心配性の親ほど「子どもの話す機会を奪っている」可能性が高い理由

精神科医さわ
2024.04.08 14:53 2024.04.11 17:00

母親と男の子

わが子を心配する気持ちが強いあまりに、「この子は自分がいないと何もできない」「自分で意思を伝えることができない」など思い込んでいませんか? しかし、どんな子でも園子自身の意志や考えを持っているのです。児童精神科医である、精神科医さわさんが、子どもを見守る重要性を語ります。

※本稿は、精神科医さわ著『児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること 』(日本実業出版社)から一部抜粋・編集したものです。

不安の強い親ほど「見ない、待てない、気づかない」

頭を抱える母親

心配性の親御さんというのは、子どもが自分の気持ちを口に出すのを待てませんし、子どもの様子を見ているようで、じつは見ていません。見ていないから、子どもがなにかを言いはじめるのにも気づきません。

そんな、子どものことを「見ない、待てない、気づかない」というのが、不安の強い親御さんの特徴です。

「見ない、待てない、気づかない」親御さんは、子どものことを信じることができません。心配性の親は、この子は私がいなければなにもやらないし、なにもできないし、なにもわからないと思っているからです。

だからこそ過干渉になりやすいのですが、子どもがやる前から親が手を出してしまう、なにかする前に親が道をつくってしまうということを繰り返していくと、子どもは「自分がやらなくても親がやってくれるからいいか」と感じるようになっていきます。そして、子どもが自分ではなにもできないという負のサイクルにおちいってしまいます。

子どもが成長する機会を奪っているのは親御さん自身なのです。まずは、子どもの目を見て、子どもの声を聞くことからはじめてみてください。そして、子どもを見守ること。大事なことはそれだけです。

子どもの声に耳を傾けていますか?

頭を抱える男の子

家で暴れる子どものことで困っていてクリニックに訪れる親御さんの中には、「どうしたらいいんですか?」と私にたずねるお母さんも多くいます。もちろん、心配だから正解を求めたくてたずねるのはわかりますが、その答えを持っているのはお子さん本人なのです。

「お子さんに、お母さんにどうしてほしいのかって聞いたことありますか?」と聞くと、言葉に詰まる方が多いです。

もちろん、子どもが暴れているときは感情的になっていてどうにもできないかもしれませんが、感情的になっていないときも必ずあるはずですから、そのときに「どうしてほしい?」と聞いてみてほしいのです。

子どものことをちゃんと見て、声を聞いて、信じるというのは、頭ではわかっていても、「じゃあ、どうすれば?」と思うかもしれません。

「見ない、待てない、気づかない」の裏返しは、ただ笑顔で、愛情を持って、子どもを見守るということです。

ふだん子どもにいろいろなことをしてあげている親からしてみれば、「それだけ?」と思われるかもしれません。でも正直言って、それだけなんです。一番簡単だけど一番大切で、多くのお母さんが一番できていないことです。そして、やろうと思えば、すぐにできることでもあります。

お母さんが笑顔でそばにいるだけで子どもは安心し、おだやかになり、自分の言いたいことを伝えられるようになるのです。

「信じて見守る」という選択肢

手

どうしても子どものことが不安でしかたがないという親御さんにとりわけお伝えしたいのは、「愛情を持って見守る」のも大切な子育てだということです。子どもをコントロールするのではなく、子どもを信じて見守るのです。

人は社会の中で安定した人間関係が築けていると、逸脱した行動や犯罪行為をする可能性が低くなるという考え方がありますが、まさに親の信頼が子どもの行動によい影響を与えます。

子どものことでなにかアクションを起こしたいと思ったときは、いったん立ち止まり、お子さん自身をよく見てほしいのです。そして、まわりの情報に惑わされず、自分の子どもを信じてしばらく見守ってみるという選択肢があることを忘れないでください。

子どもに干渉したくなる親御さんには、自分が子どもを信じていないという自覚はないと思いますが、その行動が子どもにどんな影響を与えるのかをよく考えてほしいのです。よかれと思って子どもに対してしていることが、逆効果になっているとしたら、それって「子どものため」と言えますか?

子どもには子どもの人生があり、子どもにも意志や考えがあるのです。「そんなこと言っても、いつも口うるさく言っている親が急になにも言わなくなったら、子どもは見放されたって思いませんか?」とおっしゃるお母さんもいましたが、もしそう思われるなら、正直に話してみてもいいと思います。

そして 「お母さん、今まで心配しすぎてあなたに声をかけすぎたかなって思ったの。だから、これからはもうちょっとあなたのことを信じて見守るようにするわ」と、素直に方針を見直す宣言をしてください。

「でも、困ったらお母さんはいつでも助けるから、声かけてね。お母さんはあなたを見捨てるわけじゃないからね」と言ってもいいと思います。

子どもの反応はどうでしょう。きっと子どもの表情を見るとわかるはずです。子どものことをしっかり見守りながら、一歩引いて俯瞰する。お母さんが信じてくれている、なにかあったらお母さんが助けてくれるという安心感が、子どもの自制心や自信にもつながるのです。

精神科医さわ

精神科医さわ

児童精神科医、精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師、医療法人霜月之会理事長。精神科の勤務医として、アルコール依存症をはじめ多くの患者と向き合う。発達特性のある子どもの育児に身も心も追いつめられ離婚し、シングルマザーとして2人の娘を育てる。長女が不登校となり、発達障害と診断されたことで「自分と同じような子どもの発達特性や不登校に悩む親御さんの支えになりたい」と勤務していた精神病院を辞め、名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開業。老若男女、さまざまな年代の患者さんが訪れる。これまで延べ3万人以上の診察に携わっている。

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