「知的好奇心が高い子」の親に共通している教育方針とは?
知的好奇心の高い子は、さまざまなことに関心を持ち、豊かな人生を歩むことができます。本稿では陰山英男さんが、知的好奇心を伸ばすために効果的な仕掛けづくりについて紹介します。
※本稿は、陰山英男著「陰山流 新・おうち学習戦略」(Gakken)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
知的好奇心を最大に引き出す働きかけをしていく
・知的好奇心を刺激するのは親の役目
幼児から低学年の頃は、最も好奇心が大きな年代ではないでしょうか。大人にとって当たり前のことでも不思議がいっぱいで、それがどうして動くのか、どうしてそのようになっているのかに、好奇心を燃やします。世の中の不思議なものに触れて目を輝かせる子どもの様子は本当にかわいらしいものです。
それをうまく刺激してあげると、4年生以降、一生を通じて持ち続けられる知的好奇心を育てることができます。
私の友達は、小学生のときに川のプランクトンを調べて、自由研究で地域の賞をもらいました。大人になってからは京大病院で微生物の研究をしています。また、知人に、大手ゲーム会社の優秀なゲームクリエイターがいます。誰もが知っているような大ヒットゲームを手がけた人です。しかし彼は、子どもにゲームはやらせないで、家族でアウトドアで遊ぶことを大切にしています。
その教育方針を不思議に思って聞いてみると、「ゲームはおもしろさや楽しさを体験して、それをバーチャルでどう再現するかなんですよ。だから、リアルでおもしろい、楽しいことを知っていなければ、優秀なゲームクリエイターにはなれないんです」
おもしろい、楽しいことを小学生の間に徹底的に体験させるのは、研究者だろうが、ゲームクリエイターだろうが共通しているのです。子どもの知的好奇心を伸ばすのは親の仕事の1つなのです。
・豊かな人生に欠かせない知的好奇心
子どもの知的好奇心を伸ばしてほしいのは、その子が豊かな人生を送るためです。おもしろいこと、楽しいことを知っている人は、人生を楽しむことができます。楽しい人の周りには人が集まってきますし、ビジネスチャンスも寄ってくるでしょう。
人間性を育むのも、知的好奇心がベースになるのではないでしょうか。教養という意味でも、知的好奇心は不可欠です。たとえば海外旅行に行ったとき、その土地の歴史や地理を知っていれば、より深く楽しむことができます。知的好奇心があれば、一生学びを続けられます。
読書や良質なテレビ番組、地域で開催している勉強会、博物館、大学のオープン講座など、さまざまな機会から教養を増やしていけるでしょう。
これもまた、豊かな人生につながるポイントです。確かに、昔と比べると子どもが遊べるスペースが減っているという状況になっています。特に都市部に住んでいると、豊かな自然に日常的に触れることはむずかしいかもしれません。
それでも、できることはあります。公園で虫を見つけたとき、名前を図鑑で調べてみる。旅行に行くときには、前後でその地域について調べてみる。週末に少し足を伸ばしてみる。
このように、いかに生活の中に組み入れていくかです。大切なのは、親が一緒に楽しむこと。親が楽しんでいれば、子どもも自然と楽しんでくれるようになります。
子どもの知的好奇心を刺激する仕掛けを作る
・テレビの横に地球儀や図鑑を置く
子どもの知的好奇心は生活の中に仕掛けを作ることで刺激されます。その方法を羅列するときりがありませんが、いくつか代表的なものを紹介しましょう。
テレビの横に地球儀や図鑑を置くのは、比較的すぐに取り入れやすい方法です。これは、「興味を持ったことはすぐに調べられる環境」を作るということです。子どもはテレビを見るのが好きですし、テレビからは情報が次々と流れてきますから、見ているうちに疑問を持ったり、興味を持ったりすることはよくあります。
その際にすぐに調べられる環境を整えておくようにするわけです。家族でテレビを見ていて、知らないことがあれば一緒に調べてもよいでしょう。ゲーム感覚、イベント感覚で楽しめるはずです。
もちろん、図鑑は普段からペラペラめくって読むのも役に立ちます。その他、地図や宇宙のポスターを壁に貼るのもよい方法です。
・勉強はリビングで行う
特に幼児から低学年の子はリビングで学習するようにします。家で勉強することに慣れていませんし、勉強の仕方そのものもわかっていないことが多いからです。親は、子どもが困ったことがあればすぐに手を差し伸べられるように、近くにいるとよいでしょう。子どもに安心感が生まれます。
理想は子どもの斜め後ろあたりです。斜め後ろだと、子どもの様子がよくわかります。鉛筆が止まっていたり、勉強に飽きてしまったりすれば、すぐに気づいて助けられます。
・本棚に子どもの本と大人の本を一緒に保管する
できればリビングに本棚を置くようにしましょう。すきま時間や自由時間に、いつでも本の世界に飛び込めるよう、手に取りやすい位置に置きたいものです。子ども用と大人用と分けず、あえて同じ本棚に並べる方法もあります。高学年になると背伸びをして大人向けの本を手に取るようになるかもしれません。
子どもを読書好きにするには、大人が読書を楽しむことです。大人が日常的に本を読んでいると、子どもも自然と本に手が伸びます。家庭訪問をしていると、リビングに本棚のある家庭の子は、成績がよいことが多いのに気づきます。知的な情報に触れるのは楽しいこと、素敵なこと、知性は磨いていくもの、と親のふるまいで伝えていきましょう。
・お手伝いをさせる
お手伝いには脳を鍛える場面が多くあります。たとえば料理は、家事の中でもっとも脳を使います。できあがりを想定しながら、段取りよく材料を用意し、調理を進めていく。その過程で、包丁など道具の使い方を学び、慣れていきます。
掃除をするのも、洗濯物をたたむのも同様です。脳を鍛えるため、生きていく力をつけるため、お手伝いもまた親が子に伝えることでしょう。
なお、お手伝いは親の気まぐれではなく、役割を決めて責任を与えましょう。ゴミ捨てや玄関の掃除、ペットの餌やりなど、簡単なことでもかまいません。責任を持つことで、家族の一員としての自覚も生まれてきます。これも、大人へと成長させるために必要なものです。
関連書籍
陰山流 新・おうち学習戦略(Gakken)
著者は、「これからの学習は『家庭』が担う」「子どもの学力を伸ばせるのは『家庭』の戦略と心掛け次第」と明言。戦略的な学習プランと教科別の進め方ポイントをマニュアル化し、ムダなく理解がすすむ攻略ポイントをこの一冊にまとめました。