漢字「本音」を読める小学1年は語彙力が高い? 小学校入学前の子に言葉を教えるコツ

和田秀樹

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「5歳までの語彙力」をどれだけ磨くかで将来が変わる、と話すのは受験のプロで幼児教育に携わる和田秀樹さん。言葉を理解し、自分でも適切な言葉を紡ぐために、「読む・書く・話す力」は欠かせません。この記事では、語彙力の重要性とその育て方、日常生活の中で言葉を学ぶための具体的なアプローチを紹介します。

※本稿は、和田秀樹・著『5歳の壁 語彙力で手に入れる一生ものの思考力』(小学館)から一部抜粋・編集したものです。

語彙力を伸ばすために、幼児期に親が意識すること

就学前の子どもにとって、まずは語彙力を身につけることが大切です。語彙力とは、多くの言葉の意味を理解し、「読む・書く・話す」いずれでも、それを適切に使いこなす力のことです。

特に幼児期の子どもには、言葉をたくさん教えてあげることが必要です。言葉を知らなければ文章を読み取ることができませんから、最初に言葉の意味や読み方、使い方を理解させることが重要なのです。

たとえば、中高生以降の語学学習でも英単語はいちいち覚える必要がないという人がいますが、英単語をよく知らなければ、英語の長文を読む際に長い時間がかかります。英単語をたくさん知っている人は類推して読めるので、短時間でざっと読み通して、素早く概要を理解することができます。

それと同じで、小さな子どもも言葉をよく知っているほうが文章に親しみやすく、その後の理解もずっと早くなります。

「語彙力がある」は具体的にはどういうレベル?

そもそも語彙力が低いまま小学校に上がると、教科書に書かれていることや、先生の説明している内容が理解できないことがあります。

家でゆっくり話してくれる親とは違い、集団での学習では、言葉の意味を理解できない子や言葉で伝えるのが苦手な子は取り残されることがあります。意味のわからない言葉を聞き流したり、誤解して解釈したり、自分の考えをうまく伝えることができなかったりして困ってしまうこともあります。

そのため、日本語の力を高める上でまず必要になるのが、語彙力なのです。

たとえば小学校1年生で習う「本音」という熟語であれば、「ほんね」と読めるだけでなく、その意味や使い方を理解して初めて語彙力があると言えます。ですから子どもが語彙力を増やしていくためには、実際の会話を通してどんなシチュエーションで使われる言葉なのかを教えてあげることが大切です。

「子どもにはまだ難しい」と決めつけないことが大切

たとえば、家庭でニュース番組を見ていて政治家の裏金問題が出てきた時、子どもに「うらがねってなに?」と聞かれたとします。

幼児や学年の低い子どもに教えるには難しい言葉です。

ただこの時に、「裏金っていうのは、表には出せない、内緒でやりとりしてしまったずるいお金のことだよ」という話をして、大まかに国民の義務として税金というものがあることを教えてあげるのも一つの方法です。

ポイントは、こんな話は子どもにはわかりっこないと決めつけないことです。「難しいから、あなたはまだわからなくていい」と答えを濁すのではなく、できるだけ丁寧に説明してあげてください。

そうすると、周りの人たちに堂々と説明できるお金を「表金」と言い、ずるいことをして周りには説明できないお金を「裏金」と言う、といった説明を通して、幼児期の子どもでも、「大人たちがみんな税金を納めているから、そのお金で学校や病院や道路ができる」という社会の成り立ちや、「脱税といって、自分だけお金を隠してきちんと納めない人がいる」という事実や、「物事には表と裏がある」というニュアンスを学ぶかもしれません。

もちろん、それぞれの発達や理解度によって「わからない」と言う子どももいるはずですが、幼児期の子どもの脳は、親が考えるよりずっと発達が進んでいます。侮ってはいけません。

ですから、単なる言葉の表面的な意味を伝えるだけではなく、その言葉から世の中のさまざまな事象への理解につなげていくことが大事です。

そして今はまだきちんと理解できなくても、その先には複雑な世界が広がっているということ、それを大人が自分に教えようとしていることがわかれば、子どもの知的好奇心も刺激されるはずです。

5歳の壁: 語彙力で手に入れる、一生ものの思考力(和田秀樹)

5歳の壁: 語彙力で手に入れる、一生ものの思考力(和田秀樹、小学館刊)

子どもの人生を左右する「壁」は5歳にあり。壁突破のキーワードは「語彙力」。
「やばい」「すごい」で済ませる会話が普及し、言葉が不要な環境に子どもたちは慣れています。しかし、考える力を身につけるためには語彙力は不可欠です。就学前までに、大人が子どもとしっかり向き合い、絵本を読んだり、読み書きを教えたり、知性あふれる会話をしたりすることで、子どもの語彙力は飛躍的に伸びます。語彙が増えれば、見える世界の解像度が上がります。
本書では、受験学習法・幼児教育のプロである和田秀樹先生が、5歳までに語彙力を飛躍的に伸ばす具体的なおうちレッスンを紹介します。