「内向的な性格の子」の長所を伸ばすために、親が避けるべき4つのNG行動

吉田美智子

①内気さ・感じやすさを欠点と考えて変えようとする


人の性質は、長所と短所がペアになっています。内気さや感じやすさを欠点だととらえて変えようとすると、長所も失うことになります。

また、親が欠点を変えようとすることは、よい子は受け入れるが悪い子は受け入れないという条件つきの愛情表現になってしまいます。さらに、親が子どもの欠点にダメだししたときの影響が強く作用して、子どもに大きなダメージを与えてしまう危険もあるのです。

親に長所も短所もひっくるめて丸ごと「大切な存在」と受け入れてもらうことで、子どもはどんなときでも自分を肯定できる力(自己肯定感)を持てるようになります。

欠点を克服できるのは、子どもが自分の意思で変えようとするときだけです。子どもを信じて、そのときを待ってください。

②大人のアドバイス通りにさせる

HSC型は大人が善意でアドバイスすると、できるだけ従おうとするタイプです。内向型は自分のやり方でできないことが苦しく、イライラして反抗的になります。

どちらのタイプでも、大人のアドバイス通りにさせようすると、子どもは自分で考えることをあきらめて、ただ従えばいいと思ってしまうので注意が必要です。

大人の言うことをよく聞ける子どもはお利口さんに見えるかもしれませんが、自分で考えて行ったわけではないため、きちんとできても自信はつきません。たとえうまくできなくても子どもの力でトライする体験は、子どもの意欲、好奇心、自立心を育てるので口をだしすぎないようにしましょう。

③不安を無視してがんばらせる

不安をのみ込んでがんばった成功体験を積むと、不安が克服できる子になると思われるかもしれません。しかし、そのときは成功しても、継続的に不安を乗り越えられるようになるわけではありません。

内向・HSC型の子どもは、親に強く押されると不安をのみ込んでがんばります。不安をのみ込むクセがつくと、解消されないままの不安が子どもの中で増大し、心配性で消極的、回避的になったり、場合によっては不安障害という病気になることがあります。

不安なときは、子どもが安心できるようにしてあげましょう。親が「大丈夫だよ」という気持ちで一緒にいてあげたり、子どもが自分からチャレンジするまで待ったり、心配な気持ちを聞いてあげるなど、子どもが望む方法でサポートしてください。

安心すると、子どもは自発的に親から離れてチャレンジできます。

④「ダメな子だ」と言う

子どもにとって、親は特別な存在です。とくに小学校低学年くらいまでは全知全能の神様のような存在で、絶対的な安心感と信頼感の源です。

そのため、親から言われる言葉は、子どもに大きな影響を与えます。「ダメな子」と言われたら「自分はダメな子なんだ」とそのまま信じてしまいます。内向型の子どももHSC型の子どもも、親の言葉は人一倍強く受けとめるので注意しましょう。

うっかり言ってしまったときは、「でもいいところもあるから成長が楽しみだ」とつけ加えてください。つけ足した言葉は、子どもだけでなく、自分をも勇気づけます。

また、子どもの欠点ばかりに目がいって、自分(親)が不安一色に塗りつぶされていると感じたときは、ストレスが高くなっています。その場合は、信頼できる人に話したり、リフレッシュする時間を持ったりして、こころの状態を調整してください。

人の性質は、遺伝と環境の両方の要素で決まります。子どもが変わるには、よいところも悪いところもそのまま肯定してもらえる親子関係が必要です。

そのうえで、子どもが自分の短所に気づき、変えたいと願うようになると、苦手だった自己主張や積極的なふるまいをするようになっていきます。このとき、試行錯誤できる環境や周囲の温かい励ましが、子どもの成長を後押しします。これが、環境要因です。

内気で感じやすい子どもも、成長とともに社会で生きるために必要なコミュニケーション能力や不安をコントロールする力を身につけていきます。「成長とともに」というのは、子どもによって早い遅いはありますが、10歳をイメージしてください。

なぜなら、子どもが自分や他人の考えていることがわかるようになり、どうふるまえばよいかを考え、自分の行動をある程度コントロールできるようになるのは10歳前後だからです。内向・HSC型の子どもたちは、自分のペースを乱されたり、大人のやり方を押しつけられたりすることにストレスを感じるので、あせりは禁物です。

10歳頃になると、学校生活にもなじみ、自分で目標設定をして努力できるようになります。係や委員に立候補したり、苦手意識はあるけれど人前で発表したり意見が言えるようになっていきます。

子どもの成長を感じたときには、他の子どもと比べたりせずに素直に喜んで、うれしさと努力をたたえる気持ちを子どもに伝えましょう。すると、子育てによい循環が生まれます。

コミュニケーションに不安を感じるのはなぜか

人見知りで消極的な子どもに対して、「大人になって困るのではないか?」と不安に感じる人もいるでしょう。でも先述したように、子どもたちは成長とともに対人信頼感やコミュニケーションスキルを身につけていきます。

大人になっても、不安や緊張からあいさつなどのコミュニケーションがとれないのは、元来の性質によるものではなく、不安障害やコミュニケーション障害の症状が疑われます。

不安障害やコミュニケーション障害になる理由はさまざまですが、自分を否定されたり、傷ついているのに誰にも気づいてもらえず我慢し続けたりした結果ということもあります。

たとえば、子どもの内向性や感じやすさを短所ととらえて直そうとすると、その方法によっては、知らないうちに子どもを傷つけてしまうことがあります。

その傷つきが癒されないまま育つとトラウマ型の子どもになり、大人になったときに不安障害やコミュニケーション障害に悩まされる可能性があります。次の項目では、そのトラウマ型について説明していきます。

 

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