のしかかる「フリースクール年間40万円」の負担…不登校の子が自分らしく学ぶための奨学金事業とは?

nobico編集部
2024.03.08 12:37 2024.03.08 11:50

勉強する子ども

不登校の子ども達にとって、大切な学びの場となるフリースクール。 しかし、利用にあたりかかる金額は月平均3万3千円と言われています。(※) 国からの補助金などはなく、費用の面から利用しずらいと感じる家庭もあるのではないでしょうか。

そんな中、一般財団法人ちくご川コミュニティ財団(福岡県久留米市)は、「学校に行かない・行けない子どもたちが、安心して自分らしく学べる地域社会にしたい」との想いから、フリースクールなどの利用料補助のための奨学金事業を設立しました。

(※平成27年 文部科学省の調査より)

クラウドファンディングにて基金設立

たまきちゃん

ちくご川コミュニティ財団は、基金設立の原資確保のため、2023年12月1日から60日間のクラウドファンディングに取り組みました。

その結果、200名から目標金額を上回る総額330万円の寄付が寄せられ、2024年2月1日、「子どもの多様な学びの場を保障する基金」が無事設立しました。

公募で選ばれた基金の愛称は「たまきちゃん」。考案者は中学3年生の井波鈴奈さんです。

事業をはじめたきっかけは

この奨学金事業がスタートしたきっかけについて、ちくご川コミュニティ財団の庄田(しょうた)さんにお話をうかがいました。

Q.今回、不登校の子どもへの支援として、奨学金事業をはじめたきっかけは何でしょうか。

ちくご川コミュニティ財団では、福岡県内の3つのフリースクールと事業を実施しているのですが、その運営をしていく中で、フリースクール等に通うための家計負担の大きさを実感しました。

現在、不登校の子どもの数は過去最多と言われています。しかし、行政による個人へのフリースクール等の利用費補助・助成制度があるのは全国の自治体で7つほどで、福岡県には1つもありません。

フリースクール等を必要としていても、家計の問題で利用料が払えないといった「選択できない状況」がたくさんあることを知り、この事業を始めようと思いました。

Q.愛称をつけようと思ったのはなぜですか?また、「たまきちゃん」の由来はなんでしょうか?

奨学金を利用する子どもたちや基金を応援してくださる皆さまに親しまれる存在になるよう、愛称をつけようと思いました。

由来については、多様なの「た」学びの「ま」基金の「き」の頭文字をとり、こどもらしさを出すために「ちゃん」をつけたとのことです。

また、たまきは漢字で「環」とあらわすことがでます。「想いがめぐりめぐって大きな輪になり、全ての子どもにとって学ぶ環境が整えられるように」という願いが込められています。

Q.クラウドファンディングに支援いただいた方の声で、印象的なものはありましたか?

当初、応援の声は不登校当事者のお子さんを持つ親御さんやフリースクール関係者の方から多くいただいておりましたが、クラウドファンディングが進むにつれていろんな立場の人が声を挙げてくださるようになりました。

特に、かつて先生だった人、今も教壇に立っている人から「応援したい」との声が複数寄せられました。先生たちからの声に驚きと心強さを感じる一方、教育の現場にいる先生たちも悩んでいること、不登校という課題の根深さと緊急性を痛感しました。

Q.不登校の子供が自分らしく安心して過ごすための条件は何だと思いますか?

子どもだけでアクセス可能な距離に、フリースクール等の多様な学びの場(居場所)を作ってあげることが大切だと思います。
さらに、行政と民間の両方に家計支援をする制度があること、家計負担がない(もしくは少ない)形で利用できるようにすることが必要だと考えています。

また、「学校以外の学びの場も選んでいいんだ」という社会全体の雰囲気を醸成することも大切です。「子どもには自分に合った学びの場を選択する権利がある」という理解を地域社会全体で広めていきたいと思っています。

キックオフイベントも開催

たまきちゃんキックオフイベント

2024年1月28日には「たまきちゃん」のキックオフイベントが開久留米大学御井キャンパス(福岡県久留米市)、オンラインにて開催され、子どもから大人まで約40名が参加しました。

イベントでは、ちくご川コミュニティ財団理事・事業部長の庄田清人さん、協働パートナーの西日本新聞社(福岡市) 社会部編集委員の四宮淳平さんが登壇したほか、不登校を経験した中村富美夏さん・鷹之輔さん親子によるトークセッション「WHO!登校in久留米」が開催されました。

たまきちゃんキックオフイベント

おがたちえ先生メッセージ

イベント会場内には、漫画家・おがたちえさんのパネル展示も登場。 西日本新聞で連載中の「不登校 子のこころ親知らず(原作:あおいさん)」の全話、そしてnobicoで掲載中の「不登校サバイバー親子の体験日記」の試し読みも展示されました。 取材に基づいた不登校のリアルな体験談に多くの方が足を止め、その場でスマホで続きを読む方も。

「フリースクールに年間40万円」 不登校の子ための奨学金事業とはの画像1

イベントの来場者からは、 「”学び方”にも多様性があることを 受け入れていける世の中になったらいいな」 「私は不登校という言葉が好きではありません この言葉が変わる時が来ると願います」 「不登校児と親御さんに幸せになる手段があることを知ってもらいたい たとえそれが世間が考える”普通”ではなくとも」 といったメッセージが寄せられました。

毎年5人程度に給付予定

たまきちゃんの奨学金は毎年5人程度に給付することを目指しており、給付型のため返済の義務はありません。

給付されるのは、「入会金」「利用料・交通費の合算」の二つ。
「入会金」は、これからフリースクール等を新規で利用する方が対象で、奨学金の額は、入会金の半額(上限25,000円)です。
「利用料・交通費の合算」は、フリークスクール等を利用予定、または利用中の方いずれが対象となり、対象利用料・交通費を合算した額の半額(月額上限20,000円)が給付されます。
応募情報などの詳細は基金のウェブサイトで公開中です。

子どもが学びたい時に、学びたい場所で学べる……そんな世の中の実現を目指す「たまきちゃん」が、今後大きく成長することを願っています。

nobico(のびこ)編集部

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