料理コラムニスト・山本ゆりさんを“子育ての罪悪感”から救った娘の言葉
テレビやブログのお仕事で大忙しの山本さん。子育てでよく悩むこともあるけれど、子どもに”好き”ということだけ伝われば大丈夫! とステキな笑顔で話していただきました。(取材・文:社納葉子)
※本稿は、『のびのび子育て』2020年10月号より転載したものです
イライラの原因は自分にある
私には9歳と5歳の娘がいます。長女のアミは負けず嫌いで活発で天真爛漫。次女のナミはシャイで甘えんぼうです。母となって、そろそろ10年になります。特にアミにはガミガミと言い過ぎてしまうところがあります。
イライラの原因を考えると、結局、自分にあることが多くて。ひとつは自分が時間に追われているとき。締め切りが迫っているときに子どもがぐずると、普段許せることでも、ついイライラしてしまいます。もうひとつは、子どもの失敗を親である自分の失敗のように感じてしまうこと。
「子は親の鏡」と言いますよね。たとえばアミが宿題を忘れたら、親である私のいたらなさが露呈したような気がするんです。「ああ、私がいい加減だから」と自分にイライラして、つい子どもにガミガミと言ってしまう。本当に、ダメな母親なんです。
でも、言い過ぎてしまったときは、自分の気持ちが落ち着いてから、「さっきは言い方が悪かったわ。ごめんな」と謝ります。実は、私の母がそうしてくれていたんです。学校から帰ってきたら、「今朝は怒ってしまったけど、言い過ぎたと思う。お母さんが焦ってたから、つい言ってしまって、ごめんね」と謝ってくれました。
そんな母を信頼していたので、私も見習いたいなと思うようになっていました。でも「謝ったら負け」みたいな気持ちもあって(笑)、なかなか母のように素直には言えません。
あるとき、「叱らない子育て」がテーマの本を読んでいたら、それを子どもが見つけて、「お母さん、この本読んで子育ての勉強してるんやろ? 私も叱られるん嫌やなー」なんて言うんですよ。
「叱るときには叱らないと、子どもはちゃんとした大人になれへんから、お母さんは叱るで」と言い返しましたけど(笑)。でも叱る意味や叱り方はちゃんと考えないといけませんね。
自分の中の子育ての軸
自分に子育てに対する考えの「軸」がないことも悩んでいました。たとえば、きっちりしている友だち親子に会った後は、いきなり「今日からごはんの後は、必ず読み聞かせするぞ!」と言い出したり、逆にゆるい友だち親子と一緒だと、そんなにちゃんとせんでええか〜となったり、意志がブレブレ(笑)。
子どもも戸惑いますよね。子育てって「正解」がわからないから、いろいろなことに惑わされてしまいます。
でも最近、「親がせずとも、子どもはいつの間にか成長してるんだな」と感じることが増えてきました。おやつがあっても「もうお腹いっぱいだからいらない」と言ったり、保育園の先生、近所のお母さんとの会話の中から、問題を解決したり。子どもがどう育つかは、母親の責任だと思い込んでいましたが、子どもの世界は「お母さん」だけじゃないんですね。
いろいろな人を見て、それぞれの良いところや悪いところもわかって、自分で判断している。母親、父親だけが「鏡」だと思わなくてもいいんだと思えるようになってきました。
それに子どもって、意外とたくましいんです。あんな言い方をして傷つけてしまったかな、とものすごく後悔して謝ったら、「何のこと?」とケロッとしていたり、子どもが生まれたときから働いてきたので、「小さな頃から保育園に預けてかわいそう」と思っていたら、娘は「楽しかったー」と言います。
迎えに行ったときにポツンと1人で残っていたこともあり、「あのときは最後になってしまってごめんね」という話もできるようになりました。
特にうれしいのは、娘たちが私の仕事を応援してくれること。仕事も子育てもどっちつかずな気がして、罪悪感で何度もつぶれそうになりましたが、がんばってきてよかったかもと思えるようになりました。
「好きだよ」「大切な存在だよ」という気持ちを伝えること
私は、叱り過ぎてしまうことばかり気にしていましたが、「好きだよ」という気持ちを伝えることも大事だと気づきました。
娘たちは私が驚くぐらい「ママ、好き」と言ってくれます。もしかして、私からも、もっと「好き」と言ってほしいのかと思い、「ママも好きやでー」と意識して言うようになりました。強気だけど寂しがり屋のアミにはしつこいほど言います。
私は子育てがまだまだ途中で、毎日悩んでいるので、偉そうなことは言えません。ただ、幼い頃にあんなに怒らなくてよかった、もっと気楽に、機嫌の良いお母さんでいてあげればよかったと思います。でも、当時あれだけ怒ったことを子どもは覚えてないそうで、そこはホッとしています(笑)。
子どもの好き嫌いも、前は自分の責任のように感じていましたが、食べる子は食べるし、食べない子は食べない。栄養バランスも1週間や1カ月単位でつじつまがあえば大丈夫と思うようにしました。今からでも、おおらかに子どもの成長を楽しめたら……と、毎日思っているんですけどね。なかなか難しいです(笑)