長女が葛藤した“お姉ちゃん”の呪縛…生真面目な性格の子に伝えたい「口ぐせ」とは?

馬場啓介
2025.03.25 10:05 2025.03.30 11:50

机に伏せる中学生

「お姉ちゃんでしょ」、「お姉ちゃんだから」と言われ続け、“しっかりしなければいけない”とプレッシャーに…「悪気のない親の口ぐせ」は、受け取る子ども次第で「悪魔のような言葉」になることがあります。

どうしたら「悪気のない親の口ぐせ」を、子どもに「温かな言葉」として伝えられるでしょうか? 馬場啓介著『親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』から紹介します。

※本稿は、馬場啓介著『親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』(あさ出版)から一部抜粋・編集したものです。

「お姉ちゃんでしょ」 

あかり(愛知/弟・妹)
※仮名(出身地/きょうだい)

屋上にいる高校生

三妹弟の長女だった私が、親から言われて嫌だった口ぐせに、

「お姉ちゃんでしょ」

がありました。

弟が生まれて、何かあるたびに「お姉ちゃんでしょ」とか「お姉ちゃんだから」と言われるようになり、妹が生まれてからは、さらに姉としての役割が求められ、子ども心に(好きでお姉ちゃんに生まれたわけじゃない)(弟や妹ばかり親に甘えてずるい)と思っていました。

妹は、何歳になっても末っ子だからという理由で親に甘やかされているように感じ、(私がその年齢だったときには、もう何でも一人でやっていたのに)と不満もありましたが、長女として弟や妹のお手本にならなければいけないというプレッシャーもあり、お姉ちゃんだからしっかりしないといけない、お姉ちゃんだから我慢しないといけない、お姉ちゃんだから甘えてはいけない、と言い聞かせていました。

そして「お姉ちゃんだから」という言葉が、次第に自分を縛る呪文のようになっていきました。

その結果、学生時代は人の面倒を見たり、相談に乗ることは得意でしたが、自分より他人の意見を優先してしまったり、他人の評価を気にしてしまうことが多かったように思います。

大人になってからは、長女として親に頼られることも増え、子ども時代に感じていた葛藤はなくなりましたが、二児(姉妹)の母となった今、長女に対して「お姉ちゃんでしょ」「お姉ちゃんだから」とは決して言わないと心に決め、いつも名前で呼ぶようにしています。

お姉ちゃんには、陰でたくさんご褒美をあげる
──馬場先生のコメント

母と娘

これは、お姉ちゃんあるあるだ。

長女、長男ほど“しっかりしなければいけない”という思い込みが強くなり、周りの目を気にしすぎたり、相談が苦手になったりする。自分が楽しむことより、周りを楽しませることばかり意識してしまい、甘えるのが下手でストレスを溜めやすい。そして何より、適当にやるのが苦手にもなる。

現代社会では、実は「適当さ」はとても重要だ。「適当」と「雑」は違う。適当とは、無理をしないことであり、“よい心の状態を維持できる程度”だと思ってほしい。何事もしっかり完璧にやろうとすると、必ず適当を超えてしまう。近年は心の病気も増え、5人にひとりが患うと言われている。その最大の原因も「適当」がわからなくなるからだろう。

お姉ちゃんは立場的に損に思うことがあったり、寂しさを感じやすいかもしれない。だからお姉ちゃんには、陰でたくさんご褒美をあげるのがいい。今の時代、長男長女のみならず、生真面目な性格の子どもには、「なんとかなるさ」「これでいいのだ」「ほどほどにね」を口ぐせにして伝えてあげてもいいかもね。

馬場啓介

マザーズコーチングスクール代表/トラストコーチングスクール代表
1980年、鹿児島生まれ。法政大学法学部卒。米国留学後、外資系人材サービス会社を経て株式会社コーチ・エィ入社。トップトレーナーとして国際コーチング連盟の試験官も務める。2009年、トラストコーチングを設立。経済産業省や大手企業の人材育成担当を務める傍ら、「誰もがコミュニケーションを学ぶ文化を創る」をミッションに、国内外に累計約5000名の認定コーチを育成している。また、コーチングを取り入れたコミュニケーションプログラムを導入しての幼児教育も手がけ、全国の教育委員会の後援を受け、「いじめ」や子どもの「孤独」などをテーマにした講演などで、コミュニケーションの重要性を伝える活動に力を入れている。二児の父。

X:@baba_bbtrust

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親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」

親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』(馬場啓介/あさ出版)

子育てには正解もなければ、完全無欠の成功者もいない。
「あなたらしいのが一番」「頑張ればできるよ」……。
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