子どものメンタルにも影響する「6歳までの食事」で注意すべきこと
乳幼児期の食生活は、子どもの成長にとても重要なものです。子どもが安定したメンタルで健やかに育つコツを、一般社団法人ラブテリ代表理事の細川モモさんがご紹介します。
※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年4月号から一部抜粋・編集したものです。
幼い頃の食卓が子どもの成長に与える影響
幼い頃の食卓が子どもの成長に与える影響は、とてもひと言では言い表わせません。身長や体格といった見た目への影響はもちろん、6歳までにおおむね90%が完成するといわれる脳の発達や、食卓を通じて子どもが重ねている学習といった見えないところまで、広範囲に子どもの成長に影響しています。
子どもがどんなことを、食事を通じて得ているのかを早くに知ることができれば、食事を通じて子どもの成長をサポートできるだけでなく、親も負担に感じがちな料理に価値を見出せるのではないかと思います。
ポイントさえ押さえれば、手を抜いても大丈夫!
私も0歳と4歳の子どもを育てていますので、子どもの食事が一筋縄ではいかないことは身をもって感じています。好き嫌い、偏食、ムラ、座って食べないなど、多くの悩みほとんどの幼児の親御さんが抱えているのではないでしょうか。
「もう子どもが食べるもの、好きなものだけ与えていればいいや」と投げ出したくなることも、きっとあると思います。丁寧に出汁をとって……などと完璧な食卓を目指す必要はまったくありません。
成長期は取り戻せないので、今この時期に必要な栄養素を不足させることで成長に影を落とさずに済むよう、大事なポイントを押さえ、魚料理が苦手ならサバ缶を使うなど、抜ける手は最大限抜いていきましょう。
食生活で大切にしたい6つのポイント
毎日の生活の中で、特に意識したいポイントをまとめました。
1. 鉄分は不足しがち。食事+おやつで補って
子どもの脳の発達に欠かせない栄養素はDHAだけではありません。脳の中枢神経を育み、5歳の時点での運動能力・認知能力・精神活動の発達の遅れに影響するのが鉄分です。
実は、子どもは1歳のときに貧血リスクが高まります。妊娠中にお母さんから受け取った貯蔵鉄が生後6~9カ月で枯渇し、母乳中の鉄分も生後6カ月を過ぎると減少するため、鉄欠乏性貧血リスクが高まります。沖縄県の調査では、とくに男の子は生後8カ月の時点でのヘモグロビンが基準値を下回っていました。成長期の間、鉄分の需要は高いままです。
吸収率の高い動物性たんぱく質に含まれるヘム鉄を食事で、レーズンや鉄分( Fe)入りのヨーグルトやクッキーなどをおやつで与えるように意識しましょう。
2. 骨の成長には、ビタミンDが必須
子育てをする上でぜひ知っておきたいのが、”ピークボーンマス(最大骨量)”という言葉です。生涯でもっとも多い骨量を示す言葉で、18~20歳で最大になるといわれています。
ピークの数値には個人差があり、成長期における食事・運動・睡眠に大きな影響を受けます。つまり、わが子の最大骨量のピークをどこまでハイスコアにできるのかは、家庭での生活と食事にかかっているといっても過言ではありません。
カルシウムの利用に欠かせないビタミンDは、日光を浴びることによって作られます( UVクリームを使うと作られません)。1日どれだけ日光を浴びれば必要なビタミンDが作られるのか、何時間以上の日光浴が有害なのかは環境省のサイトでチェックすることができます。
3. 頭を良くする油「DHA」は毎日摂りたい
魚に含まれ、”頭を良くする油”として一世を風ふう靡び したDHA。DHAは、記憶に関係する脳の神経細胞間の通信を活性化する働きがあることがわかっています。幼児においては、視力の発達においても欠かせない栄養素なのですが、残念ながら体内で作り出すことはできません。
食事からの摂取量と血中濃度が比例するため、食事から毎日摂と りたい栄養素です。鮭さけフレークやツナ缶、サバ缶などを上手に活用しましょう。
また、体内で一部がDHAに変換されるα-リノレン酸を含む亜麻仁油やえごま油を、スムージーやドレッシングに混ぜて(加熱に弱いので注意です)与えることもオススメです。
4. 善玉菌の多い腸内環境を守ってあげよう
免疫を調整したり、ビタミンを作ったりしてくれる腸内細菌。最新の研究により、腸内環境の乱れは心の乱れ(うつ病)にも影響することが明らかになりつつあります。
誕生したばかりの赤ちゃんは、善玉菌が腸内細菌の90%を占めることにより感染症などから命を守られますが、離乳食開始とともに悪玉菌が増え、3歳になる頃には70%に減少します。
善玉菌優位な腸内環境を守ってあげるために、食事から健康に有益な菌を取り入れる「プロバイオティクス」と、すでにお腹に棲んでいる善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂る「プレバイオティクス」を習慣づけましょう。
5. “ご機嫌”のために、たんぱく質をしっかりと!
子どもの中には、ラーメンやうどん、スパゲッティといった炭水化物が大好きで、たんぱく質が不足しているケースをよく見かけます。子どもが成長曲線からはみ出ているというお母さんから、「たんぱく質は月にどれくらい摂ればいいですか」と聞かれることも。
人の体は、水分を除けば次はたんぱく質でできています。たんぱく質を細かく分解してパーツにするとアミノ酸になりますが、人の体では作り出せないものが10種類あります。
その1つが、心の健康に欠かせないハッピーホルモン”セロトニン”の材料となるトリプトファンです。明日のご機嫌のために、たんぱく質の不足は避けましょう。子どもは体重あたりに必要な量が大人より多いため、3食+1食(おやつ)で食べましょう。
6. ビタミンB群は心の健康に影響大
「元気のビタミン」「メンタルの栄養」と呼ばれるほど心の健康に関わっているのが、ビタミンB群です。ビタミンB群は8種のビタミンの総称で、それぞれ異なる理由でメンタルに密接に関わっています。
例えば、ビタミンB6はハッピーホルモン・セロトニンや、脳の興奮を抑えるGABAなどの脳内物質をつくりだすのに欠かせない存在です。ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える役割があり、脳の健常な働きに欠かせません。
ビタミンB1は様々な食材に含まれているので不足しやすい栄養素ではありませんが、偏った食事では不足します。豚肉、胚芽米、納豆、鶏卵、魚類を十分に摂るようにしましょう。
楽しく食べることが何よりも大切
何を食べるかも大切ですが、誰とどのような雰囲気で食べるのかも、子どもの心の成長に大きく影響しています。大学生を対象に行なわれた研究では、子どもの頃、食事中に家族と楽しい会話経験のある学生は、健康状態や食習慣に問題がある者が少ないことが明らかになっています。
とはいっても、お父さんは仕事で夕食には不在など、家族揃っての食事はなかなか難しいですよね。健康状態に影響を与えるのは、家族が揃った頻度よりも、コミュニケーションの中身だという報告もあります。今日楽しかったことなど、心が弾む会話を心がけたいですね。