不登校が急増しているのはなぜ? 親に届かない「味方がいない子ども」の叫び
親は選べなくても学校は選べる
【ナギサ】不登校になるのはしかたないとして、その後、学校に復帰できないとどうなりますか?
【ロダン】長期欠席を続けている子が元の学校に復帰するのをサポートする教育支援センターや、必ずしも学校への復帰を前提としないフリースクールもあります。コロナで一気に普及したオンライン授業も、いまや世界中に広がっていて、その気になれば、アメリカの大学の大学院レベルの授業でもオンラインで受講できるんです。
【ナギサ】選択肢は広がっているんですね。
【ロダン】いまいる学校がすべてではないということです。たまたまいま、その学校にいるかもしれないけど、画一的な学校の体制になじめない人もいるし、そもそも地球規模で見れば、学校に通えない子もたくさんいるわけです。
高校なんか行かなくても、いい大学を出てなくても、プログラミングを自分で学んだりして、短期間でサラリーマンの何倍も稼ぐ人もいます。
【ミナト】もっと広い目で見ろってことだ。
【ロダン】だから、生きてさえいればいいんです。たまたまいま、自分が時流に乗れないからって、何もあきらめる必要はないし、悲嘆にくれることもありません。たまたま学校になじめない人がいたとしても、その人たちを見下すのはまちがっているし、あわれむというのもちがう。
いろんな人がいて社会は成り立っているし、人の生き方はいい高校、いい大学に入って、いい会社に就職するという、たった1つの基準だけでははかれません。学校というのは、そういうことを教える場所だとぼくは思います。
【ナギサ】親の問題もありそうな気がします。
【ロダン】子どもが不登校になったとき、学校と話し合いを重ねたり、いろいろ調べたりして、その子に合った環境を用意できる親もいれば、子どもの話に耳を貸さず、何が何でも学校に行かせようとする親もいるでしょう。
あるいは、更生をうたった全寮制のフリースクールに子どもを無理やり入れて、厄介払いしようとする親もいるかもしれない。
【ミナト】子どもは親を選べない。まさに親ガチャですね。
【ロダン】たしかに親は選べないし、自分で学校を決められない中高生は親の言いなりにならざるをえない部分はあるけれど、子どもを虐待するような親からは逃げる手もあるという話は、前回しました。
それに、もっと長い目で見れば、あなたたちの人生を全部親が決めることなんてありえません。だって、たいてい親のほうが先に死ぬんだから。あきらめずにやっていれば、きっとだれかが見てくれていて、最終的には落ち着くところに落ち着く。楽観的すぎると思うかもしれないけど、あんまり悲観的にならずに、そういうものだと信じておくことも大事じゃないかな。
【ナギサ】なんだか救われたような気がします。
【ロダン】 ただ、1つだけお願いしたいのは、学ぶことをあきらめないでほしい、ということです。学校がすべてではない、というのはそのとおりだけど、逃げてドロップアウトすると、そのあとは一般的なルートから外れた外側を行くことになるわけで、全部自分で道を切り開いていくのは決して簡単じゃない。
ほかの人が当然知っているような知識が、すっぽり抜け落ちてしまうこともあります。そういう人は、大人になってから、もっと勉強しておけばよかったと、きっと後悔すると思うんです。
【ミナト】「学校をやめる=勉強もやめる」ではないってことですね。
【ロダン】本人に学ぶ気さえあれば、いまはインターネットがあって、いくらでも学べます。
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