「逃げるのは恥」と感じるのはなぜ? 逃げ下手な日本の子どもに伝えたい真実
辛い状況から逃げたいと思っても、「もうすこし頑張らないと」という意識が働くことはありませんか?アンガーマネジメントの専門家・安藤俊介先生によると、「日本人は逃げることが苦手」なのだそうです。
逃げることは、生きる上で必要な選択肢。その選択を自ら手放さないために親子で知っておきたいことを、安藤先生の著書よりご紹介します。
※本稿は、安藤俊介著『12歳から始めるイライラしない技術 』(秀和システム)から一部抜粋・編集したものです。
「今の環境」がつらい……いつまで続くのか
日本人は、逃げることが苦手です。逃げることをよいことと思わないところがあります。逃げるなんて、投げ出すようで卑怯なこと。苦しいからと逃げていたら、困難に立ち向かえなくなり、人生うまくいかなくなる。逃げるなんてあまえでしかない。そもそも逃げるなんてはずかしい……そう思っている人が多いものです。
あなたがだれかに今がつらい、苦しいと相談をしたら「もう少しその場でがんばってごらん」「その場でできることをさがしてみよう」とアドバイスされ、間違っても「その場からさっさと逃げなさい」とは言われないのではないでしょうか。
もちろん、その場でできることを見つけがんばることも、時には必要です。
つらいところをどうにかぬけ出す方法を見つける努力をすることは、大きな経験になることは間違いありません。
ただ、あなたがどうにも今の環境がつらいのであれば、その場からさっさと逃げましょう。逃げることは、はずかしいことでも、卑怯なことでも、あまえでもありません。逃げることは、あなたが生きるために必要な大事な選択肢の一つです。 動物にとって、逃げることは当たり前の行動です。その場で自分に危険がおよぶようであれば、すぐに逃げます。
逃げる以外の選択肢は、闘うことです。怒りは大切なものを守るためにある感情なのです。動物にとって怒りの役割は、自分の身が危険にさらされたとき、闘うか逃げるかを選択するための命令なのです。
怒りが生まれることで、体を臨戦態勢にします。ネコが毛を逆立てて、相手を威嚇する様子を見たことがあるでしょうか。臨戦態勢とは、まさにあの状態です。
そして、闘って勝てると思えばおそいかかり、闘っても勝てないと思えば、一目散に飛びのいて走り去ります。
人間にも、大切なものを守るために怒りがあり、闘うか逃げるかの選択肢が用意されているのですが、逃げる選択肢を取ることをよいこととは考えていません。
もともと、二つの選択肢があるのに、 一つしか選ばないと決めてしまったら、 生き残る上では不利にしかなりません。
ちなみに、アンガーマネジメントの本場アメリカでアンガーマネジメントを習うとき、最初に教わるのが「RUN!」 です。
RUNは「走る」という意味ですが、 そこから転じて「逃げる」の意味で使われています。
その場にいて問題があるなら、あるいは問題が大きくなるくらいなら「逃げろ!」と習うのです。
「三十六計逃げるに如かず」という中国のことわざがあります。これは形勢が不利になったら、あれこれ考えるよりも逃げてしまったほうがいいという意味です。「逃げるが勝ち」「逃げるは恥だが役に立つ」という言葉もあります。どちらも逃げることの大切さ、時と場合によっては逃げることが得策だと説明しています。
ちなみに「逃げるは恥だが役に立つ」とは「逃げることははずかしいことだが」という意味ではなく「はずかしい逃げ方をしたとしても」という意味です。逃げることそのものは、はずかしいことではないのです。
あなたには、闘うこと、逃げることの二つの選択肢があります。どちらの選択も大事です。どちらか一つの選択を、捨てるようなことはしないでください。
『12歳から始めるイライラしない技術 』(安藤俊介著/秀和システム)
「ムダに怒らない」「6秒で落ち着ける」「ストレスに強くなる」
ありそうでなかった、小学生が活字で読むアンガーマネジメント入門
本書は難しい漢字や専門用語を極力使わず、ルビを振って小学5年生以上の子どもが1人で読めるようになっています。自分で本を読んで、怒りの感情について解決できる1冊です。