ブルーナの絵本は「1ページ4行」…翻訳者が大切にした作品の魅力
いつの時代も子どもたちに愛される、ディック・ブルーナさんの絵本。
手描きのあたたかさを感じる登場人物はもちろん、リズミカルで声に出して読みたくなる日本語訳も魅力の一つです。
2024年1月発売の新刊、『ぼりすと ばーばら』『ぼりす かいものにいく』『ゆきのひの ぼりす』(福音館書店)の翻訳を担当された中野百合子さんに、絵本を日本語に訳すにあたって大切にされたこと、そしてブルーナさんの絵本の魅力を語っていただきました。
三代目の翻訳者として大切にしたこと
――石井桃子さん、松岡享子さんに続き、ブルーナさんの絵本の翻訳を新たにご担当されることになった経緯を教えて下さい。
2021年の秋、松岡享子先生から『くまのぼりす』の続き二作の翻訳を一緒にやってみませんかとお声をかけていただきました。突然のことでしたが、松岡先生にご病気が見つかった時で、共訳という形で『ぼりすとこお』、『ぼりす そらをとぶ』の翻訳に関わらせていただくことになりました。
ご闘病中の松岡先生とメールや音声でやり取りをし、色々なことを教えていただきながら翻訳作業に取り組んだことは、大きく心に残る経験となりました。それがご縁で、今回出版された三作を引き続き翻訳させていただくことになりました。
――本作を訳す時に大切にされたことはなんですか?
まずは、原文に忠実に訳すということを大切にしました。なるべく原作と同じように1ページ4行に収め、「文章のおしりが出たり入ったりしないようにする」ということも、松岡先生から言われていたことでしたので、今回もできるだけ4行に収めるように気をつけました。
また、シリーズの沢山の本がすでに出ているので、他のものと雰囲気が違ってしまわないように努めました。
――石井桃子さん、松岡享子さんの訳は参考にされていますか?
うさこちゃんの本は子どもの頃から読んでいましたし、日本で児童図書館員として働いていた時にも子どもたちと沢山読んで、このシリーズのもつ心地よい日本語のリズムは身体で覚えていると思いましたが、それを自分で書くというのは全く別の問題でした。
訳している間は何度も何度もシリーズを繰り返し読み、「参考にした」というのとは少し違うかもしれませんが、石井先生や松岡先生がブルーナさんの本を訳される際に大切にされていたことを、私も忘れないようにしようと心掛けました。
どの作品にもドラマやクライマックスがある
――中野さんの考えるブルーナ作品の魅力は何でしょうか。
かわいらしい登場人物たちはもちろんですが、ブルーナさんの本のもつ優しさや温かさ、また子どもに対する真摯な姿勢が、シリーズのどれをとっても安心して読めるということにつながっていると思います。
また、どの作品にもドラマやクライマックスがあり、短いお話ながら充実した読後感が残るところや、何回読んでも新鮮な気持ちで楽しめるところも魅力だと思います。
――「ぼりすとばーばらの絵本」シリーズを読み聞かせする際、どのように読んで欲しいですか?
子どもがお話を聞く環境を整え、読み手も楽しんで素直に読んでもらえれば、物語の面白さは十分伝わると思います。ブルーナさんのシリーズの一環として楽しんでもらえたら嬉しいです。
関連書籍
ぼりすとばーばらの絵本
(ディック・ブルーナ 文・絵/なかのゆりこ 訳、福音館書店)
ぼりすはばーばらに得意の木登りを見せようとしますが、途中で足がすべって木から落っこちてしまいました。そんなぼりすを見て、ばーばらはいいことを思いつきます。(『ぼりすと ばーばら』)
「きょうはぼくがかいものにいくよ」と出かけるぼりす。パン、牛乳、チーズに野菜、と買い物をすすめます。やがてメモにない花屋さんに。ばーばらに何か買うのでしょうか。(『ぼりす かいものにいく』)
ある日ぼりすはそりあそびを楽しみます。やがてばーばらもやってきて、こんどはふたりでゆきだるまをつくってあそびます。ぼりすとばーばらのあたたかい冬のお話。(ゆきのひの ぼりす』)
くまのぼりすとばーばらのお話3冊をセットにしました。