友達の数は多い方がいいの? 明治大教授が語る「人間関係」で本当に大事なこと

堀田秀吾
2024.07.24 22:16 2024.08.15 11:50

小学生の男の子

人生において、友情はかけがえのないものです。しかし、進学先の違いやクラス替えといった環境の変化によって、友達づき合いは常に変化していきます。新しい出会いと別れを経験しながら、自分にとっての「友だちづきあい」の形を見つけていくことが大切です。

この記事では、明治大学法学部教授・堀田秀吾さんによる書籍『12歳から始める心が折れない技術』から「友だちづきあい」で大切にしたいことについてのお話を紹介します。

※本稿は、堀田秀吾著『12歳から始める心が折れない技術』(秀和システム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

友だちづき合いは「変わっていくもの」

並んで歩く二人の女子小学生

「ずっとあの子と友だちでいたい」

おたがいに気持ちよくすごせる人と、ずっと一緒にいたいと思うのは当然のことです。新しく出会った友だちと仲よくなって、信頼をきずいていくのは、とても時間と努力が必要で、めんどうくさいことです。

すでにできあがっている関係でしたら、それがあることが当然という意識になっていきますから、失うことは、つらいことにもなります。

とはいえ、友だちづき合いというのは、つねに変わっていくものです。引っ越しや進学、参加しているチームや団体など、自分の置かれている環境でどんどん変わっていきます。

たとえば、同じ環境にあっても、そのときどきの価値観や好みや興味などの変化で、つき合う友だちはどんどん変わっていきます。

友だちというのは、人生のステージでコロコロ変わっていくものです。もちろん、おさないころからずっとつき合っていく友だちもいますが、人生のそのときどきでいろいろな人に出会い、いろいろなつき合いをしていきます。

今まで仲よかった友だちが、自分以外の子と、自分との関係以上に仲よくなっていくことも当然あります。そんな友だちの姿を見て、さびしくなったり、悲しくなったりすることもあるでしょう。

そういった喪失感(なくなるさびしさ)を覚えるのは仕方のないことです。もし、人が喪失感を覚えなくなったら、人間関係やモノを大切にしなくなります。人間のような生き物にとって、喪失感を覚えることは、生きるために非常に大事な仕組みなのです。

後ろ姿の小学生


大切なのは、友だちとうまくいかなくなっても、「まあ、そういうものだよな」と軽く受け流すことです。理想を追ってはいけません。ピンチはチャンスです。

自分も、今の関係にこだわったりせず、どんどん新しい友だちを作っていけばいいのです。その仲よしだった友人より仲よくできる友人に出会えるかもしれません。未来の可能性は無限です。どんな未来になるのか、自分で予測することなんてできません。そして、自分でいくらでも広げることもできます。

もちろん、そうしていく中で、傷つくこともあるかもしれません。でも、筋肉もわざと無理をして動かすことで発達していきます。

人間も同じです。「若いうちの苦労は金をはらってでもしろ」などということばがありますが、人は苦労をした分だけ強く、やさしくなれるのです。人生でいろいろな経験をした人のほうが、幸福度が高くなるということも研究でしめされています。

また、人間は、相手がだれかによって、性格がコロコロ変わっていきます。親の前、先生の前、好きな友人の前、きらいな友人の前で、それぞれちがう自分があらわれていませんか? 人間の性格は、「自分×○○」のかけ算だと言われます。そのときの相手、状況、感情によって、性格はコロコロ変わっていくのです。

相手にきらわれたくなくて気を使いすぎて、つかれちゃったりすることもあるでしょう。逆に、とくに意識せず、本来の自分らしくいられる相手もいると思います。いろいろな友だちと関わって、いろいろな自分を見つけてみてください。

友だちの多い・少ないより、自分らしくつき合えるか

本を読む小学生

友だちは多いほうがいいのでしょうか? それとも、少ないほうがいいのでしょうか?

一見、「そりゃ多いほうがいいでしょ!」と思ったかもしれませんが、じつはつねに意見が分かれる議論です。この問題は、結局、その人の性格や行動、あるいは生活スタイルによって、どちらがいいかは変わるのです。

友だちの数に関する研究はたくさんあるのですが、社交的な人は友だちが多く、助けも借りやすいので、目標を実現しやすいということがわかっています。

人が、一人でできることには限界があります。しかし、自分ができることを、他人ができることとかけ合わせることによって、無限に広がるのです。その意味では、友だちが多いほうが、いろいろなことを成しとげやすいというのは、まちがいないでしょう。

また、世界大学ランキングで1位になったこともあるイギリスの名門、オックスフォード大学の研究では、こんな面白いものがあります。

友人の数が多い人ほど、空気椅子(ひざを折ったスクワットのまま中腰ですわること)の苦痛にたえられると言うのです。

もちろん、友だちが多いことで苦労することもあります。それぞれの関係についやす時間やエネルギーがふえ、ストレスやプレッシャーを感じたり、絆を深めたりする余裕がへるということが考えられます。

逆に言えば、友だちの数をしぼることで、自分の時間を確保しやすくなるので、好きなことに没頭することができますし、人間関係のストレスにわずらわされたりするリスクがへるということです。数が少ないからこそ、その友だちのことを、より大切にできるというメリットもあるでしょう。

考える小学生

また、近い関係よりも、一定の距離感があるほうが気持ちよく感じるという人もいます。ですから、単純に「友だちは多いほうがいい」とは言い切れないのです。

大人になっても、たまに友だちの数を自慢している人がいますが、数よりも「自分がどう友だちとつき合えているか」という質のほうがよほど大切なのです。

おたがいの秘密を守り、こまったときはささえ合う。おたがいの成功を喜び、失敗したときにははげまし合う……。時には、表面的な話だけではなく、将来の夢や自分の気持ちなど、深い話題についてオープンに話し合えたり、力を合わせて新しいことにチャレンジしたりと、おたがいに成長し合える関係ならば理想的です。

しかし、理想はあくまで理想です。「こうでなければいけない」という理想を追いすぎていると、現実が追いつかないときに、人間の心はとてもこわれやすくなってしまいます。

友だち関係においては「こうでなければいけない」という考えはすてて、自分に合ったスタイル、つき合い方をしていけばいいのです。

 

堀田秀吾

堀田秀吾

言語学博士。言語学、法学、社会心理学、脳科学等の分野から言葉とコミュニケーションをテーマに研究を展開。『人間関係の99%はことばで変わる!』『科学的に元気になる方法集めました』等著書多数。

X:@syugo_h

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