偏食が改善しない子と悩む親に多い「たったひとつの思い違い」

山口健太

皆さんは、子どもの好き嫌いに悩んでいませんか? 平成27年度に厚生労働省が行った「乳幼児栄養調査」によると、2~5歳以上の子どもを育てる親の30%前後が、「子どもの偏食」に困っているそう。

「食べない子には明確な理由があり、その理由に合った対応をすると偏食は改善します」と語るのは、食べない子専門のカウンセラー・山口健太さん。山口さんは、「偏食対応では、実は『引き算の思考』が大事なんです」と言っていて――。

※本稿は、山口健太著、藤井葉子監修『子どもも親もラクになる偏食の教科書』(青春出版社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

欲しがるのは栄養が足りていないからでは、ありません!

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親御さんがよく勘違いしがちなことに「子どもが食べ物を欲しがるのは、栄養が足りていないからだろう」というものがあります。しかし、これは違います。

“デザートは別腹”というような感じで、仮に満腹だったり、栄養が足りていても、好きなものなら食べられてしまうのが人間です。一方で、好きなもの以外はある程度お腹が空いていないと、口に入れようとはしません。

子どもだけでなく大人も、何かストレスを発散したいとき、感情的に満足したいときに、その気持ちを「食べ物で満たそう」とすることがあります。

特に糖分が高いものを食べると、ドーパミンやセロトニンなどの脳内神経伝達物質(ホルモン)が分泌されるので、幸福感を得られます。

しかし、これを覚えてしまうと、感情的な満足を得るために食べるようになります。てっとりばやく満足でき、ストレスも発散できるので、子どもは次第に食以外で感情的に満足できないようになる恐れもあるのです。



こうなると、好きなものだけ食べて、他のものを食べないことにつながり、偏食も固定化されてしまいます。

だからこそ、「子どもが食べ物を欲しがる」→「きっと栄養が足りていないんだ」 →「好きなものを食べさせて栄養を補給させなきゃ」と考えるのはやめましょう。

この過程がくり返されれば、子どもは「要求すれば好きなものが出てくる」と覚え、大人が苦労することにもつながります。 

食で感情的な満足を得ることは、本来素晴らしいことです。でも、それだけが唯一の満足を得る方法になってしまってはよくないですよね。子どもには食以外にも、自分を満足させる方法を知っておいてほしいものです。

そのためにも、大人が子どもと楽しく会話をする時間を増やしたり、他の楽しいことを見つけるサポートをするのも、大事でしょう。そういった関わりが、間接的に偏食の改善を促します。

まずは好きな食べ物の量を減らす

「食べ物を欲しがるのは栄養が足りていないからではない」

このことを踏まえた上で、大事なのは「好きな食べ物の量を減らす」ことです。

食べられるものを増やすためには「今食べているものを減らすこと」が欠かせません。

逆に言えば、これまで偏食改善を試みても、なかなか食が広がってこなかったという場合、この〝減らす〟という視点が抜け落ちていることが多いのです。

特に、偏食の子の場合、ご飯・パン・芋などの炭水化物類や、お菓子・ジュースなど、少量でも高カロリーなものを好む傾向にあります。高カロリーな食品や脂質・糖質が多い食品を食べると、脳では報酬系のホルモンが生まれ、満足感を得られるため、他のものを食べる気持ちが起きにくくなります。

ですから、少しずつ、今好んで食べているものの量を減らすことが大切です。

しかし、ここで「うちの子は食べる量が少ないけど、本当に減らして大丈夫なの…?」と、疑問や不安が出てくる方もいらっしゃるでしょう。

結論からお伝えすると、次の3つのいずれにも該当しない場合は、大丈夫です。

①成長曲線と照らし合わせたとき、ここ数カ月間の身長と体重の伸びが極端に悪い
②成長曲線の平均値と照らし合わせたとき、身長に比べて体重の値が極端に低い
③食べ物を喉につまらせたり、吐いてしまったりしたことで、一時的に食べることが怖い状態になってしまっている

仮にお子さんが小食だったとしてもこの3つのケースに当てはまらないのであれば、”減らす”を考えて大丈夫です。

そもそも、人によって摂取したものを消化して、どれだけのエネルギー量に変えられるかは、違います。

子どもに限らず、「この人、少ししか食べないのに、いつも元気で不思議だなぁ」なんて人がいると思います。食べる量だけで「この子は栄養が足りていないんじゃないか?」と誤った判断をしないように注意しましょう。

また、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回り続け、体内の「エネルギーの貯金」が減れば、現状維持しようとお腹が空いてきます。 お腹が空いているときに食事をとるとおいしいですよね。

お腹が空いているタイミングで、苦手なものを食べると「おいしい」と認識が改まることがあり、その食べ物の印象がよくなって偏食が改善されることもあります。

こういったさまざまな理由から、食事の量を減らすことは大切なのです。

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