容姿も作品も“不気味で怖い“のに、「雨穴さん」が子どもに人気の理由
YouTuber兼作家として注目を集める仮面の人物、「雨穴さん」をご存じでしょうか?
ホラーや謎解きの要素を盛り込んだ著作は子どもや若者の人気を集め、シリーズの累計発行部数は120万部を超えています。
本が売れないと言われるこの時代に、雨穴さんのホラー作品が子どもたちの心を掴むのはなぜなのでしょうか。
理由を探るべく、2025年1月16日、「外国人特派員協会」で開催された記者会見にお邪魔してきました。
雨穴さんって何者?
チャンネル登録者数170万人を誇る、YouTuberの雨穴さん。
黒ずくめに白い仮面という奇妙なビジュアル、そしてボイスチェンジャーを使った子どものような声で、ミステリーかつホラーな「怖い話」を語る動画で人気です。
2021年には『変な家』(飛鳥新社)を出版し作家としてデビュー。不思議な間取りの家に秘められた謎を描いたこの作品は、2024年には映画化も実現し、大きな注目を集めました。
そんな雨穴さんが最高傑作と語る著作『変な絵』(双葉社)は、2025年1月、日本での文庫化とともに、世界30ヶ国で出版されることが決まっています。
ホラーなのに、なぜ子どもに人気?
雨穴さんの本の特徴としてよく挙げられるのが、とにかく読者層が若い事。
その題材にもかかわらず、小学生の読者も少なくないようです。
ご自身の本が子どもや若者に好まれる3つの理由について、雨穴さんは会見で次のように語りました。
1.読みやすさ
雨穴さんは、複雑なトリックやストーリ―のポイントを説明するために、よく図を使っています。
「テキスト、絵、テキスト、絵…」というように、漫画に近い形式になるため、若い人も読みやすいと感じるようです。
雨穴さんはこれを、「コミック(漫画)風小説」と呼んでいるそう。
日本の若い人たちに、まずは小説を読む楽しさを知ってもらいたいという考えから、あえてこのようなスタイルにしているようです。
2.Youtube
雨穴さんはYoutuberとして、ダンス、ホラー、音楽、長編ミステリなどあらゆるジャンルの動画を投稿しています。
そのため、新刊が出るたび、第一章の内容を動画にして投稿しているそう。
本の面白さを、動画で効果的に伝えています。思わず続きが気になりますね…。
3.「とにかく怖い」ということ
そもそも今日本では、若者の中でホラーがブームなのだそう。
怖いお化けや恐ろしい怪物が登場するような伝統的なホラーではなく「静かで不気味な、不安な気持ちにさせる物語」が子どもや若者に人気だと雨穴さんは語ります。
まさに雨穴さんの作品そのものですね。
作品の「怖さ」に隠された想い
作品の人気について、3つ目の「とにかく怖い」ことが最大の理由かもしれない、と雨穴さんは分析します。
なぜ子どもや若者は怖い話に惹かれるのか、その背景について雨穴さんは次の通り語りました。
「今の世界は日本も含めて悲しいことばかりで大変な時代です。
もしかしたら、若い人たちや子どもたちは、そのような不安な空気を感じ取り、それに対処するために、このような不安な物語に目を向けているのかもしれません。」
「すべての子どもたちが何も心配することなく成長できればいいのですが、私にはそれを実現する力はありません。
だから代わりに、私は良い物語を書いて若い人たちに楽しんでもらいたいです。」
怖さの裏に隠れた、子どもや若者への想いが印象的でした。
しかし、なぜそんなに不気味な見た目?
本と同じくらい注目されていたのが、印象的な雨穴さんの容姿。
黒子をイメージしているという黒ずくめの衣装、そして白い仮面に対し、会見では、多くの質問が寄せられました。
「『13日の金曜日』のジェイソンを連想させ、海外では狙い以上に怖く思われてしまうのでは」という質問に対し、雨穴さんは「確かに海外だけでなく日本から見ても怖い印象だと思います」とコメント。
しかし、「日本では子どもたちがコスプレしたり絵に描いたりしてくれていて、このビジュアルを気に入ってもらえています」とのこと。「第一印象は怖いかもしれませんが、慣れると親しみを持ってもらえるのではないでしょうか…?」と控えめに語りました。
また、自身の見た目について、「作風を考えると、もう少し真面目な恰好をした方がいいのではと考えたこともあります」と本音を明かす場面も。
しかし、出版社から『変な家』の帯に自身の写真を使用してから売り上げが伸びたと聞き、「それなら、このままでもいいのかな」と考えを改めたそうです。
会見の終盤、「そんな見た目なら、もっと面白いキャラクターを演じてもいいのでは」という提案に、「じゃあ、踊ります」と即興のダンスを披露。場を和ませる一幕もありました。
「雨穴さん」の怖いだけじゃない魅力
実は、ほとんどが英語で行われた今回の記者会見。
不気味な仮面の人物として知られる雨穴さんでしたが、一生懸命に英語を話す姿が好感を与えていました。
おっとりとした語り口調で質問に答える様子からは、独特のキャラクターとしての魅力も感じられます。外見も作品も不気味で怖い印象を受けるものの、会見を通して誠実で穏やかな人柄が伝わってきました。
このギャップが、もしかしたら人気の理由の一つなのかもしれません。
『変な絵』は今後、世界30の国と地域で出版される予定です。すでに韓国、タイ、中国、台湾、ベトナムで発売されており、2025年1月には、イギリス、アメリカ、フランス、スペイン、オランダでの発売が決まっているそう。
雨穴さんの紡ぐ物語が、世界の子ども達にどのように受け入れられるのか、これからの広がりに注目したいです。
『変な絵』(雨穴著/双葉社)
シリーズ累計120万部突破のミリオンセラー小説『変な絵』が待望の文庫化!
49ページに及ぶ物語の前日譚『続・変な絵』と『ナゾ解きゲーム』も特別収録!
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