱ったりして、お子さんの心が暗くなってしまっては元も子もありません。何よりも大切なのは、お子さんが楽しみながら文字改善に向かうことです。

親御さんや、指導にあたる方には、「楽しみながら文字改善をしたら、心が楽になって、成績もアップした」という流れをつくっていただければと思います。そして、できればお子さんと一緒に文字トレーニングを行い、子どもを見守るためのゆったりとした心を整えていただきたいと思います。

筆跡診断の具体的なポイント

「文字を見れば心がわかる」とはいっても、お子さんの文字に注目して分析したことのある方は少ないはず。ですので、私がお子さんの筆跡診断をするときに、とくによく見ているポイントと、指導の流れについて一部をお伝えします。

嫌がる子に無理強いはせずポジティブに

たとえば、一例として「あ」の文字をピックアップして見てみましょう。

文字のくせからわかること

1.頭部が出すぎている子はお山の大将タイプ。人の話に耳を傾けるのが苦手。

2.二画目がズルズルと止まっていない子は、やりっぱなしの傾向がある。逆にグッと止まるのは、萎縮している子に多く見られる。学校でいじめられていたり、プレッシャーがあったりすることで、自由に表現できずにいる可能性も考えられる。

教えるときのポイント

1.極端に頭部が突出している子はプライドが高いので、アドバイスの仕方に注意が必要。頭ごなしに言わず、「あれ? 先生が書いたお手本と違うんじゃない?」「もう少しここ(頭部)を控えめにするとかっこいい字になるよ」など、ダメ出しではなく、こうすると「もっとかっこよくなる」「もっといい子になれる」と伝え、その気にさせるよう努めましょう。

2.2画目がズルズルと止まらない場合には、メリハリを意識させましょう。「ここはピタッとトメて、3画目はスーッとハラう。そうすると素敵な字になって、みんなからほめられるよ」とうながします。

大人が指導する際には、「嫌がる子に無理強いはしない」「先に文字を練習する理由をしっかりと伝える」「その子の性格や人格を否定するようなことは言わずにもポジティブな言葉を投げかける」ことを意識しましょう。

ぜひ、親子でじっくり、楽しみながら取り組んでみてください。

関連書籍

頭がよくなる! 集中力アップ! 小学生のための文字練習帳(かんき出版)

脳医学者 瀧靖之先生監修! 文字を楽しく書くことで、集中力がつき、成績がアップする! 2万人の子どもの文字と向き合って誕生。トメ、ハネといった「筆跡」を改善することで、悩みや、心の問題点を解決していく「石﨑白龍メソッド」が文字練習帳になりました! ポイントをおさえてお手本どおりに文字を書くことで、「落ちつきがない」「人の話が聞けない」などのお悩みにもアプローチ。練習帳ページには読みがながついているので、小学校1年生から使えます。