「マイコプラズマ肺炎」と「マイコプラズマ感染症」は別物? 症状と予防策は? 小児科医の見解
マイコプラズマ感染症が急拡大し、子どもへの感染も広がっていると報じられています。小児科・内科医であり、竹内内科小児科医院の院長でもある五藤良将先生に、親が知っておくべきマイコプラズマ感染症とその対策について詳しくお話を伺いました。(取材・文/吉澤恵理)
マイコプラズマ感染症とは?
――五藤先生、まずはマイコプラズマ感染症について教えてください。子どもにとって怖い病気なのでしょうか?
マイコプラズマ感染症は、呼吸器に影響を与える細菌「マイコプラズマ」によって引き起こされる感染症です。過度に恐れる必要はありませんが、注意が必要な場合もあります。マイコプラズマ感染症は一般的に軽度の上気道感染症(風邪のような症状)として現れますが、まれに肺炎に進行することがあります。この肺炎が「マイコプラズマ肺炎」です。
――マイコプラズマ感染症とマイコプラズマ肺炎の違いについて教えてください。
マイコプラズマ感染症は、軽い咳や喉の痛み、発熱など、風邪に似た症状を引き起こします。多くの場合、これらの症状は自然に改善し、特別な治療を必要としないことが一般的です。
一方で、マイコプラズマ肺炎は、感染が肺にまで広がり、咳や高熱、呼吸困難などのより重い症状を引き起こす病態です。肺炎へと進行した場合、抗生物質による治療が必要となることがあります。
夜や朝に咳がひどい…マイコプラズマ感染症を疑うべき症状とは?
――では、どんな症状が出たらマイコプラズマ肺炎を疑うべきでしょうか?
主な症状は発熱と乾いた咳です。特に夜や朝方に咳がひどくなる傾向があります。マイコプラズマ肺炎に進行した場合、次のような重い症状が現れることがあります。
・持続的な高熱(39℃以上)
・呼吸困難や胸痛
・痰に血が混じることがある
・体全体がだるく、倦怠感が強くなる
これらの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが必要です。
マイコプラズマに感染したらどう対処するべき?
――感染してしまったら、どうケアすればいいでしょうか?
マイコプラズマ感染症自体は多くの場合自然に治りますが、肺炎に進行した場合には抗生剤による治療が必要です。特に咳が2〜3日以上続く場合や、熱が1週間以上引かない場合は、病院で診察を受けることをお勧めします。近年は耐性菌の問題もあり、抗生剤の使用は慎重に行われています。
――感染を予防するためには、どうすればいいですか?
基本的な予防策が大切です。飛沫感染による広がりを防ぐために、マスクの着用、こまめな手洗い・うがい、換気が効果的です。また、十分な睡眠と栄養で免疫力を高めることも予防の鍵です。
――大人が感染した場合の症状や注意点を教えてください?
大人もマイコプラズマに感染することがありますが、特に高齢者や免疫が低下している場合には、子どもよりも重症化しやすいです。高熱が続き、夜間に咳がひどくなることが多いです。無理をせず、十分な休養を取ることが重要です。
登園や登校はどう判断?
――学校への出席はどうすればいいでしょうか?
マイコプラズマ肺炎は学校保健安全法で第三種の感染症に分類されています。明確な出席停止期間は定められていませんが、症状が改善し、主治医や学校医が「感染の恐れがない」と判断すれば登校可能です。ただし、咳が長引いている場合には、感染リスクを考慮して無理な登校は避けるべきです。
――咳が残っている場合の対応は?
咳が長引くことが多いですが、必ずしも感染力が残っているわけではありません。登校前に学校と連絡を取り、登校のタイミングや注意点を確認しましょう。登校後も、しばらくはマスクを着用し、咳エチケットを徹底することが推奨されます。体育や部活動などの激しい運動は、完全に回復するまで控えることが望ましいです。
お子さんの体調をよく観察し、医師に相談しながら、徐々に学校生活に戻ることが理想的です。