国立小学校と私立小学校、うちの子はどっち向き? 違いを徹底比較

なごみゆかり
2024.08.29 14:01 2024.01.26 11:40

教師と生徒

小学校受験といえば国立・私立小学校ですが、この2つの違いは学費だけではありません。それぞれの特色や違いを知り、お子さんにとってベストな進路を考えていきましょう。

私立小学校教諭として18年勤務されたなごみゆかりさんが、国立小学校と私立小学校の違いを解説します。


※本稿は、なごみゆかり著『忙しいママでもできる! 私立小学校を受験しようと思ったら読む本 』(日本能率協会マネジメントセンター)から、一部抜粋・編集したものです。

全小学校中0・35%の国立小学校、1・3%の私立小学校

算数の問題を解く小学生

令和4年時点で、全国の小学校は、19,161校あります。そのうち、国立小学校は、全国で67校。東京でもたった6校しかありません。ちなみに、公立小学校は、18,851校で全体の98%を占めます。国立小学校が極めて少ないのがわかります。

同じく令和4年時点で、私立小学校は、全国で243校。全体の1.3%です。全国の小学生のうち、100人に1人が私立小学校に通っている計算です。これまた非常に少ないのがわかります。ただ、国立小学校は、年々減少傾向(公立小学校に至っては激減)にある中、私立小学校だけは年々創設が進み、着実に増えているのです。

国立小学校の特色

学校の教室

国立小学校の特色は、何より教育の最先端を研究する教員がいることです。「基礎的な内容の学習」と言うよりは、教員の独自の研究のため、ハイレベルな内容であることも多く、さらには教員の研修(全国の先生、もしくは首都圏の先生対象の研究授業)のため、土曜日も学校に行くことが多いのです。また、母体の大学の教育実習生を多く受け入れるため、授業に集中できないときがあるかもしれません。実習生に手紙を書くなど、家庭学習でフォローが必要になることも。

子どもたちは、試験を通過したこともあって、「文武両道」のような形で、学習も運動も平均的にこなせる場合が多いようです。国立小学校は大学付属ですが、エスカレーター式に内部進学できる制度ではありません。通学範囲も定められていて、学校から40分以内に通える場所に居住している、などの条件がある学校も。学費に関しては、入学金はありませんが学校により寄付金のようなものがある場合もあります。公立よりは制服代などをはじめ学費がかかります。

私立小学校の特色

国立小学校と私立小学校、うちの子はどっち向き? 違いを徹底比較の画像1

学校ごとに教育方針が異なり、宗教、礼儀、英語、生活指導など、どこに力を入れるかも、学校ごとに大きく違っています。きちんとしている校風、のびのびと活発な校風など、子どもに合う学校か否か保護者が見極める必要があります。通学範囲は、平均40分程度ですが、まったく制限がない学校もあります。

小学校受験の時期

勉強する子

国立小の場合、首都圏では主に9~10月に願書配布。11~12月に抽選及び試験(抽選については次ページで説明あり)。12月に合格発表。関西ではもっと遅く、年明けの1月に試験を行う学校も。私立小の場合、首都圏では10月、東京は主に11月上旬に試験。即日か2、3日以内に合格発表。関西ではもっと早く、8月に試験、9月には合格発表という学校も。入試の時期は地域や学校により異なるので、早めに調べておくとよいです。

ざっくりわかる! 国立小学校受験

学校の教室

私立ほど学費がかからない上、全国から研究熱心な教師が集まり、実験的な授業が多数展開されていることもあり、国立小学校の受験は、倍率が非常に高いです。東京の国立小の中には60倍を軽く超えるような学校もあります。そのため、①抽選、②試験という流れで、入学児童数を絞り込んでいます。この「抽選」が大きな特徴です(抽選の回数など、試験の詳細は学校により異なる)。②の試験の後、さらにもう1回抽選をする学校もあり、とにかく「狭き門」となっているのが国立小学校受験です。

さらには、学習や運動面だけではなく、生活面での自立や社会性などの「総合力」も試されます。たとえば、「公園で他の友達と離れて一人で遊んでいる子どもがいました。あなたはどうしますか」のような問題です。全般的な力が求められているというわけですね。

最後に、私立と比べて、合格発表の時期が遅いことも挙げられます。地域にもよりますが、12月に最終的な合格発表があります。私立は11月にはほぼ合格手続まで終わっているので、もし私立と併願している場合は、国立の合格発表までは落ち着かない期間が続いてしまいます。

ざっくりわかる! 私立小学校受験

学校の廊下

私立の場合、倍率が高い学校もありますが、比較的入学しやすい学校もあります。受験する学校に合わせ、十分な準備をした上で、学校の教育方針などに賛同できる学校をいくつか選んで受験すれば、どこかの学校にはご縁をいただける可能性が高いでしょう。そういうところから、国立と違って「広き門」と言えます。

もうひとつの特徴は、学校それぞれに、特化した基準があるということです。求める子ども像により、何を重視するかが学校により大きく異なるのです。

最後に合格発表までが速いことが挙げられます。インターネットの普及により、即日結果がわかる学校がいまはとても多いです。ですから、翌日以降の試験の対策を早めに打つこともできます。

わが子は「国立小」「私立小」どっちが向いている?

小学生

以上を踏まえた上で、最終的には、親御さんが考え、ご縁をつないでいか れたらよいのではないかと思います。

国立小の場合は、そのまま併設の中学校に進学できる可能性は50%以下とも言われています。そのため、塾に通いながら中学受験の準備をしていく必要があります。小学校受験が終わっても安心はできない状況です。お子さんがそれをストレスに思わずに努力を続けられるかどうかを加味する必要があります。

私立小受験の場合は、学校の雰囲気や先生の雰囲気をしっかり考え合わせる必要があります。お子さんもしくは親御さんが学校の雰囲気に合うかどうかは、とても重要です。さらに、教員は異動をしないので、「先生との相性」も重要なポイントです。私立小は、教育理念に沿って、全人的な指導をすることが多いです。しっかりと向き合ってくれることが多いのですが、そこをどうとらえるかも加味して考えるとよいと思います。

なごみゆかり

かめっこ塾 ぴよっこ塾 主宰
専門学校などで印象アップ、コミュニケーションの講師も務めている。
東京都の私立小学校教諭として18 年勤務。毎年多くの親子の小学校受験に立ち会ってきた。退職後、生後5ヶ月の子を抱え、子育てセミナー講師として起業。教師経験と心理学、脳科学を組み合わせたオリジナルメソッドを使い、反抗期の子どもの対応に悩むママのための子育て塾【かめっこ塾】を立ち上げ、さらに初心者のママ起業家のための【ぴよっこ塾】も主宰している。子育て、起業と
頑張るママを応援すべく、日々奮闘中。メルマガ読者総数13,000 人。インスタフォロワー総数約12,000 人。

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年々受験者数が増加する小学校受験。

かつてはごく一部の人しか知らない世界と思われてきたが、共働き世帯の参入が進み、中学受験ほどではないが盛り上がりを見せつつある。

その理由として、コロナ禍で私立の方が公立よりも対応がスピーディであったことや、中学受験の過熱や大学入試改革などを踏まえて早期に進路を決めてしまいたいというニーズもあると思われる。

ただ、どういう子どもが小学校受験に向いているのか、家庭でどういうことができるのかというと、まだノウハウが知れ渡っているとはいえず、一部のインナーサークル内で情報が流通している印象が強いのではないだろうか。書籍の多くも塾関係者のものであり、塾への誘導のために、根幹にかかわる部分は避けて記述しているのが実情である。

しかし、何となく興味を持つ人も増えている中で、とりあえず小学校受験とはどのようなもので、受かるにはどうすればいいのか、知りたい人が増えていると思われる。

そこで本書では、私立小学校に長年勤務した著者が、「どういう子どもに入学してほしいか」「そういう子どもをどうやって育てたらよいか」ということを解説する。

小学校受験初心者がこれからどういう考え方で、どういう取り組みをしていけばよいかを伝える。家庭でできる入門書。