完璧な子育てを目指さない 「子ども幸福度世界一」のオランダから学ぶ育児法
多くのアメリカ人ママと同じように、日本でも完璧な子育てを追求してプレッシャーを感じている人は多いかもしれません。しかし「子ども幸福度世界一」のオランダでは、「完璧なママ」は求められていないそうです。
子どもを幸せにするオランダメソッドとは? リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)『オランダ人のシンプルですごい子育て』から紹介します。
※本稿は、リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)『オランダ人のシンプルですごい子育て』(日本経済新聞出版)から一部抜粋・編集したものです。
リナの家族とミッシェルの家族
アメリカで求められている完璧ママ
多くのアメリカ人ママと同じように、私の母もマーサー・スチュワート(訳者註:アメリカのライフコーディネーター・クリエーター。「カリスマ主婦」とも呼ばれ、料理、園芸、手芸、インテリアなど生活全般にわたる分野で活動している)風に暗黙の了解の中で完璧な子育てを追求してきた。
母親とは、炊事・洗濯・子ども・夫のために年中奉仕するもので、たいていそれらのことは母親1人でするべきだというものだ。スーパーママには多大な尊厳と誇りが示され、自分自身に気を配ることなく自分の時間を犠牲にすればするほど、より良い母親になれるとされていた。
その考え方がほかのママと自分を比べることにつながり、子どもの活躍や失敗を自分の子育て、あるいはよその家のママの子育ての直接的な効果と見るようになった。
もともとは純粋に子どもにとって良いことをしてあげたいと思っていたはずなのに、それはしだいに「子どもを一番にしたい」という欲望に姿を変えていった。
オランダでは完璧なママなんて求められていない
私は、自分の子どもたちには違う現実を歩んでほしいと思っている。その方法を西ヨーロッパのこの小さな街で見つけたように思う。
オランダでは完璧なママなんて求められていない。
私はよく義理の母のマルシアから、私が何でもやりすぎるところがあるので心配していると忠告を受ける。母はこの本を執筆するにあたり、とても協力的ではあるが、妊娠後期に執筆を始め、今でも赤ちゃんと幼児の世話をしながら執筆をすることには賛成していないようだ。
不規則に長時間働き、誰かに呼ばれれば常に応じるような私や夫の仕事中心のライフスタイルは、母にはストレス過多に映るようだ。
たしかに、私たちの生活スタイルは、終身雇用契約でパートタイムで働くことが受け入れられ、休暇がきちんと確保されているようなオランダモデルからはかけ離れている。母はもう少し私たちがのんびりとするべきだと思っている。「自分の時間をつくることを忘れないでね。きちんと休んで回復する時間も必要よ。自分自身のこともちゃんと考えてね」と母はいつも私たちに助言する。
オランダ人ママは「すべてを持つ」ということの意味を再定義した。彼女たちは子どもとたくさんの時間を持っているし、経済的あるいは社会的プレッシャーなく、自分の仕事に応じて在宅勤務、パートタイム勤務、フルタイム勤務のいずれかを選べるのだ。ここには完璧な母親になるための母親同士の競争というものは見あたらない。
先進国の母親が感じるプレッシャーは、罪悪感からきている
ミッシェルと私は、先進国の母親が感じるプレッシャーは、罪悪感からきていると思っている。私たちの国では、専業主婦とワーキングマザーの両方にプレッシャーがある。専業主婦は自分が働かないことに罪悪感を持ち、主婦の鏡になることで埋め合わせをしようとする。一方でワーキングマザーはいつも子どもと一緒にいられないことに罪悪感を持ち、次の日の子どもの行事のために真夜中にクッキーを焼いたり、仕事場で大変な1日を過ごした後でもハロウィンの衣装を一緒につくったりして埋め合わせしようとするのだ。それはお互いにとってマイナスな話だ。
さらに話を掘り下げてみると、この罪悪感や不安をあおる英語圏の世界では、人の手を借りないで自分でなんとかしようという考え方がある。テキサス大学の調査によると、ヨーロッパ圏内22か国と英語を話す国において、親である人と親でない人の幸せについて比較したとき、研究者は1つのはっきりとした結論に達した。
「親が賃金労働と家族への義務をより上手に結びつけられる社会政策の有無によって、親であることの幸せに対する否定的効果は完全に説明された。より良い家族政策の『パッケージ』を持つ国々では、親である人と親でない人との間で幸せに対する関係性はなかった」
オランダ人ママはアメリカ人ママに比べてプレッシャーが少ない?
「なんとかバランスを見つけ出したように感じるわ。週3日働き、小児保健センターへ行くときは少し遅く出社しても大丈夫なの」と、RTVユトレヒトのテレビ司会者のエヴァ・ブラウワーさんは話をしてくれた。
「月曜日に息子ライクの1歳のお誕生日を祝うのに、夫と私は一緒に託児所へ行って、歌を歌ったり、小さなパーティーハットをかぶったわ。たくさん写真も撮った。その後職場へはいつもよりも遅く出社したけれど、同僚も上司も私が息子との特別な時間を過ごしたかったことを理解してくれて、私の気持ちに共感してくれたわ」
エヴァは私にとってオランダで初めてできた友だちだ。その彼女がランチのために我が家まで来てくれたので、これを機に彼女の知恵を拝借することにした。
「オランダ人のママはアメリカ人のママに比べてずっとプレッシャーが少ないと思う?」
と、私が尋ねると、エヴァは次のように答えた。
「実際のところ、ママになってからの方がキャリアを積んでいくためにもっとやる気が湧いてきたの。家族と過ごす時間がほしいから効率的に働くようになったのよ。パートタイム勤務ができるというのは、プライベートの時間とキャリアのバランスを取るのにすばらしい方法だと思う。パートタイムを選ぶことについてタブーがないというのはすばらしいことよ。
もう1つ助かることは、オランダではとてもオープンで正直にいられることじゃないかしら。もちろんオランダ人の中にも体面を保とうとする人もいるけれど、この国では、子育てをしながらわからなかったり迷ったりしても素直でいられる」
どんな親になるかは他人にとやかく言われることではない
SNSでいつもメッセージのやり取りをしているアメリカの友だちは、完璧な母親になろうとする傾向は今までになく強くなっているという。最初に浮かんだママ友は作家のタラ・ウッドだった。彼女は彼女の言葉でいうところの「ナイスガイ」と結婚し、7人の子どもをもうけ、ジョージア州のオーガスタに住んでいる。タラにストレスについて質問するとこんな答えが返ってきた。
「アメリカ人ママになることにストレスを感じているかと聞かれればイエスよ。どこに住んでいようと、ほとんどのママがいろいろなストレスを抱えていると思うわ。でもアメリカ人ママはかなり負けず嫌いで多くの心の傷を抱えている。そして、おそらくそれが心配と不安と自己不信を増長させていると思うの。15年間ほど子育てをしているけれど、ここ5年間でやっと、母親として自分で考えて自分で決めることを心地良いと感じられるようになったわ。長く時間はかかったけれど、今では私がどんな親になるかということを他人にとやかく言われることではないとはっきりわかるの。私も自分と違う選択やほかの人の子育てスタイルについてあれこれ言わないようにしているわ。だってそれが良い母親になるための唯一の方法だとは思わないから」
『オランダ人のシンプルですごい子育て』(リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)/日本経済新聞出版)
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