低年齢ほど高リスク…子どものスマホ依存を防ぐ「家庭のルール」

樋口進
2024.03.22 09:37 2024.03.22 07:00

スマホをいじる男の子

「スマホ・ゲーム依存」に陥ると、イライラしやすくなる、攻撃的になるなどの症状がみられます。スマホは便利な機器ですが、うまくつきあえるように大人が見守っていくことが大切です。久里浜医療センター院長の樋口進さんが語ります。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年6月号から一部抜粋・編集したものです。

「スマホ・ゲーム依存」から子どもを守る

タブレットに熱中する子ども

今の子どもたちは、生まれたときからスマートフォンが身近にあるのが当たり前です。小学生でも7割以上が動画視聴やゲームを利用しているとの調査があります。たしかにスマホは多機能で便利であり、子どもたちを惹きつけるエンターテインメントもたくさんあるでしょう。ですが、それゆえにトラブルも数多くあります。

その1つが、スマホやゲームへの「依存」です。依存が進行すると、スマホやゲームに執着する一方、理性的に考える力が次第に衰えていきます。そして、感情のコントロールができなくなる、いつもイライラしている、攻撃的になる、など精神面での問題も現われてます。

誤解してはいけないのは、毎日のようにスマホやゲームに触れているからといって、必ずしも依存に陥るわけではありません。好きなだけゲームをしながらも、生活習慣は乱れず、勉強も遅れず、他の遊びやスポーツを楽しんでいる子はいます。

ですが一方で、他の子と同じくらいの使用時間にもかかわらず、依存に陥ってしまう子もいます。つまり、リスクの高さは人によって異なり、お子さんごとに個別に対処していく必要があるのです。

とはいえ、使用時間が長くなるほど、どんなお子さんでもリスクが高くなるので、幼いうちからしっかり予防策を講じましょう。

「スマホ・ゲーム依存」になるとどうなるの?

ゲームコントローラーと子どもの手

スマホやゲームは低年齢であるほど依存しやすいので、注意が必要です。

・ギャンブル依存と似ている
スマホやゲーム依存は、アルコールやギャンブルなどの依存と同様、脳の報酬系と呼ばれる神経回路がかかわっています。この働きは、依存対象から離れにくくし、その行動を繰り返したいと思うと同時に、より強い刺激が必要となります。その結果、たとえばゲームであれば、プレイ時間がどんどん伸びて、際限なくゲームし続けるようになります。

・どの程度だと「病気」なの?
スマホを毎日使っている、ゲーム好きで毎日プレイしている、くらいでは依存とは言いません。ですが、使用がエスカレートし、大事な用事があるときにもやめられない、睡眠不足が続くなど生活に支障が出ている、冷静な判断ができず高額課金をやめられない、といった場合には依存が疑われます。

【ゲーム依存に特有の症状】
・ゲームのことがいつも頭にある。いかにゲームをするか考えている
・ゲームを始めるとやめられない。時間を減らそうと思ってもできない
・ゲーム機を隠しても執念深く探し出す。見ていない隙に保護者のスマホを使用する
・ゲームができないとイライラし、不機嫌になる。攻撃的、暴力的になる

スマホを触る女の子

・スマホはとくに依存へのリスク大
従来のパソコンやゲーム機による依存に比べ、いつでもどこでも使用できるスマホは保護者の目が届きにくく、依存へのリスクが高いと考えられます。外出中や夜に布団に入った後、トイレでさえも使えてしまうため、子どもがスマホで何をどのくらいしているのかを把握していない家庭も少なくありません。

・低年齢ほど依存に陥りやすい
人間の行動は、「本能」を司る大脳辺縁系と、「理性」を司る前頭前野によってコントロールされています。子どもはもともと、大脳辺縁系が大人より優勢になっています。さらに子どもは、大人ほど長期的な見通しをもっていません。そのため、幼いほど「ゲームをしたい」という衝動のままに行動しやすく、より依存に陥りやすいのです。

・機器の取り上げは要注意!
低年齢のうちは、機器を取り上げる、使わせなくするなどで、ある程度は対処できるかもしれません。しかし、年齢を重ねたり、依存が進んだりするにつれて、禁止されることで衝動的に暴れたり、自暴自棄な行動をとったりする恐れも強くなります。本人も納得できる方法を探ることが大切です。

・健康への影響も大きい
スマホやゲーム依存では、直接的な身体への悪影響もみられます。まず、長時間画面を見つめることによる眼精疲労、頭痛、めまい、肩こり、腱鞘炎など。また持久力や瞬発力、柔軟性や握力といった筋力や運動能力が、その年代の平均値以下になってしまうケースも。睡眠の乱れも起こりがちです。

樋口進

久里浜医療センター院長
東北大学医学部卒業。米国立保健研究所留学、国立久里浜病院臨床研究部部長、同病院副院長などを経て現職。ゲーム障害、ギャンブル障害などの行動嗜癖、アルコール関連問題の予防・治療・研究などを専門とする。2011年に国内初のネット依存治療専門外来を設立。