発達障害の子どもだけではない…親まで自己肯定感が下がってしまう理由
海外の研究報告によると、発達障害を持つ子どもの自己肯定感は、健常の子よりも低いという結果が出ている。30年以上、発達障害の子を診察してきた加藤俊徳医師は、子どもだけでなく、診察に連れてくる保護者までも自己肯定感が低くなってしまっているケースが多いと感じているという。
なぜ、発達障害を持つ子どもとその親は、自信を失ってしまうのか。新刊『発達凸凹子どもの見ている世界』(Gakken)を上梓した加藤医師にその理由を聞いてみた。
脳には場所ごとに「41の個性」を作り出す
――本の中で、脳を動かす「41種類の個性」を紹介されていましたが、とても興味深く読みました。
発達凸凹の子に限らず、誰にでも「個性」が存在します。人が生まれてから持つ、オンリーワンの個性です。脳の画像を見ると一目瞭然なのですが、脳の発達には誰にでも凸凹があります。発達している部分は凸で、発達が未熟な部分は凹ということですね。この凸凹(強みと弱み)が、各人の「個性」をつくっていきます。
――この個性を分類化して、「41人の妖精」とされたのが面白いですね。
この妖精を「ブレインチルドレン」と名付けました。脳の個性を司っている機能を、妖精として擬人化したものです。この妖精たちの個性にはよいも悪いものありません。あるのは、「ただの特徴」なのです。
――個性豊かな妖精たちですよね。書籍では妖精たちの「強みと弱み」が書かれていました。
これがこの本でもっとも伝えたいポイントの1つなんです。つまり、個性は脳から生まれるもので、その人の脳の特徴が反映され、脳の発達状態と表裏一体、発達しているよい面と未熟な悪い面があるはずなのです。
でも、発達障害の子どもたちは、脳の一部が未熟なだけで、他は問題ないわですが、みんな「悪い面」だけが強調され、問題児の扱いを受けています。私は、強みを見ないこれらの偏った偏見が世間でさらに問題を生むと考えています。
個性の「悪い面」だけを見てはいけない
――たしかに、個性って、環境によっても評価が変わりますね。
本の中でも紹介しましたが、たとえば「脳個性」の1つ「フレンドリー」は、誰にでも気さくに話しかけられる、人なつっこい個性です。裏表もありません。
日本だと、「空気が読めない」「前に出すぎ」「はっきり言いすぎる」と疎まれることがありますが、海外などでは言葉がうまくなくても物おじせずに話しかけることができ、友だちがたくさんできるタイプです。思ったことを言葉にできるので、意見をはっきり言うことが好まれる場では、頼りにされます。
発達障害の子どもを見るときに、「空気が読めない」面だけを強調するのはやめてほしいなと感じます。
――「空気が読めない」と「自分の意見が言える」では、180度違いますね。
1つの物の見方だけで、決めつけるのはよくないということです。とくに発達障害のお子さんもその保護者も、ずっと「できない」「問題児」と言われ続けて、傷ついている親子が多い。統計を見ても、発達障害の子どもは自己肯定感が低いのです。「できること」「強み」を見てあげて、応援してあげることがとても大切です。
――妖精のなかで、「ギリギリパワー」は、自分のことかと思って読んでしまいました(笑)。私も締め切り直前に力を出すほうで、夏休みの宿題は8月末まで手を付けないタイプでした…。
脳の個性は誰にでもあります。凸凹の大きさの違いだけですから、発達特性が目立たない人にでも該当することなんです。「ギリギリパワー」のよいところは、たくさんあります。
まずは、並々ならぬ「爆発力」があること。ギリギリのところになると、人並外れた集中力が発動されて、驚くような結果を出すことがあります。また自分がのんびりとマイペースなので、人を急かすことをしません。急かされるとあせって失敗することもありますよね。その人のタイミングがくるまで、待ってくれるんです。
――タイミングが来るまで待ってあげる。これは、子育てでも大事なことですよね。
待てずにイライラして怒ってしまったり、先回りしてやったりしてあげてしまう親御さんも多いので、「待てる個性」のよい面でもあります。
こうやって、子どものよい面を見てあげられて「うちの子って、すごいんだ!」「こんなにできることがあるんだ!」ということに気づくと、親御さんたちもうれしくて、どんどん自己肯定感が上がってきます。
――お子さんだけでなく、親御さんの自己肯定感を上げることにもつながる、と。