女子高生による“生理講座”レポート ナプキンとタンポンの違いを知った男子の意外な感想は?
最近、SNSなどで、男性の「生理に関する知識不足」が話題になることが増えています。異性の体について分からないことが多いのは仕方のないことですが、「出血は自分でコントロールできる」「ナプキンは1日1枚で足りる」といった、女性としては驚くような誤解を見かけることもしばしば。こうした誤解が生まれる背景には、生理について学ぶ機会が少ないことが関係しているかもしれません。
そんな中、品川女子学院のCLAIR.(クレア)の活動に注目が集まっています。
CLAIR.は、「生理のタブー視をなくすことで、性別を超えて理解、尊重し、お互いを支え合える社会」を目指す、品川女子学院の中学1年生から高校2年生までの有志の生徒による団体です。
主に他校を訪問し、生理に関する基礎知識や、生理時の体調の変化、生理用品の使い方などを分かりやすく解説しています。
2025年3月、CLAIR.の活動をもとにした書籍『女子中高生が教える男子にも知ってほしい生理の話』(Gakken)の刊行を記念し、東海大学付属高輪台高等学校・中等部の図書室で講座が開催されました。
その様子をレポートします。(本記事は前編です)
明るい挨拶からスタート
講座は、CLAIR.のメンバーによる自己紹介からスタートしました。
全体の進行を担当するのは、品川女子学院高等部2年のりなさん、おことさん、高等部1年のみはるさん。
「皆さんこんにちは、CLAIR.です!」と元気よく挨拶し、場を和ませます。
受講生は、東海大学付属高輪台高等学校・中等部の保健委員の皆さん。
各グループには他のCLAIR.のメンバーが1人ずつ加わり、一緒に着席しました。
続いて、品川女子学院に関するクイズや、アイスブレイクとして「お互いの学校行事」をテーマにした雑談を実施。
「うちの学校はグランドがなくて…」「あ、うちもです!」と、お互いの学校の共通点を発見する声も聞こえてきました。
緊張がほぐれたところで、いよいよ本題へ入ります。
生理がタブー視されるのはなぜ?
CLAIR.の3人は、まず初めに、生理の歴史についてスライドで解説します。
そもそも生理の話題がタブー視されがちなのには、歴史的な背景があるようです。
平安時代では、血は「不浄なもの」ととらえられており、生理中の女性は隔離されていたとのこと。
スライドには、当時使われていたという月経小屋の写真が映りました。
その後、鎌倉時代には「月帯」と呼ばれる布、室町時代には木綿、明治~大正時代には脱脂綿や月経帯など、女性の生理用品は時代変化を遂げていきます。しかし、現在の生理用ナプキンの前身である「アンネナプキン」が日本に登場したのは、昭和に入ってからだったそうです。
「現代の日本においても、生理=話しづらいものというイメージがある」と、みはるさんが解説します。
公益財団法人インターナショナルジャパンがおこなった「生理について話せる?」というアンケートでは、「話せる」が32%、「話せない」が33%、「恥ずかしい」が35%という結果が出たそうです。これは、27ヶ国中25位で、G7諸国では最低なのだそう。
他にも、生理中の女性の多くが困りごとを抱えていること、生理による機会損失や、経済的な負担があることについても解説していました。
CLAIR.のメンバーは、「男性が知識を得る機会が少ないのは、生理について話しづらい環境が影響している」と考えているようです。
そもそも生理とは?
続いてCLAIR.のメンバーは、「そもそも生理とは何か?」について詳しく説明します。
女性の体は毎月、受精卵を迎える準備として、子宮内膜をふかふかのベッドのように厚くします。その月に受精卵が作られなかった場合、内膜は不要になり、子宮から剥がれ落ちて、体外に排出されます。この過程が「生理(月経)」です。
生理は小学校高学年頃から自然に始まり、50歳前後で終わるまで、毎月1回やってきます。出血は通常3~7日間続き、出血量には個人差がありますが、約20~140ml程度になります。
「コップ半分がだいたい100mlなので、かなり多くの血が出ることがわかると思います」と、具体的な例を挙げるりなさん。1日にナプキンを替える回数は、経血が多い日で4~6回、少ない日で3~4回という人が多いようです。
「生理痛」「PMS」についても解説
また講座では、生理の不調の代表である「生理痛」「PMS」についても解説していました。
「生理痛」は、生理中に子宮が縮んで、下腹部や腰に痛みがでること。
痛みの感じ方には個人差が大きく、「全身を雑巾のように絞られるような感じ」「ワニに体の芯を食いちぎられているよう」と、たとえ方も様々です。
中には痛みが強いあまりで失神してしまう人もいるのだそう。
「PMS」は、生理前に起こる心と身体の不調を指します。
イライラする、気分が落ち込む、倦怠感、眠気など、こちらも症状に個人差があります。
女性にとってはおなじみの症状ですが、男性は「PMS」という言葉自体を知らない方も多いようです。
「私も生理前は、無性にイライラすることがよくあります」と、CLAIR.のおことさんも自身の体験について語ってくれました。
こういった不調を和らげる手段として、CLAIR.のメンバーは市販の鎮痛剤、そして産婦人科で処方されるピルを紹介します。
避妊薬にも使われるピルですが、生理の症状を緩和したり、生理の周期を整えてくれる効果があります。「ピルを使用しているからと言って、性に奔放な女性だと決めつけないようにしましょう」とおことさん。
生理を経験したことがない男子生徒達が、真剣に耳を傾けている様子が伺えました。
実際に生理用品を手に取ってみると・・・
グループワークでは、生理用品の種類や使用方法について、CLAIR.のメンバーが参加者にわかりやすく解説します。
まず初めに、生理用品の代表ともいえるナプキンについて説明が行われました。ナプキンは、下着に直接貼り付けて経血を吸収する生理用品です。さまざまな種類のナプキンを開封しながら、CLAIR.のメンバーがそれぞれの特徴について解説しました。
ナプキンには、昼用・夜用・スポーツ用など、用途に応じたさまざまなタイプがあります。吸水力が優れた化学繊維製のものが主流ですが、肌が敏感な人向けにオーガニックコットン製のものもあるなど、、選択肢が豊富なのも特徴です。CLAIR.のメンバーが2種類のナプキンを手に取り、「この2つの違いは何かわかりますか?」と問いかける場面もありました。
パンツ型ナプキンの紹介では、男子生徒から「サニタリーショーツとの違いは何か?」という質問があり、CLAIR.のメンバーが素材や吸水力の違いについて説明しました。
また、参加者は経血に見立てた赤い水を使い、ナプキンの吸水力を実験。吸収しすぎると表面が湿って重くなることを実感し、男子生徒からは「想像以上にいろいろな不快感がありそう」という感想が聞かれました。
続いて、タンポンについての解説が行われました。タンポンは膣の奥に挿入して使用する生理用品。CLAIR.のメンバーは「痛そうだと思うかもしれませんが、膣の奥にある無感覚ゾーンに正しく装着すれば、違和感なく過ごせます」と説明しました。
ここでも赤い水を使って吸水力を実験。吸水前と後で形状が変化する様子に、参加者からは「おお~」という驚きの声が上がりました。
タンポンの特徴として、ナプキンよりも交換頻度が少なく、プールでも使用可能であることが紹介されました。とあるグループでは、男子生徒から「ナプキンより長時間使えるタンポンを普及させた方が良いのでは」という意見が上がり、CLAIR.のかえでさんが「素晴らしい着眼点ですね!」とコメント。「日本や韓国ではナプキンが主流ですが、実はアメリカやヨーロッパではタンポンが一般的なんです」と説明しました。
しかし、タンポンは衛生面で注意が必要であり、長時間連続しての使用は推奨されていません。細菌感染やトキシックショック症候群(TSS)のリスクを避けるため、一度使った後はナプキンを使用することが推奨されることも解説されました。男子生徒たちからは「へー」と関心の声が。
また、「日本ではなぜナプキンが主流なのか?」という質問もあり、かえでさんは「心持ちの問題かもしれません。自分の体内に入れるものなので抵抗を感じる人もいるでしょうし、挿入時や取り出すときに不快感を覚えることもあります」と解答しました。
講座では、ここ最近で登場した新しい生理用品「シンクロフィット」の紹介もありました。股の間に挟むことで吸水力をUPさせるもので、ナプキンと併用させる製品なのだそう。CLAIR.のメンバーは「私はお風呂上りに使っています」など、実際の使用例を語っていました。
他の生理用品とは違い、水に流すことができるのも大きな特徴です。
最後に、生理用品の適切な捨て方についても触れられ、「だれでもトイレにある小さいゴミ箱の正体がわかった」という声も上がりました。
生理の理解深める機会に
グループワークを終えた後、一人の男子生徒が「自分は生理について理解している方だと思っていたが、まだまだ知らないことも多いと感じた」と話していたのが印象的でした。
これまで生理用品に触れる機会がなかった男子生徒たちにとって、今回のグループワークは、生理について具体的に考え、理解を深める貴重な機会となったようです。
(取材・文:nobico編集部 中野セコリ)
『女子中高生が教える男子にも知ってほしい生理の話』(CLAIR.協力,高橋幸子 監修,くりたゆき 漫画/Gakken)
生理についての講義を男子校や企業で開催し、各メディアで話題の女子中高生のCLAIR.(クレア)。彼女たちは品川女子学院の有志団体で、生理って月に何日なの?血はどれくらい出るの?PMSがつらいときはどうする?などの生理にかんする悩みや疑問について、誰にでもわかりやすく伝える活動をしている。生理についてよく知らない男性にはもちろん、女性どうしだからこそ気づけない個々のちがいについても議題にあげ、その講義は毎回好評を博している。
本書は100名以上の男性、女性にアンケートを実施しながら、おたがいの感じ方や考え方のちがいがわかるように構成されている。
生理について考えたこともなかった中学生男子を主人公としたマンガでストーリーが展開され、男子でも共感しながら読めるのも本書の魅力の一つ。いちばん身近だけどなかなか触れることができない男性と女性のちがいである生理について学び、多様性の理解を推進する本。