親の「何気ないひと言」が子どもの発想力を伸ばす

岩田かおり

困難にぶつかっても、自分なりに考えて創意工夫できるような、発想力・想像力=「ひらめき力」を伸ばすために幼児期にすべきこととは? ママプロジェクトJapan代表の岩田かおりさんが、ひらめき力を育てるコツをご紹介します。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年12月号から一部抜粋・編集したものです。

幼児期は「ひらめき力」を伸ばす絶好のチャンス

これからの時代は、AI (人工知能)やデジタル化などの技術の進展がさらに進むことから、子どもには人間特有の発想力を養わせたい! 豊かな想像力を身につけさせたい!などと感じている親御さんも多いと思います。

発想力や想像力、アイデア力のことを、ここではまとめて「ひらめき力」と表現しますが、この「ひらめき力」は、才能やセンスがある人だけのものなの? どのように鍛えたらいいの? 何歳から鍛え始めるといいの? と悩みますよね。

でも、親とて何をしたらいいのか迷って、ドリル、問題集、何か習い事を探さないと! と肩に力を入れる必要はありません。

子どもは、パパやママ、きょうだい、友だちなどとの「面白いね」「楽しいね」という会話や経験を通じ、自分とは異なる発想があることに気付き、学び、取り込み、新しいイメージを作り出していきます。

幼児期は、こういった「面白いね」「楽しいね」という会話や体験を重ねやすく、自然の流れで「ひらめき力」をぐんぐん伸ばしていける絶好の時期なのです。

「楽しむ」ことが何より大事!

実は、この『ひらめき力』によってひらめいたことには正解がないため、奥深く面白いのですが、正解がないからこそ、突拍子もない子どもの発言に不安になったり焦ったりすることがあるかもしれません。

しかし、会話や体験を通じて「楽しむ」を何度も繰り返すことが『ひらめき力』を育む土台になりますから、心配になっても焦らず、わが子の成長を応援していきましょう。

子どもの『ひらめき力』を伸ばそうと、「考えなさい」と命令して考えさせても、子どもは考えること自体が嫌いになってしまいます。それよりも、子どもが自ら考えるための機会を与えたり、答えが出るまでゆっくり待ったり、周囲の人間が好意的な反応を示したりすることによって、常識にとらわれないまったく新しい発想を生み出したり、新しい感性で独創的なモノを作り出したりすることができます。

肩の力を抜いて、ぜひこれからお伝えする方法を取り入れてみてくださいね!

「ひらめき力」は、こんなときに伸びる!

子どもの発想力や想像力を伸ばすチャンスは日常に溢れています。そのチャンスを見逃さず、上手にサポートしていきましょう。

・楽しい! 遊んでいるとき
子どもは遊ぶことが大・大・大好きです。そして、幼児期の遊びは「学び」そのものなので、スマートフォンやタブレットには頼らず、手足や頭を使う遊びをできるだけしましょう。

「嬉しい」「楽しい」体験から、子どもはもっと面白くするには……と発想を膨らませます。同年代の子が、ドリル・問題集・習い事を順調に進めているのを見て、うちの子は遊んでばかりだけど大丈夫かな……と不安に思う必要はありません。遊びを通じて、『ひらめき力』は伸ばせます。

特に、親子での遊びが最適です。その際に、「◯◯ちゃんは、どう思う?(どうする?)」といったようなやり取りを盛り込むと良いですね。

・どうしよう…… 困ったとき
子どもの考える力が最も発揮されるのは「困ったとき」。「どうしようかな……」と思った瞬間に回避方法や新しいアイデアを探します。まずは簡単な課題を与えて、乗り越えた達成感を味わわせましょう。

たとえば、お箸を配るお手伝い。このとき、人数より少なめのお箸(8本必要なら7本)を渡すなどがオススメ。

子どもなりになんとかしようと考えます。子どもが「1本足りないよ」と言ってきたら「そっか、気づかなかった。ありがとう!」と、ほめることも忘れずに。最初から難しい課題を投げかけるのではなく、スモールステップから始めるのがポイントです。

・周囲の人が好反応を示したとき
子どもは自分のしたことで周りの人が楽しそうに喜んでいると、一気に楽しくなります。「すごいね」「よく思いついたね」と拍手されたら有頂天! 「それ面白いね!」といった言葉にハイタッチやハグ、スキンシップを加えるとより効果的です。

子どもの口から飛び出す突拍子もない発言を耳にすると、笑うより先に不安になって「そんなこと言わないの!」などと注意してしまいがちですが、これはNG。

もっと喜ばせたいという気持ちが働くと、さらに面白いアイデアはないかとより深く考え始めるので、突拍子もない発言のときこそ好反応が必要です。

「ひらめき力」を伸ばすために大切なこと

子どもの興味関心があるものを一緒に楽しみ味わい、広い心で受けとめていきましょう。どんなときも焦らず、見守ることが大事です。

①興味のあるものだけで良いと割り切る
子どもの力を伸ばそうと意気込むと、子どもの興味関心はさて置き、親のやらせたいものを与えがち。これを続けると、子どもはやらされていると感じて「もう……やだ」「やりたくない」となり、『ひらめき力』の土台となる親子関係がガタガタになっ
てしまいます。

たとえば、子どもの興味関心が「昆虫」「電車」「おままごと」ならば、それだけで良いと割り切り、とことん遊ばせましょう。このときに、「〇〇で遊んだほうが良いんじゃない?」「もっと他の遊びをしようよ」などと誘導し続けると、親は自分の嫌なことをさせようとする人という位置づけになります。

子どもは、自分の興味関心があることをある程度つき詰めると、自然と次の対象に興味を移していきます。あきるまで満喫させてもらえる環境だと安心安全を感じ、親の提案も受け入れやすくなります。

このまま「昆虫」「電車」「おままごと」ばかりだと成長がとまってしまうのではといった焦りや不安は横に置いて、まずは安心安全の親子関係を築くことが重要です。

②間違いを細かく指摘したり、訂正したりしない
子どもは思いついたことを親に一生懸命伝えようとします。そのとき、子どもがちょっとした言い間違えをしたり、単語や熟語の意味を理解せずに使っていたり、何を伝えようとしているのかわからなかったりしても、「それ、間違っているよ!」「何を言っているかわからない」などと指摘しないこと。

大人でも頑張って説明した際に、否定されたり細かい指摘をされたりすると、ガッカリして悲しい気持ちになりますよね。これではせっかくの『ひらめき力』も、残念ながら育ちません。

でも、そのまま指摘しないでおくのは少し心配ですよね。そういった場合は、明るい雰囲気で訂正するのがポイント。たとえば、「あれ! トウモコシみたいだね」と子どもが言ったら、「ほんと! トウモロコシみたいだね」と、何気なく訂正すればOK 。

人間は「教えなくても育つ」生き物なので、成長とともに自分の間違いに気づき、修正して覚えていきます。間違えて覚えたら大変! と細かく訂正し続けると、表現することを恐れ始めるので要注意です。子どもの話はニコニコと笑顔で聞きましょう。