子どもの食べない、寝ない、便秘、登園しぶりの原因は? 小児科医が疑う「睡眠不足」

成田奈緒子
2024.03.08 10:58 2024.04.05 11:50

ごはんを食べる女の子

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食べない、キレやすい、ボーッとしているなど、子どもの”困った”は、睡眠や食生活の乱れが原因かもしれません。子どもの健やかな成長のために、今、親がすべきこととは何でしょう?  医師の成田奈緒子さんに教えていただきました。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年6月号から一部抜粋・編集したものです。

睡眠を整えれば、おいしく楽しく食べられ健全に育つ

寝ている女の子

子どもが心身ともに健康に成長していくためには、十分な睡眠をとり、3食しっかり食べることが大切です。その軸となるのが睡眠です。

夜ぐっすり眠れば、寝ている間に食べたものが消化され、朝からおなかがすいて、朝ごはんをおいしく食べられます。朝食を食べると腸が動くので、うんちがストンと出て気持ちよく登園できます。

園では午前中から元気に活動できるので、昼ごはんもしっかり食べられるでしょう。午後も元気に遊び、おなかがすいたところで夕ごはんになります。たくさん遊んで体は疲れているので、夜はぐっすり眠って朝を迎えるという、いいサイクルができるのです。

睡眠が整えば、必然的に食事のリズムも整い、必要な栄養が摂れるのはもちろん、家族で食事を楽しむ余裕ができて、子どもの脳や心の成長にいい影響をもたらします。

幼児期は、朝7時には起こし、夜は遅くとも9時に寝かせるリズムを整えましょう。1週間ほど続ければ、いいサイクルができるはず。お母さんは大変かもしれませんが、小学校生活にスムーズに入るためにも、今が頑張りどきです。

食事が子どもの心をつくる!?

朝食を食べる親子

食べものの味やにおい、色や形、舌触り、鍋がグツグツいう音、家族の会話……。私たちは、五感をフルに使って食事をしています。幼児期は、脳をバランスよく健やかに育てたい時期ですから、食事は絶好の機会なのです。さらに、食事中のエピソードは、子どもの心を豊かにします。

たとえば「から揚げは10個だから、1人3個ずつだね」と、分け合う楽しさを知り、「パパはから揚げが好きだから、4個食べていいよ」など、思いやりの気持ちが育つ機会にもなります。「グリンピースは嫌いだけれど、ママが一生懸命作ったから、少しだけ食べてみようかな」なんて、自分の気持ちと折り合いをつけることを学んだりもできます。

子どもの脳や心が育つのは”楽しい食事”です。まずはテレビを消してください。そして、なるべく家族そろって食卓を囲み、楽しくおしゃべりしながら食べましょう。

睡眠を変えれば「子どもの困った」がなくなった

本を読む女の子

ネルソンの小児科学によると、各年齢で必要とされる睡眠時間は、3歳は10時間45分+昼寝1時間15分、4歳は11時間30分、5歳は11時間となっています。

5歳を例にあげれば、必要な睡眠時間を確保するためには、夜は7時に寝て、朝は6時に起こすリズムになります。

ただ現実問題として、夜7時に寝かせるのは難しいでしょうから、8〜9時に寝て、朝6〜7時に起きる10時間睡眠を目指しましょう。

子どもが朝グズる、食欲がない、便秘がひどい、登園を渋る、キレやすいなどの原因は、睡眠不足だとも言われています。早寝早起きをして必要な睡眠がとれていれば、朝、スッキリ起きてしっかり朝ごはんを食べることから1日がスタートできます。

日中を元気に活動すれば、体も心も満足して落ち着くので、このような”困った”は少なくなるのです。

子どもの心と体にいい生活Q&A

おやつを食べる子ども

食べない、寝ない、起きない……。子どもの食事と睡眠に関する、ありがちな「困った!」に、お答えします。

Q.好き嫌いが多くて困っています。
A.楽しい雰囲気のときにトライしてみましょう。
「食事は楽しく」が大前提なので、叱ったり強制したりするのはNGです。そこは大人の知恵で、苦手な食材を小さく刻む、すり下ろすなどの工夫をしましょう。

ピクニックやホットプレートパーティーなど、楽しい雰囲気のときに出してみると案外食べることもあります。そこで「すごいね!食べられたね~」とほめてのせるのも手です。

Q.少食で、ごはんをあまり食べないので心配です。
A.おなかがすいたタイミングであげてみて。
少食なのは、おなかがすいていないからです。お母さんが食べさせたい時間と子どもの食欲にズレがあるのかもしれません。食事時間を決めてしまうのではなく、子どもの様子をよく観察して、おなかがすいてきたタイミングであげましょう。

おやつの時間や量も、夕食を食べる様子を見て調節していくと、夕食もしっかり食べられるようになります。

Q.遊び食べをするので食べ終わりません。
A.食事以外の時間で好奇心を満足させて。
食べるよりも遊びたい時間ではありませんか? もし、遊び出したり、立ち歩きを始めたら、いったん片付けて、おなかがすくまで待ちましょう。

また、遊び食べは子どもの発達を確認する機会でもあります。たとえば食べ物をコネコネしたがるなら、粘土遊びを十分させるのも方法。遊びで満足していれば、食事中にはやらなくなるでしょう。

ご飯を前に表情を歪める子

Q.昼寝をすると、夜、寝なくなるのですが。
A.4歳になったら昼寝は不要になります。
早寝早起きができると、昼寝は自然と減っていきます。夜の睡眠に影響するなら、昼寝は16時までにすませ、時間を短くするなどの工夫をしましょう。

4歳になれば昼寝が不要になります。昼寝の時間に遊びに誘ったり、夕食の買い物に連れ出すなどして昼寝をさせないようにしましょう。1週間くらいでリズムができてくるはずです。

Q.朝、なかなか起きてくれません!
A.朝、起きたときに、何か楽しいことをしましょう。
朝、目を覚ましたときには、グズグズさせずにきちんと起こしましょう。抱っこしてベランダに出て「気持ちいいね~」と声をかけたり、朝日を浴びさせたり、大好きな歌を歌ってあげたり、子どもにとって「起きて楽しい」をつくるのがコツです。

最初はグズるかもしれませんが、1週間ほど繰り返していれば、スッキリと起きられるようになるでしょう。

子どもが幸せになる正しい生活習慣3カ条

寝かしつけをするパパ

1. 楽しい雰囲気づくりをする
子どもは楽しいと感じたときに成長します。お母さんは、それぞれの生活シーンで、子どもが喜んで取り組めるような楽しいアイデアを用意しておくといいでしょう。子どもが思い通りに行動しないときも叱らずに、楽しくできる方法を考えましょう。

2. ブレない生活習慣づくりをする
決まった時間に寝起きしたり、おなかがすいたときに食事ができるようにしたりするには、大人がそれに合わせた生活の段取りをする必要があります。5歳までは、休日であっても大人の都合を優先せずに、子どものリズムに合わせるようにしましょう。

3. 子どもの様子を観察して、対策を立てる
早寝早起きができない、日中機嫌が悪い、食欲がないなど、気になる行動には必ず原因があるはずです。子どもの様子をよく観察して原因を探り、対策を立てましょう。それでもうまくいかないというときは、小児科に相談してみましょう。

成田奈緒子

成田奈緒子

小児科医・医学博士・公認心理師。子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表。文教大学教育学部教授。1987年に神戸大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春新書インテリジェンス)、『高学歴親という病』(講談社+α新書)などがある。