育児のイライラから自分を解放する「マインドフルネスな子育て」実践法

島村華子

マインドフルネスとは、「今この時」に意識を向けて、心を穏やかに保つ方法のこと。もともとは仏教が起源ですが、臨床心理学の世界でも注目されています。
このマインドフルネスを子育てに取り入れ、イライラを手放すためのポイントとは?

モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者の島村華子先生による「マインドフルネスな子育て」の解説を、著書『親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス 』より抜粋してご紹介します。

※本稿は島村華子著『親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス 』(創元社)より一部抜粋・編集したものです。

※本記事の参考文献については、抜粋元の書籍に記載しています。

マインドフルネスな子育て

マインドフルネスを育児に取り入れることで、親子のストレス軽減やポジティブな子育てにつながると注目を集めています。このマインドフルな子育てとは、怒りやフラストレーションに任せて子どもの言動に単に反応するのではなく、今目の前にいる子どもとその瞬間を大切にしながら思いやりを持って対応するということです。

例えば、マインドフルネスを意識することによって、子どもの癇癪に対して自動的に怒りで応戦するというパターンを断ち切るのに役立つかもしれません。

マインドフルな子育てには、5つのポイントがあります 。

1.子どもの話に耳を傾ける

これは、子どもの気持ちや経験に全身全霊で耳を傾けるアクティブリスニング(傾聴)を意味します。

仕事や家事でやることも多く、忙しい日々を送る中、アクティブリスニングは簡単にできるものではありません。しかし、大人からしたら「何でもない」話であっても、子どもにとっては一大事なのです。

話を一生懸命に聴いてもらった経験は、子どもにとって自分の声には価値があることを学ぶ大切な土台になります。

2.自分自身の感情を認識する

これは自分の中に湧き出る感情や気持ちの変化を、読み取るということです。

喜び、悲しみ、怒り、イライラなど、この瞬間に自分がどういう気持ちでいるのかを自覚します。そして、そういった自分の感情が、いかに自分の行動や思考と連携しているのかを理解することも大切です。

また、感情の認識は、自分自身の感情を理解することだけでなく、子どもの感情に気づき、子どもの立場から理解しようと努めることも含まれます。

3.子どもと自分自身をありのままに受け入れる

これは、子どもや自分自身の感情を評価したり、決めつけたりせずに、状況に向き合うことを意味します。評価しないということは、自分や子どもに対する非現実的な期待を手放すことでもあり、あるがままを受け入れるということです。

例えば、幼児がクレヨンで壁に落書きをしたとします。最初はすぐにイライラするかもしれませんが、そのイライラしている感情を持った自分を認識して、責めたりしないでください。

そして、なかなか難しいことではありますが、すぐに怒る代わりに、子どもがどうしてそうしたかったのかを理解することに意識を優先させます。ルールをきちんと理解していなかったかもしれませんし、あるいは大きなスペースで思いっきり描きたいものがあったのかもしれません。

また、幼い子どもがいつもルールを理解し、従うことを期待するのも非現実です。間違いは成長の機会だと、大人が自分の許容範囲を広げるチャンスでもあります。

4.自己調整力を育む

マインドフルネスにおける自己調整力とは、一時的な感情に任せて行動する代わりに、一呼吸おいてから行動を選ぶことを意味します。感情や衝動に振り回されるのではなく、それらをまず認識し、ありのままに受け止めた上で、それに基づいてバランスの取れた意図的な選択をするということです。

また、大人も自分の行動や感情をコントロールする練習をする姿を子どもに見せることで、子どもにとっても良いロールモデルとなります。

5.子どもと自分に思いやりの気持ちを向ける

子どもに思いやりの気持ちを向けるとは、たとえ子どもの行動や考えに同意できない場合でも、自分の経験と照らし合わせて共感を持ってその状況に接するように努めるという意味です。

行動を否定したり頭ごなしに怒ったりする前に、その行動に至った子どもの気持ちや理由にできる限りの範囲で想いをめぐらせるということです。大人も同じですが、子どもがその時その時でベストを尽くしていること、大人から見る「悪い行動」は子どもの発達の一部であることを心に留めておくことが大切です。

また、親御さんが自分自身に思いやりの気持ちを向けることも、マインドフルな子育てには欠かせません。子育ては正解のわからない大仕事であり、すべてのことが期待通りになるわけではありません。このままで良いのか、自分の接し方は合っているのか、不安になることも多々あります。

思ったように進まない時に、自責の念ではなくて、頑張っている自分を抱きしめるように優しさを持って自分自身と接することが必要なのです。

親子でできる モンテッソーリ教育とマインドフルネス

親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス(島村華子著/創元社)

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