「小学3年までに英語を始めた子」とそうでない子に出る発音の差

豊田朋子
2024.02.09 16:55 2024.02.11 11:50

勉強に悩む女の子

「英語を身につけてほしい…」の願いは子どものより良い将来を願う多くの親にとっての願いです。英語教育に対する意識も極めて高くなっています。

しかし「いつから学習を始めるべき?」については議論がつきません。英語学習スタートはいつがベストタイミングなのでしょうか?

フォニックスという教授法でネイティブと同じプロセスで言語習得をし、英語学習を通して日本の子どもたちの自己発信力を伸ばす英語教室を複数運営し、講演なども精力的に展開しているGlobal kids英語会代表の豊田朋子さんにお話を聞きました。

小学校低学年からのスタートがベストな理由とは

勉強する男の子

――子どもに英語を学ばせることで何が変わりますか?

もはや英語は社会を生き抜くための最低限のツールになっています。

日本語の他に、国際共通語でもある英語を自分の発信手段として持っていることで、お子さんの人生の選択肢にひろがりが出るのは言うまでもないでしょう。よい学校に行き、良い会社に就職するということ以前に、人生の質(QOL)が変わるぐらいのこととして捉えるべき、と私は考えています。

――何歳から始めるのがベストとお考えですか?

私が運営しているスクールで採用している「フォニックス教授法」の視点で言うと、小学1年生~小学3年生がベストです。

そもそも「フォニックス」というのは、英語の文字と音のルールなのですが、これが発声法、舌や口角筋の動きなどが日本語の音と全く違って、われわれにとっては、まさに非日常の音なのですね。個人差はありますが、小学校高学年以降になると自意識や羞恥心が出てきて、素直にその音をインプット、アウトプットできません。

反対に小学校低学年からフォニックスを積み重ねているお子さんは、海外経験がなくても、きれいに発音できます。さらに、当スクールでは毎年英語プレゼン大会を開催していますが、その際に国際的なプレゼンのマナーとして、ジェスチャーやアイコンタクトなど、非言語表現を徹底します。これも、低学年のお子さんたちの方が気おくれなくできますね。

英語を学ぶことは、異質な文化を取り入れることでもあり、そういう意味で、まだ自意識が希薄で、比較的なんでも素直に吸収する時期、早くて年長さんから、遅くとも小学3年生までに始めることをおすすめします。

ただ、フォニックスは何歳から始めても遅すぎるということはありません。私自身、小6からフォニックスを習い、中学で英語の教科書を初めて手にした時、最初から最後まできれいに音読できた経験が今のスクール経営につながっています。

日本の英語能力指数ランキングが過去最低に

――学校での英語教育と、コミュケーション手段としての英語教育に違いはありますか?

私自身がもともと私立中高の英語教師ですが、学校の英語は日本の大学受験のための手段であり、コミュニケーション手段としての英語とは別物です。それは今も昔も基本的に変わりません。教育プログラム自体の問題もありますが、学校ではコミュニケーションツールとしての英語を教えられる人材が圧倒的に不足していることが私は問題だと考えています。

国際的な語学教育機関のイー・エフ・エデュケーション・ファーストが、英語を母国語としない国や地域の英語能力指数ランキングを2023年11月に発表しましたが、それによると日本の順位はなんと113ヵ国・地域中87位と過去最低。この10年、日本の英語力は低下の一途をたどる一方です。グローバルでの日本の存在感がますます低下する可能性があると考える専門家もいるようです。

このことはすでに多くの親御さんも気づいていて、学校教育以外に民間の英語教育を受けさせることを「自衛」と呼ぶ方々もいらっしゃいます。

中高時代に、英語を通して世界の動きをキャッチすることがモティベーションにつながる

―お子さんがすでに小学校高学年以上の親は、どうすべきなのでしょうか? これからでもできることはありますか?

学校英語とは全く別のアプローチで英語に触れることをおすすめします。

例えば、アーティストやYoutuberなど、海外の「推し」をみつけて、そのインスタなどを英語でフォローするなどでも良いと思います。理想的なことは、当スクールの中高クラスでも実施していますが、英字新聞やBBCやCNNなどの海外メディアで、日々世界の動きを英語でキャッチすることですね。

中高生は思春期、すなわち自己確立期にあたるので、その時期に英語を通して日本とは全く別の視点や価値観に触れ、視野を広げ、世界のダイナミズムの中で自分も生きているのだと実感することは、その後の人生のビジョン、スケールを変える良い機会だと考えます。英語は世界で自己発信する道具で、世界をよくする道具の一つなのだと。自己確立期の入り口にあたる中学生で認識することは有効であると思います。

英語学習とはオープンエンド、すなわち終わりなき学習であることを、フォニックス学習の黄金期の小学1年生では認識できないかもしれませんが、中学生なら自覚できるはずです。

豊田朋子

豊田朋子

株式会社ダイバース・キッズ代表取締役。
津田塾大学国際関係学科卒業。私立中・高校の英語教師を経て、ニューヨーク大学大学院に社会学専攻で留学。同校中退後、ニューヨークの日系新聞の記者として勤務。帰国後、教育関係の出版社に勤務。その後、フリーランスの編集・ライターとして独立し、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの教育事情などを取材・執筆。2011年に国際教育を視野に入れた、英語スクー ル「Global kids 英語会」を開設。その運営母体である株式会社ダイバース・キッズの代表取締役社長に就任。