愛ゆえに言ってしまう禁句 不登校の子をさらに追い詰める親の言葉
子育てのラジオ「Teacher Teacher」のMCで、フリースクール「コンコン」の代表でもある福田遼さんが、お子さんの不登校に悩む親御さんにまず伝えたいこととは?
不登校の原因や子どもとの関り方について、詳しくお話しをうかがいました。
学校に行けなくても、自立ができればOK?
──現在、不登校の子どもの数が過去最大の34万人と言われていますが、その原因はどこにあるのでしょうか。
はるか:一言で言うなら、社会の変化だと思います。スマートフォンの普及やコロナ禍により、社会の仕組みは大きく変わりました。また、教育機会確保法という法律によって、「学校に通うこと」よりも「学ぶ機会を保障すること」が重視されるようになっていますし、フリースクールの数も増えています。そういったさまざまな要因が現状に繋がっているように思います。
デジタル技術を活用し、多様な学び方や選択肢が広がっている一方で、学校は従来の方法論から大きく変わることが難しいんですよね。学校が変わったというよりは、社会が急速に変化してる中でのギャップを感じやすくなってるように思います。
これまでの「学校に行き、いい大学に進学すれば良い」という価値観が揺らぎ、学校に行く意味自体が問われるようになってきているとも感じます。
スマートフォンの普及により、情報へのアクセスが容易になり、学校に行かなくても学べる環境が整ってきたことも、不登校増加の背景にあると思います。学校に対して「最高に楽しい」というモチベーションも生まれにくくなっています。
こういう複雑な状況を、家族だけで解決するのは本当に難しいと感じています。
──最終的に自立ができれば、必ずしも学校へ行く必要はないのでは、という考え方もあるように思います。
はるか:自立するためには、学ぶ力や生活習慣を身につけることが大切ですが、これを家庭だけで担うのは本当に難しいんです。
例えば、生活習慣一つをとっても、学校と同じような生活リズムを保つのは簡単ではありません。生活習慣が乱れると、将来的にひきこもりになるリスクも否定できません。
このような課題に対しては、家庭だけでなく、支援団体や行政のサポートが重要だと考えています。多くの人は、パソコンやインターネットさえあれば、「学校に行かなくても勉強できる」と思いがちですが、実際は細やかな寄り添いと支援が必要なんです。
単にツールがあるだけでなく、きめ細かな伴走支援が、子どもの自立には欠かせないポイントだと感じています。
不登校の子にしてはいけない声掛け
──お子さんの不登校に悩む親御さんに、まず伝えたいことはありますか?
はるか:親御さんの多くは、子どもの将来のためを思って、「これじゃ自立できない」「苦手なこともできるようにならないと」と「すべき」ことを先に伝えてしまいがちです。お子さんを思う気持ちを考えると、このような言及は自然なことだと思います。しかし、今自信を失っている子どもたちに「すべき」で追い討ちをかけても、なかなかやる気にならないどころか、むしろ子どもは自信を削がれ、無気力になっていきます。
親御さんは愛情たっぷりに、将来お子さんが幸せになるためにと一生懸命向き合ってるんですけど、それが逆に自己効力感を失わせてしまうんですね。
自己効力感は、自己決定、つまり自分で決めたことを達成することで育まれます。 自分のやりたい事、得意な事に沢山チャレンジして達成し、自信をつけていくことで、そこではじめて「苦手なことにも向き合おう」と思えるようになるんです。
また、子どもが自分で何かを「やりたい」と思うためには、まずはストレスの低い状態を目指すのが大切です。
不登校の子たちは、なんらかのきっかけで多くのストレスを抱えて休んでしまうことが多いです。そもそもがストレスを抱えた状態なのに、その上親からネガティブな声かけがあると、何かに挑戦しようという心理状態になれないんです。
あとは、コンプリメント(誉め言葉)を注いであげることも重要です。
コンプリメントは、スクールカウンセラーの森田直樹さんが提唱している、再登校に導く支援法です。
その子のできているところに注目し、さらに、「あなたがいるだけで嬉しい」という言葉をかけることで、子どもは自分の存在そのものを肯定的に感じられるようになります。
このようなアプローチを続けていくと、子どもの中に「頑張ってみよう」という気持ちが自然に芽生えてきます。
──好きなこと=ゲームという子も多いと思うのですが、その場合はある程度制限したほうが良いのでしょうか。
はるか:依存性の高いものには、適切な制限を設けることが大切です。
好きだからといって、無制限にゲームをさせてしまうと、脳内のドーパミンが急激に上がったり下がったりして、やる気が起きなくなったり、生活リズムが乱れたりする可能性があります。
コツは、いきなり劇的な変化を求めないことです。10時間ゲームをしている子に突然2時間に制限するのは現実的ではないので、少しずつ、例えば1時間でも減らせれば成功と考えます。このスモールステップのアプローチが、持続可能な変化につながると思います。
ゲームを制限するというアプローチよりも、ゲーム以外の行動のレパートリーを増やすアプローチであれば、親子での対立も防ぎやすいです。勉強や読書、運動等その子に合った活動を見つけ、それができると良いことが起きるような仕組みを作ることもおすすめです。
「これができたら○ポイントね」と、ごほうび的なものでモチベーションを上げるのもいいと思います。
アドラー心理学ではごほうびによる動機づけには慎重な立場を取りますが、僕は初期段階での動機づけとして、ごほうびはアリだと考えています。
「自分はやれるんだ」という自信や感覚を育むことができれば、最終的にはごほうびに関係なく、自分の力で課題を乗り越える喜びを感じられるようになると思います。
(取材・文/nobico編集部)
『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(福田遼,秋山仁志/PHP研究所)
「第5回 JAPAN PODCAST AWARDS」大賞・教養部門最優秀賞、2冠!
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子どもにガミガミ怒ってばっかりの自分に、ドンヨリ。 うちの子の将来、このままでだいじょうぶかな、と不安になる……。そんなモヤモヤとした気持ちを抱えるすべての親御さんに届けたいーー。
元小学校教師のはるか氏と、友人でラジオ番組プロデューサーのひとし氏の二人が、子育てに悩める親御さんの気持ちに寄り添い、「明日やってみよう」と思える、22の「神回答」をお届けします。