3歳児が生み出した『スプーンさん』 絵本作家でもある母親に誕生秘話や子育てのポイントを聞いてみた
子どもがおもちゃや人形に接するとき、それらに命が宿っているように振る舞うことありますよね。子ども自身が作り上げる世界はなんともユニークで可愛らしく、そのストーリーを横から眺めるだけでほっこりとした気分に。そんな心和む投稿を発見しました。
寝かしつけされるスプーン
かとーゆーこさんの『スプーンさん』投稿です。「これは3歳児によってお風呂に入れられ、寝かしつけされている実家のプラスチックスプーン」というメッセージと共に紙布団に寝かしつけられているプラスチックスプーンの写真がアップされています。あまりに可愛らしいスプーンの擬人化ポストには16万9000件のいいね(1月31日時点) が集まるなど、別格の反響を巻き起こしています。
『スプーンさん』を生み出した3歳児の母親で、絵本作家やイラストレーターでもある、かとーゆーこさんに、『スプーンさん』誕生秘話やお子さんの物に対する接し方、子育てや絵本作成で心がけていることなど、伺いました。
スプーンさんの誕生秘話は?

――「スプーンさん」誕生秘話やどのくらいの期間大事にしているのかなど、詳細エピソードをお聞かせください。
「実家に帰省中、スプーンさんに出会いました。3歳の娘はもともと色々な物でお世話ごっこするのが好きな子です。おもちゃやぬいぐるみだけでなく、家電や枝豆や紙きれや箸置きなどにご飯を食べさせたり寝かしつけたりしています。
絵本をよく読むので、物や食べ物などにも人格があり、生きていると思っているのだと思います。そんな中、私の実家のキッチンでたまたま見つけたプラスチックスプーンをなぜか気に入って、遊び始めました。
これまでも普通のスプーンやプラスチックスプーンは生活の中で使っていたのに、生き物に見立てたのは今回が初めてでした。おそらく実家にはぬいぐるみや人形がないので、自分で遊ぶ対象を作ったのではと予想しています。
一緒にお風呂も入り、その後、寝かしつけをしていました。お風呂では粉ミルク用のロートを浮き輪がわりにしてスプーンを浮かべたり話しかけていました。帰省先から自宅に戻る際もスプーンさんを連れて帰り、今も子ども部屋にいます。

――他にもお子さんがものを大事にしているエピソードがあれば教えてください
「家具や家電に傷がつくとすぐに絆創膏をはってくれます。そのため気づくと家じゅうが絆創膏だらけになっています。トマトを床に落としてしまった時には、「大丈夫!?」とかけよって、へこみができたのを見つけて絆創膏をはっていました。
散歩中に見つけた葉っぱを持ってそのまま公園へ行き、ブランコにのせたり滑り台から滑らせたり…、鳥の形の箸置きをカゴに入れて、おもちゃの野菜を餌がわりにして育てようともしていました。
掃除機もよく可愛がり、おもちゃのネックレスをかけておしゃれさせたりしています。面白い形にちぎれた紙の切れ端なども宝物だったり、地図だったり、友達だったりするのでなかなか捨てられません。笑」
絵本作家として大切にしていること
――「エルマーの冒険の翻訳者、渡辺茂男さんの言葉で『実在しない生き物が子どもの心に椅子を作り、それらが去った後に実在する大切な人を座らせることができる』これかもなとなった。優しい人になってほしい」という投稿も印象的でした。子育てで心がけていることなどがあれば教えてください
「この言葉は絵本を作る上でもいつも意識している言葉です。私の作品の登場人物もだれかにとっての大切なお友達になってくれたらいいなぁ…と考えています。
子育てでは、娘から見えている世界や娘が大切にしているものを尊重するようにしています。
ぬいぐるみやおもちゃは生きていて、魔法のような不思議な出来事もなんでもありな現実と空想の世界が混ざった中で子どもは生きていると思うので、できるだけ否定せずに一緒に楽しむようにしています。
大人になった時、このスプーンさんにしてあげたように誰かに優しくできる人、優しくされる人に成長してほしいなと思います」
――かとーゆーこさんが絵本を作るにあたって、心がけていることやポイントはありますか?
「子どもの頃、探し絵遊びが大好きだったので、すみずみまで楽しんでもらえるようにお話とは関係ないような細かいところまで描き込むようにしています。
絵本の中にお気に入りの場面をたくさん見つけてもらったり、絵本を通して親子で色々な会話が生まれたら嬉しいです。
また、日常から旅まで、嬉しいことも悲しいことも全てが作品に繋がると思っているので、なるべくお話の種を見つけたらメモをするようにしています。
3歳の娘の今ならではの言葉や可愛い行動も、印象的なものは忘れないように全部メモをしています」
「娘の『スプーンさん』もいつか絵本に登場させたい」という、かとーゆーこさん。ぜひ読んでみたいものです。
【取材協力/写真提供:かとーゆーこさん】
X:@katooyukoo
WEBサイト:https://katoyuko.sakura.ne.jp/
(文・取材:nobico編集部 プケコ)