「中学受験で成功した子の親」が貫いた朝型生活 子どものやる気と集中力をどう高めた?

中曽根陽子
2024.08.29 14:02 2024.08.23 11:50

寝ている女の子

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中学受験の成功には親の協力が必須という声もあります。しかし勉強に取り組み、試験に望むのは子ども本人。親が関わる形を間違えると、親子の関係を壊すリスクがあると教育ジャーナリストの中曽根陽子さんは指摘します。

それでは親は何をすべきなのでしょうか?中曽根さんが小児科医の成田奈緒子先生の教えや自身の活動を通して見えてきた「親にできること」について触れた自著の一節をここで紹介します。

※本記事は中曽根陽子著『<中学受験>親子で勝ちとる最高の合格』(青春出版社刊)より一部抜粋・編集したものです

中学受験で子どもを「壊さない」ために

「壊さない」というのは、「子どもの心身を壊さない」ということです。

中学受験で子どもが壊れる。そんなことが実際に起きています。今の中学受験のシステムでは、睡眠を削って勉強することが当たり前のようです。

特に6年生になると、子どもが布団に入る時間が23時をすぎるご家庭も多いのではないでしょうか。それが常識のように語られることに、私はずっと違和感を覚えてきました。

そして、長く発達障害·起立性障害·不安障害などの悩みを抱えたお子さんのケアをしてきた発達脳科学者で小児科医の成田奈緒子先生と出会い、「生活習慣の乱れ、特に子どもの睡眠不足は、脳の正常な発達という面でダメージが大きい。ダメージを受けるとそれが原因で問題行動が出ることもある」と伺い、違和感は確信となりました。

成田先生のところにやってくる患者さんの中にも、中学受験経験者が増えていると聞いています。

親がやるべきこと「朝型の生活リズムをつくる」

食卓の親子

中学受験の塾は、5・6年生になると、終了時間が夜の9時すぎになるところも多いですよね。すぐに帰ったとしても、夕食を食べて、お風呂に入って、そこから宿題に取り掛かったら……なんだかんだ寝るのが深夜になることもあります。

そこまでいかなくても、「学校の宿題もあるし、息抜きの時間も必要なので、つい寝るのが遅くなってしまいます」というご家庭は多いです。感覚が麻痺しちゃうんですよね。私はこれが、中学受験の一番の問題だと思っています。

なぜなら、睡眠時間を削ることが成長期の子どもの脳に与えるダメージは、計り知れないことがわかっているからです。

「でも早く寝ていては、塾の宿題が終わりません」「寝てばかりいて成績が下がったら、子どもの可能性も狭まります」

と考える方もいるかもしれませんが、睡眠をしっかりとったほうが勉強も捗り、成績も伸びるのならどうでしょう。

実際、私の子育て講座に参加された方の中には、朝型に切り替えたら、受験がうまくいったという方が何人もいました。

小学生に必要な睡眠時間とは?

勉強する小学生女子

Mさんもその一人。塾の授業後に自習室に残って勉強してもなかなか成績が上がらず悩んでいましたが、睡眠の大切さを知り、朝型生活に切り替えました。

塾から帰ってきたらできるだけ早く寝て、そのぶん早く起き、朝時間を活用して勉強することにしたのです。その結果、短時間で集中して課題をこなせるようになったといいます。見事、志望校にも合格しました。

なぜ、朝に勉強するほうがいいのでしょうか。

それは、日中に入った情報が夜寝ている間に整理整頓され、朝の脳には新しい情報が入る準備が整っているからです。朝は、勉強や仕事に最も向いている時間帯だといえます。

また朝日を浴びることで、セロトニンという脳内ホルモンが分泌されます。セロトニンは別名「ハッピーホルモン」ともいわれるくらい、情緒の安定につながります。メンタルが安定しているほうが、つらい勉強にも前向きに取り組めるでしょう。

小学生に必要な睡眠時間は、本当は10時間ですが、先述の小児科医・成田先生いわく、9時間でギリギリOKだそうです。親はまず、子どもの睡眠時間を確保してから、その他の予定を立てるようにしましょう。

食事の摂り方を工夫して、朝型生活のリズムをつくる

食事のとり方も、睡眠に影響を与えます。

寝る前にご飯を食べると腸に負担がかかって熟睡できないので、塾に行く前にお菓子ではなくおかず系やおにぎりなどの軽食を食べてから出かけ、帰宅後お腹が空いていたら、消化のよいスープやうどんなど軽めの食事で済ませたほうがいいでしょう。

お風呂も寝る直前に入ると寝つきが悪くなります。いっそのこと朝風呂に変えるのも手です。睡眠の質を上げる工夫は、人によって合うものが違うので、子どもが一番よく眠れる方法を探してみましょう。

受験でよい結果を出すために、ぜひ朝型生活に変えて、毎日を一定のリズムで過ごすように心がけてください。それが、「壊さない」ということです。

最後に、朝型生活を貫いて合格を勝ち取った事例をご紹介します。

【事例】朝型を貫き、女子学院に合格したSさんの戦略

都内に住むSさんは、二人のお子さんの中学受験を経験しています。お兄ちゃんは栄光学園から東大に進学。妹は女子学院に合格しました。

Sさんは、お子さんが小さい頃から、私が主宰しているマザークエストの講座に参加しています。成田先生の脳育ての話を聞いて以来、子どもたちには早寝早起きを徹底させてきたそうです。

兄妹ともに、難関中学を目指すことで有名な希学園に入塾。この塾は、比較的授業時間が長く、授業後も自習室で勉強することを推奨しています。しかし、Sさんの家庭では生活リズムを保つことを最優先にして自習室は利用せず、授業が終わったら即帰宅。家に帰ったら勉強はせず、できるだけ早く寝て朝に勉強するというパターンを徹底しました。

お話を聞く限り、兄妹ともに、最初から全力で突っ走ったというより、ガチ受験のサイクルの中でも、受験軸をブラさず、コツコツ積み上げた結果、着実に力を伸ばしていったという印象です。

子どものやる気が出ないときには、そのことを責めるのではなく、「受験が終わったときにどんな気持ちでいたいか」「そのために今何をするか」ということを質問し、話し合ったというエピソードも印象的でした。

兄妹二人ともかなりの勉強量をこなしたはずですが、最後までやり切ることができたのは、やり続ける力と集中力があったから。そのベースにあったのが、安定した生活リズムだと思います。

中曽根陽子

教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを活かした登録スタッフ制の企画編集会社を立ち上げ、「お母さんと子ども達の笑顔のために」をコンセプトに、多くの書籍をプロデュース。
その後、子どもの中学受験をきっかけに教育分野にシフトし、教育ジャーナリストとして紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆。20年近く中学受験をはじめとした教育の現場を取材し、多くの教員・塾講師とのつながりを持つ。海外の教育視察も行い、偏差値至上主義の教育から探究的な学びへのシフトを提唱。

X:@y_nakasone

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中学受験取材歴20年の著者が子どもの中学受験を最高の経験にし、合格も勝ちとる「受験軸必勝法」をお伝えします。もちろん、最新の塾選び・学校選び情報も網羅。受験軸可視化シート、塾分析マトリクス、学校分析マトリクス、学校検討チェックシートなど、すぐに使えるツールも多数掲載!