「ママは璃花子が…」娘・池江璃花子さんの一言で気づいた、親が子どもに言ってはいけない言葉
大病からの奇跡の復活を経てパリ五輪出場する競泳の池江璃花子選手。あきらめない精神は称賛を集め、また多くの人へ勇気を与えています。
そんな池江璃花子選手は子どもの頃からどんな育てられ方をしたのでしょうか?
池江選手の親であり、幼児教室を運営する池江美由紀さんが、子どもにかけるべき言葉、使ってはいけない言葉について著書『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』で触れています。ここではその一節を紹介します。
※本記事は池江美由紀著『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです
「パンダをイメージしないでください」と言われて、パンダをイメージしない人はいない
子どもに声をかけるとき、どんな言葉のかけ方をしていますか。
「走っちゃダメ! 転ぶわよ」「気をつけないと、車にひかれちゃうよ」
言葉には力があります。言葉にすると、そのことが頭に浮かびます。
たとえば、次の文章を読んでみてください。
「パンダをイメージしないでください」
いかがでしょうか。頭のなかにパンダの姿が思い浮かんだのではないでしょうか。
子どもはもっと純粋なので、言われた言葉をそのとおりにイメージしてしまいます。「走っちゃダメ! 転ぶわよ」と言われた子は、走っていると足がもつれて転ぶ自分の姿を思い浮かべて、走りながら、つい足がもつれて転んでしまいます。
「車にひかれちゃうよ」という言葉をかけられた子どもは、車にひかれるイメージを引きずりながら、歩かなければなりません。
子どもには、そうなってほしくないマイナスの言葉を使わないことです。
「走っちゃダメ! 転ぶわよ」ではなく、
「ここでは歩こうね」「お母さんと手をつないで行こうね」と言います。
「気をつけないと、車にひかれちゃうよ」ではなく、
「無事に学校につくように気をつけてね」「左右を確認してから渡るようにしようね」と言います。
「できる」「やる」「やってみる」プラスの言葉を使う
同じ物事でも、見る方向が変わると見え方が変わります。
ネガティブな見方をすると、ネガティブな言葉になり、ネガティブな現実が見えてきます。ポジティブな見方をすると、ポジティブな言葉や表現ができて、ポジティブな現実が見えてくるものです。
教室のレッスンで何かを提案すると、「えーっ」「やだー」「ムリー」と反応する子どもがいます。ネガティブな言葉を言ったとたん、自分の気持ちがネガティブなほうに引っ張られていきます。
すると、チャレンジすればできるかもしれないことにチャレンジしなかったり、チャレンジしてもうまくいかなかったりするのです。
自分のなかで、「できない」「ムリだ」という言葉に縛られてしまいます。自分の能力や可能性を、自分で抑えつけてしまうのです。
私の教室では、「プラスの言葉を使うこと」がお約束です。
ちょっと難しそうなことに直面しても、「できる」と思う。そして、「やる」「やってみる」と口にする。
「面白そう」「楽しそう」「やりたい」─そんなプラスの言葉を使うことで、物事に前向きに挑戦する気持ちが生まれます。そして、「面白い!」「楽しい!」「できた!」というポジティブなイメージが、子どものなかに生まれます。こうしてプラスの結果が生まれてくるのです。
【ポイント】ちょっと難しそうなことに直面しても、「やってみる」と口にする。そうすることで、物事に挑戦する気持ちが生まれる。
認めてほめるのが、子どもを伸ばすコツ
ものの見方─ポジティブな見方をするのか、ネガティブな見方をするか─で大切なことは、子どもに対する見方です。子育てをしていれば、ネガティブなことがい
っぱい起こります。そうすると子どもに対しても、ついネガティブな見方をしがちです。
「また汚すんだから」「全然上手にできないんだから」「もう、お母さんを困らせてばかり……」
ついつい声を荒げてしまうことになりがちです。
でも、子どもはまだ自分をしっかり持っていません。だから、まずはしっかり認めてあげて、自分に自信を持つところから始める必要があると私は考えています。認めて、ほめる。
子どものいい点を見つけて、いっぱいほめてあげましょう。ほめられることで、「自分はこうすればいいんだ」「こうすれば自分を認めてもらえるんだ」とわかります。そういうことの一つひとつの積み重ねが、子どもの心が成長するための養分になっていくのです。
大人から見れば些細なことでも、小さい子にとっては大変なのです。たとえ小さなことでも、何かができたら、「さすが!」「すごいね!」とほめてあげましょう。
大好きなお母さんにほめてもらうと、子どもはモチベーションが上がって、もっとがんばるようになります。
そして、たとえば子どもが描いた絵をほめるとしたら、
「この虫の羽のところをすごく丁寧に描いているね」「このお花の色、お母さんはとても好きだな」
などと、よいところを具体的に指摘してあげると、さらによいかと思います。
子どもに謙遜は伝わらないから 親が子どもの前で言ってはいけないこと
教室に来たお子さんを私がほめると、それを否定するお母さんがいらっしゃいます。
「いえいえ、今日はたまたま機嫌がいいだけです」
「家では全然ダメなんですよ」
日本に特有の”謙遜の文化”が、このような発言に結びついているのかもしれません。日本文化は素晴らしいものだと思いますが、これだけは改めていきたいものです。
謙遜とは、「本当はよいと思っているのだけれども、人前でそれをひけらかすのははしたないから、あえて悪く言う」ことです。こんな複雑な意図を、子どもは理解できません。言葉そのものをシンプルに受け止めます。
「今日の自分の態度がいいのは、たまたまで、いつもは機嫌が悪いんだ」
「家では全然ダメな子なんだ」
だから、子どもをけなしたり、卑下したりするような言い方を、子どもの前でしないでください。
私も璃花子に、「ママは璃花子ががんばっていないと思っているのね!」と言われたことがありました。
「うちの子はダメなんです」
という言葉を、子どもに聞かせてはいけません。
子どものことをほめられたら、反射的に「いえいえ」と否定せず、素直にそのまま受け取って、「ありがとうございます。今日も元気でいい子でがんばりますから、よろしくお願いします」と、あえて子どもの耳に入るように言いましょう。
【ポイント】親から見れば些細なことでも、何かができたら、「さすが!」「すごいね!」とほめよう。
競泳の池江璃花子選手を育て、子どもの能力開発教室で指導してきた池江美由紀さん。幼児教室で、また3人の子育てを通して実践してきたこと、学んだことを、【池江式】子育て法としてまとめたものです。
強くやさしい心を育み、才能を引き出す【池江式】子育てメソッドを、イラストや写真を交えて解説しています。