「最終目標は自立」子育てラジオの人気MCが挑む、卒業前提のオンラインフリースクール
元小学校教員の福田遼さんと、音声プロデューサーの秋山仁志さん。友人同士で始めた「子育てのラジオ『Teacher Teacher』」は、ポッドキャストで大きな人気を集めています。
また、お二人の活動はラジオのMCにとどまらず、オンラインフリースクールの運営にも及んでいます。
子どもに寄り添う教育を真剣に追求するお二人に、ラジオ制作の裏側と、フリースクール「コンコン」運営への想いを聞きました。
人気のラジオ番組 制作の裏話は?
──はるかさんが小学校教員時代に作っていた学級通信に、ひとしさんが着目したことがきっかけで、ポッドキャストのラジオ番組が誕生したと聞きました。
ひとし:学級通信へのリアクションがとてもいいと聞いて声をかけました。
はるか:学級通信には、ふだんの子どもたちの様子の他に、家庭で参考になる子育ての知識なども書いていました。内容は、例えば「やる気スイッチの押し方」など、ポッドキャストでも話しているような内容です。学級通信をファイリングして、ずっと保管してくださっている親御さんもいるみたいです。
──ラジオでは、はるか先生の専門知識はもちろん、ひとしさんの穏やかな傾聴もすばらしいなと感じます。ラジオは、ある程度台本などを用意して収録しているんでしょうか?
はるか:番組の大枠や構成をひとしが考えて、子育てのお悩み相談の台本は僕が担当しています。
ひとし:毎回、はるかはそのままプレゼンで発表できるレベルの資料を準備してくるんです。ぼくはあえて事前に読まずに、その場で疑問に思ったことを聞くこともありますし、気合を入れたい時は、事前に資料を読み込んで、どこでどんなツッコミをするか書き込むこともあります。だいたい半々くらいですね。
はるか:最近は、ひとしは最初からまったく原稿を知らない方がいいのかも、とも思っています。事前に知っている状態だと、漫才のようになってしまうので。
ただ、僕は時々熱くなりすぎて、何について話していたか見失うことがあるんです。そんな時は、ひとしが質問で軌道修正してくれたり、着地点を作ってくれるんですよね。僕が船をこいで、ひとしが帆をコントロールしているようなイメージです。なので、情報量が多い時は、事前に資料を読んでおいてもらった方が良いのかもしれません。むずかしいですね。
ひとし:たしかに、僕がただ講義を聞いているだけになってしまうと、リスナーさんは聞きづらいと思うので、ある程度僕が流れをコントロールする方がいいのかもしれないです。 でも、事前に内容を知りすぎてしまうと、会話にライブ感がなくなってしまうんですよね。
はるか:ひとしは演技が嫌いで、苦手なんです。(笑) でも、心から感心しているときは、とてもいいリアクションをくれる。そうするとこちらも嬉しくなるんですよ。
ひとし:いい塩梅はまだ見つかっていませんが、今後も配信しながら探っていきたいです。
オンラインフリースクール「コンコン」での取り組み
──Teacher Teacherさんが運営されているフリースクール、「コンコン」の取り組みについて、詳しく教えていただきたいです。
オンラインフリースクールとのことですが、具体的にはどのような感じなのでしょうか。
はるか:メタバースの教室で行っていて、基本は教員が複数の子どもたちとコミュニケーションをとるスタイルです。複数人でのかかわりが難しい子には自習室を用意しているので、1人で黙々と勉強をすることもできます。声掛けOKの自習室もあり、そこでは先生が子どもに声をかけたりすることもあります。
どのように学ぶかは、子どもたちが自分で決められるような仕組みにしています。「自己決定したことを達成する」という過程を最も大切にしているので、授業の中で学ぶ内容も、基本的には子どもが決めるんです。
──子ども一人ひとりの選択に応えていくには、かなりの人手が必要なように感じます。今は何人で運営されているんですか?
はるか:僕と教員、カウンセラー、スクールソーシャルワーカーの4人の主要スタッフに加え、ボランティアの方にも参加していただいています。そのため、スタッフの数は多いときで7〜8人になります。
生徒は全体で12名ほどですが、学校に通う子もいるため、実際にフリースクールに来る子どもは5〜6人程度です。少人数制なので、とても丁寧な支援が可能です。
現在は、多くの方に入学を待っていただいていている状態なのですが、子どもたちが自ら学ぶ仕組みができてきましたし、信頼できるボランティアも増えてきたので、今後は少しずつ受け入れ人数を増やせると考えています。
──オンラインだと通学の負担がないので、参加のハードルが下がりそうですね。
はるか:オンラインのフリースクールは近年増えていて、自治体で実施しているところもあります。ただ、「コンコン」はオンラインで完結させるのではなく、最終的に子どもたちが卒業することを目指しています。
そのため、将来のキャリア形成を自分たちで考える時間を設けています。目標にむけて何をすべきかのスモールステップを設計し、卒業後は学校に行くのか、学校が難しいならフリースクールに行くのか、子どもたちが決められるようにしています。あくまでもリアルな場で学ぶことを大切にしているため、生徒の入れ替わりも比較的多いです。
──学費が0円ということにも驚きました。どのように運営しているのでしょうか。
ひとし:もともとは、個人や法人のスポンサーによる資金で運営する予定でした。
しかし、子ども一人ひとりへの手厚いサポートや、親御さんへのカウンセリングなどにより、受け入れ可能な人数に限界が生じ、入学を待つ親子が増え続けていました。
そこで現在は、月額で支援してくれる方々による「村」と呼ばれるコミュニティと、20人以上の待機中の親子が、座談会などで互いに相談し合える関係づくりに力を入れています。
先生だけでなく、コミュニティ全体で子どもたちを支援していきたいと考えています。
「村」では勉強会を実施し、知識や支援例をシェアして子どもたちへの寄り添い方を学んでいます。今後は30人ほどの子どもたちを無料で受け入れ、その上で安定した運営ができたらと思っています。
はるか:リアルなフリースクールは、スタッフの数がものすごく多いんです。個別に支援が必要な子もいるので、1人1人に対応するには膨大な人件費がかかるのですが、それをこの助け合いで成立させられれば素晴らしいと思っています。
とりあえず、不登校で困ったときは、「村」に来てもらうだけでもだいぶ違うと思いますよ!
ひとし:ひとし:自分から「たすけて」と声を出せると助けてくれる人はたくさんいるので、声を出しやすいコミュニティにしていけると嬉しいです。
また、現在は小学校3校と連携し、福岡の東区に「コンコン」のリアルな拠点を作ろうと考えています。オンラインにとどまらず、学校に行けない子どもたちの支援の場を作っていきたいです。
(取材・文/nobico編集部)
『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(福田遼,秋山仁志/PHP研究所)
「第5回 JAPAN PODCAST AWARDS」大賞・教養部門最優秀賞、2冠!
大人気ポッドキャスト「子育てのラジオ『Teacher Teacher』」、初の書籍化!
子どもにガミガミ怒ってばっかりの自分に、ドンヨリ。 うちの子の将来、このままでだいじょうぶかな、と不安になる……。そんなモヤモヤとした気持ちを抱えるすべての親御さんに届けたいーー。
元小学校教師のはるか氏と、友人でラジオ番組プロデューサーのひとし氏の二人が、子育てに悩める親御さんの気持ちに寄り添い、「明日やってみよう」と思える、22の「神回答」をお届けします。