嘘を厳しく取り締まっても正直な子どもに育たない理由
子どもに「正直に育ってほしい」と思う親御さんは多いでしょう。しかし、子どもが悪いことをしたとき厳しく罰することは逆効果かもしれません。
子どもが嘘をついたときには、親はどうすればいいのでしょうか? 『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』よりご紹介します。
※本稿は、フィリッパ・ペリー(著), 高山真由美(訳)『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(日本経済新聞出版)から一部抜粋・編集したものです。
正直な子どもを育てるには? 研究者の実験結果
研究者のヴィクトリア・タルワーは、西アフリカの2つの学校を訪れました。いずれも同じような生徒数でしたが、規律に関する姿勢がまったく違いました。一方は典型的な西欧の学校とほぼ同じで、嘘をついたり、成績が悪かったり、何か悪いことをしたら、次回はどうするべきか教師と話をして、居残りの罰を受けるなどの指導があります。もう一方の学校はもっと過酷で、悪いことをした子どもには体罰が与えられました。
タルワーはこの違いに興味を引かれ、正直な子どもを育てるにはどちらの制度が良いかを確認しようと、子どもたちを相手に、覗き見ゲームの実験をしました。子どもを教室に招き入れ、こう言います。「壁のほうを向いて、ここに座って。あなたのうしろに3つのものがあります。それを使って音を鳴らすので、それぞれ何か当ててください」。3つめのときに、「引っかけ」のためにまったく違う音をたてます。たとえば、本当はラグビーボールなのに、バースデーカードから誕生日の曲を流します。
子どもの答えを聞く前に、タルワーはこう言います。「ちょっと部屋を出なきゃならないんだけど、答えを覗かないでね!」。部屋に戻るとこう言います。「覗いてない?」。子どもはみんな「覗いてない!」と答えます。その後、タルワーが尋ねます。「では、3番めのものはなんでしょう?」。たいていの子どもは「ラグビーボール」と答えます。ほとんどの子どもが覗くのです。
タルワーはこう尋ねます。「どうしてわかったの? 覗いた?」。この時点で、何人の子どもがどれくらい効果的に嘘をつくか、観察できます。そんなに規律の厳しくない学校では、嘘をつく子も、つかない子もいました。割合はほかの国でこのテストをしたときとだいたい同じです。しかし体罰の厳しい学校の子どもはみな信じられないほどの速さで嘘をつき、その嘘には非常に説得力がありました。嘘を厳重に取り締まることによって、厳しいほうの学校は嘘つき養成マシンと化していたのです。
子どもが嘘をついたときには
あなたの子どもが嘘をついたときには――あえて「もしついたら」ではなく「ついたときには」と言います――人が嘘をつく理由を思いだしてください。発達の一段階であること、子どもはあなたの真似をしているのだということ、自分のプライベートな空間を切り開こうとしているのだということ、自分の気持ちを伝えようとしているのだということ、罰、もしくは混乱を避けようとしているのだということ。嘘をつくことが問題になるようなら、罰を与えるよりも、嘘の背後にあるものを突きとめることで問題解決につなげるほうがいいのです。子どもに罰を与えても、嘘がうまくなるだけです。
こうと決めつけたり、罰を与えたりすればするほど、子どもはあなたに心を開かなくなります。あなたを喜ばせたい、あなたに認められたいという気持ちがある一方で、正直さを軽んじ、おそらくは心の健康を犠牲にして、その気持ちを別の形で満たそうとします。厳格すぎる環境では善良で倫理観の高い人間は育ちません。お互いがお互いに報いるような関係を築くこともできません。そうなると、満足のいく、持続する人間関係を築く能力が身につきません。
『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー(著), 高山真由美(訳)/日本経済新聞出版)
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