「子どものプログラミング学習」のメリットは? 何歳から? 何をどう学ぶべき?
昨今、ChatGPTやGeminiをはじめとするAIの登場で、読書感想文やレポートなど、宿題をAIに書かせて提出するといった問題が出てきています。学校教育でもAIを子ども達にどう使わせるかということが課題になっています。
小さい頃から知識がないまま何も考えずAIに頼るだけだと、思考力が乏しくなり自分で考えて問題解決ができず、創造力も無くなっていきます。
子ども達にAIをどう使わせるかというのがこれからの課題ですが、これからのAI時代に必要なのは、AIを使いこなして問題解決できる力です。この問題解決力が身につくのが、まさにプログラミング教育と言えるでしょう。
ではどういったプログラミング教育が必要で、どんな教室を選べばいいのか、そのポイントを親子でプログラミングの基本を学べる『論理的思考力がつく!ももたろうのぼうけん プログラミングドリル』の著者の熊谷基継さんがお伝えします。
プログラミングに必要な本当のスキルとは
さまざまなプログラミング教材がありますが、子ども達がその手順通りにやってプログラムを完成させることはできても、自分が作りたいものを作ろうとした時、どうしていいかわからず手が止まってしまうケースが多々あります。
1つ1つのプログラムの意味は理解できても、教材の手順通りにやっているだけでは、どうやってプログラムを組み立てるのかという根幹のスキルが身につかなくってしまいます。
ここで必要なのは、「自分が作りたいもの=ゴール」から何をすればいいのかを細かく分解する力です。ゴールを細かく分解すれば、1つ1つを作るのは難しくないので、あとはそれを組み合わせるだけです。
プログラミングによく例えられるのが家事です。料理や掃除も「◯◯を作る」「部屋をキレイにする」というゴール(解決したいこと)があり、それらを細かく分解して1つ1つを優先順位をつけて段取りよく進めていきます。料理のレシピがそうですね。
プログラミングに必要なのはこの「分解力」であり、分解したものをうまく組み合わせることによりゴールに到達する力がとても重要です。
これからのAI時代に必要なのも「分解力」
実は、ChatGPTやGeminiなどのテキスト生成AIを使いこなすためにも先ほどの「分解力」が必要になってきます。これは子ども達だけでなく、これからAIを使う大人にも必要なスキルです。
テキスト生成AIは、プロンプトと呼ばれるAIへの命令文を書くことによってAIから回答を引き出すことができます。たとえば「◯◯について教えて」とAIに聞けば回答が返ってきます。
このプロンプトの書き方によってAIの回答が変わってくるので、満足できる回答を導き出せるプロンプトを書けることがAI時代に必須のスキルとなります。
良いプロンプトを書くには「AIに聞きたいこと・解決したいこと=ゴール」を分解して、条件やテーマなど具体的により明確に書き出すというテクニックが求められます。
そしてこのスキルは、先ほどお伝えしたプログラミングで身につけられるのです。
次は、そのプログラミングの最近の教育状況についてお話ししていきましょう。
小・中学校でも必修化されている「プログラミング教育」とは
2020年度から小学校ではプログラミング教育が必修となりました。中学校では以前から必修とされていましたが、2021年度から学習指導要領で「全面実施」という扱いとなり、2020年度以降、学校教育ではプログラミング教育に重点が置かれるようになっています。
高校でもプログラミングは「情報」科目で扱われており、2025年1月の大学入学共通テストでは受験科目として「情報I」が導入されます。
学校のプログラミング教育ですが、新しい分野の学習内容であるため、先生ごとにその知識の差があり、専門の教員がいたりいなかったりと学校によって様々です。
実際に授業時間が足りず、科目の中でプログラミングを教え切れないということも起きているようです。
プログラミング教室を選ぶポイント
学校以外で専門的にプログラミングを学ぶ場としてあるのがプログラミング教室です。プログラミング教室も指導方法が様々なので、どのタイプが自分のお子さんにあっているのかをおさえることが大切なポイントになります。
①【授業タイプ】一般的な授業形式(通い)のもの
学年が低ければ低いほど、大人数での指導が難しいので、少人数型の、個別指導に近い形になります。こういったタイプの教室は友達もでき、自主学習と違って継続しやすいともいえます。自主学習が苦手なお子さんであればこのタイプの教室がいいでしょう。
②【自主学習サポートタイプ】教材をもとに自主学習、質問があればその場で先生がサポートするもの
プログラミング教室というとこのタイプのものが多いかと思います。
タブレットやパソコン上に表示された動画やテキスト教材に従って各自学習して、わからないところがあったら周りにいる先生に聞くという形式のものです。
③【通信教育タイプ】自宅での完全自主学習で、定期的にオンライン面談などで先生がサポートするもの
オンラインで動画やテキストで学べる教材があり、それを自宅などで自主学習するタイプです。自主学習だけだと継続しないこともあるので、定期的にオンラインで先生が進捗状況の確認や目標設定をしたり、わからないところを丁寧に教えてくれる形式です。
プログラミング教室が近くにない方はこういったオンラインでもできるタイプの教室を選ぶのがいいでしょう。
子どもにあった教室を選ぶときの質問フレーズ
先ほどご紹介したように、プログラミング教室のタイプは様々です。もし教室に質問するのであれば、次の質問を投げかけてみるといいでしょう。
①【質問1】プログラミング教育を一言で言うと何でしょうか
いろいろな答えがあると思いますが、「プログラムが書けるようにすること」という答えが返ってくることもあると思います。もちろんプログラムが書けることもゴールの1つですので決して間違いではありません。
「論理的思考を身ににつけて問題解決できるようにすること」という回答が返ってくる教室は、学校の指導要綱などを理解した上でプログラミング教育の本質を理解して指導されている教室といえるでしょう。
②【質問2】先生はプログラミング経験者でしょうか
これは担当される先生方がどれくらいの知識を持っているかを判断する質問になります。
もともとある学習塾が、新しくプログラミング教室を始めるというケースがあり、専任の先生がいらっしゃらないということもあります。
とはいえ先生方は用意した教材を教えられますので全く問題ありませんが、より高度なプログラミングを学びたいというお子さんであれば、経験者がいる教室や、オンライン教材などをやってみるのもいいでしょう。
③【質問3】教材は自主学習だけでしょうか
教材は自主学習のところが多いのが現状です。お子さんが自主学習で継続してできるのか、あるいは個別に丁寧に教えてもらった方がいいのか、お子さんの向き不向きを考えながら選ぶと良いでしょう。
この他、教材どおりにすすめるだけではなく、自分で考えて作るカリキュラムになっているか、自分で作りたいプログラムを作るカリキュラムがあるかも確認しておきましょう。さらに自分の作品をプレゼンする場があれば子ども達にとってより得られるものが大きいでしょう。
いつからでも学べるプログラミング
ますます注目度が上がっているプログラミングですが、学び始めるのは早ければ早い方がいいでしょう。今はビジュアルプログラミングという、パズルをくみたてるように遊び感覚でプログラムが学べるツールがあるので、小学生や未就学児もプログラミグが学べる時代になりました。
またパソコンやタブレットを使わなくても、知育玩具やプログラミングドリルなどで基本的な論理的思考を身につけることができます。
みなさんがイメージする「プログラム」は単にコンピューターへ命令する手段ではないでしょうか。お子さんには、プログラムを書くことの前に、どうやって何をコンピューターやAIに命令するのかを、分解して論理的に組み立てる「思考のクセ」をできるだけ早いうちにつけておくことをお勧めします。
新年度、保護者の皆さまも子どもたちといっしょにプログラミング学んでみてはいかがでしょうか。
『論理的思考力がつく!ももたろうのぼうけん プログラミングドリル』(かんき出版)
プログラミングの基本が遊びながら身につく不思議なドリルです。パソコンやタブレットは必要なし。必要なのはえんぴつだけ。
ちょっと変わった「ももたろう」のストーリーを読み進めながら、迷路やクイズを解いていくと、自然と順次実行、繰り返し、条件分岐、デバッグ、暗号、アルゴリズム、変数・関数といったプログラミングの基本が身につきます。