5歳の子どもが嘘をつくのはなぜ?嘘をついた時の接し方を解説
「5歳になった子どもが嘘をつくようになった」と悩んでいる親は少なくありません。嘘は悪いことと思われているかもしれませんが、実は子どもにとっては成長過程のひとつ。ただしついてはいけない嘘をついたなら、しっかりと「いけないこと」だと教えてあげることも大切です。5歳の子どもが嘘をつくようになったら、どのように対処すれば良いのか見ていきましょう。
【監修】精神科医さわ
児童精神科医、精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師、医療法人霜月之会理事長。主な著書に『児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること』がある。
子どもの嘘は成長過程のひとつ?
子どもが嘘をつくのは、実は「自分に関心を持ってほしい」という気持ちや、「自分を守りたい」という心から生まれる行動です。また親の言葉を真似することで、嘘となってしまうこともあります。つまり子どもが成長する過程のひとつ。
実際に発達心理学における研究でも、「子どもが嘘をつくためには複数の認知機能の発達が重要」と報告されています[1]。5歳の子どもが嘘をつくのは、人をだまそうとしているわけではありません。成長の過程のひとつとして見守ってあげることが大切です。
参考:幼児におけるうそ行動の認知的基盤の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/26/2/26_135/_pdf
5歳の子どもが嘘をつく理由
それでは5歳の子どもが嘘をつく理由について、もう少し深く掘り下げていきましょう。主に次のような5つの理由があります。
願望や空想
5歳以前に起こりやすいのが、願望や空想が混じっているがゆえの嘘です。
子どもの中には、現実と空想が混ざってしまう子がいます。たとえば妖精やぬいぐるみを本当に存在している生き物だと思ったり、そうなればいいなと思ったり。
その願望や空想を話すことによって、結果的に嘘になってしまうことがあります。このような嘘であれば、子どもが大きくなるにつれて減っていくでしょう。
かまってほしい
「親にかまってほしい」という気持ちから嘘をつく子どもも少なくありません。5歳くらいから嘘をつくようになったのであれば、このケースに該当する可能性があります。
たとえば親が忙しいなど、自分のことにかまってくれないと思ったときに現れます。「こう言えばかまってもらえるかな?」という子どもの「寂しい気持ち」が嘘となるのです。
叱られたくない
叱られたくない気持ちから、自分を擁護するための嘘をつくこともあります。たとえば「◯◯はやっちゃダメ」と言われていたのにやってしまったとき、他の子どものせいにする子がいます。これは「叱られたくない」という、自分を守るための行動です。
心配をかけない
「叱られたくない」という自分の擁護とは反対に、「心配をかけたくない」という親の心を気遣った嘘も見られるようになるのが5歳くらい。
たとえば保育園で友達から嫌なことを言われたのに、「今日も楽しかった」というケースです。本当のことを言ったら親は心配されることでしょう。子どももそれをわかっていて、ポジティブな方向へと嘘をつくことがあります。
親の真似をする
もし親が日常的に子どもに対して嘘をついていると、子どもはそれを真似して嘘をつくようになることがあります。子どもは親のすることを真似したがるものです。そして「パパママがしていることは悪いことではない」と思う傾向があります。
そして結果的に、嘘をついてしまうことがあります。親はご自身が子どもの前で嘘をついていないか、確認して直していってください。
叱るべき嘘と見逃していい嘘がある
5歳ごろの子どもがつく嘘には、叱るべき嘘と見逃していい嘘があります。親にかまってほしくてついた嘘や、願望や空想から生まれた嘘、心配をかけたくないからと親を気遣ってついた嘘であればそのまま見逃してあげましょう。
しかし自分が叱られたくないからついた嘘だったとしても、いきなり詰問したりせず、「なんで、そのような嘘をついたのか?」、まず子どもの気持ちに寄り添って考えてみてください。
5歳の子どもが嘘をついた時の接し方
それでは嘘をつく5歳の子どもには、どのように接するべきなのでしょうか?解決方法について3つご紹介しますので、参考にしながら子どもと向き合ってみてください。
頭ごなしに叱らない
まずは「子どもが嘘をついている!」と思っても、頭ごなしに叱らないようにしてください。その前に「どうして嘘をついたのか?」と考えてみましょう。
5歳の子どもが嘘をつくのには、なんらかの理由があるはずです。理由に気づいて、子どもの心に寄り添ってあげることを意識してください。
子どもが話はじめられるきっかけを作る
まずは嘘をついた子どもの気持ちを受け止めてあげましょう。そしてその後は、子どもが話はじめられるきっかけを作ります。子どもの絶対的な味方になってあげて、何があったのか、どうして嘘をついたのか、子どもに優しく問いかけてあげてください。
さらに嘘を重ねることもあるかもしれません。しかし叱るのは逆効果となります。冷静になって、子どもが話をできる環境を作ることが大切です。
話をよく聞いて親の気持ちを丁寧に伝える
子どもが嘘をついた理由を話してくれたなら、親の気持ちを丁寧に伝えましょう。やめなければならない嘘であれば、その嘘が悪い理由を話して、やめるように諭してください。特に悪い嘘でなければ、そのまま受け入れてあげても構いません。たとえば空想と現実が混じっている嘘であれば、そのままにしておいても問題ないでしょう。
悪い嘘をついていたのであれば、その嘘によって親がどのような気持ちになったのかを話して、理解してもらってください。嘘をつくと相手が悲しむということが心と頭で理解できるようになっていけば、嘘も減っていくでしょう。
5歳の子どもが嘘をつかないようにするポイント
5歳の子どもが頻繁に嘘をつく。このような状況であれば、嘘をつかないようにするためのポイントを実践してみてください。
スキンシップを大切にする
まずはスキンシップを大切にしましょう。5歳くらいの子どもであれば、嘘をつくことでかまってほしいというケースもあるかもしれません。
その場合、親からの愛情をしっかりと感じられれば嘘もつかなくなるはずです。抱きしめてあげたり、ふれあい遊びの時間を設けたりするなど、スキンシップを大切にすると嘘が減ってくることがあります。
子どもに言ったことや約束は守る
もし親が子どもに嘘をついていたとしたら、子どもに言ったことや約束を守るようにすることも大切です。親にとっては嘘をついたつもりがないこともあると思います。たとえば「今度の土曜日は遊園地に行こうね」と言ったのに別の予定が入ってしまい、「また今度にしようか」と言ったとします。
しかし子どもにとっては、「土曜日は遊園地」という約束が破られたことになるのです。子どもに言ったことは守るようにすれば、子どももきっと真似してくれるでしょう。
日頃から厳しすぎる接し方をしない
子どもに厳しく接しすぎないこともポイントのひとつ。たとえば「自分を守るための嘘」であれば、「パパママに叱られたくない」という気持ちからつくものです。
子どもが「叱られるから怖い」と思っていれば、悪いことをしてしまったときに嘘が出てしまうかもしれません。危険なことをしたときなど、時には厳しく叱ることも大切ですが、日頃から厳しすぎる接し方をすると、子どもは自分を擁護したくなってしまうこともあるのです。
嘘をつく5歳の子どもにはケースバイケースで対処を
5歳ごろになると嘘をつく子どももいますが、それは成長の証です。しかしついてはいけない嘘をつくこともあるでしょう。たとえば自分を守るために、他の子どものせいにする嘘などです。
一方で現実と空想が混じっていたり、親を気遣って嘘をついたりする子どももいます。「嘘は絶対にダメ」と叱るのではなく、ケースバイケースで話を聞いて対処してください。そのためには子どもが話せるきっかけを作ってあげて、親が気持ちを受け止めてあげることが大切でしょう。
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