長女が葛藤した“お姉ちゃん”の呪縛…生真面目な性格の子に伝えたい「口ぐせ」とは?
「お姉ちゃんでしょ」、「お姉ちゃんだから」と言われ続け、“しっかりしなければいけない”とプレッシャーに…「悪気のない親の口ぐせ」は、受け取る子ども次第で「悪魔のような言葉」になることがあります。
どうしたら「悪気のない親の口ぐせ」を、子どもに「温かな言葉」として伝えられるでしょうか? 馬場啓介著『親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』から紹介します。
※本稿は、馬場啓介著『親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』(あさ出版)から一部抜粋・編集したものです。
「お姉ちゃんでしょ」
あかり(愛知/弟・妹)
※仮名(出身地/きょうだい)
三妹弟の長女だった私が、親から言われて嫌だった口ぐせに、
「お姉ちゃんでしょ」
がありました。
弟が生まれて、何かあるたびに「お姉ちゃんでしょ」とか「お姉ちゃんだから」と言われるようになり、妹が生まれてからは、さらに姉としての役割が求められ、子ども心に(好きでお姉ちゃんに生まれたわけじゃない)(弟や妹ばかり親に甘えてずるい)と思っていました。
妹は、何歳になっても末っ子だからという理由で親に甘やかされているように感じ、(私がその年齢だったときには、もう何でも一人でやっていたのに)と不満もありましたが、長女として弟や妹のお手本にならなければいけないというプレッシャーもあり、お姉ちゃんだからしっかりしないといけない、お姉ちゃんだから我慢しないといけない、お姉ちゃんだから甘えてはいけない、と言い聞かせていました。
そして「お姉ちゃんだから」という言葉が、次第に自分を縛る呪文のようになっていきました。
その結果、学生時代は人の面倒を見たり、相談に乗ることは得意でしたが、自分より他人の意見を優先してしまったり、他人の評価を気にしてしまうことが多かったように思います。
大人になってからは、長女として親に頼られることも増え、子ども時代に感じていた葛藤はなくなりましたが、二児(姉妹)の母となった今、長女に対して「お姉ちゃんでしょ」「お姉ちゃんだから」とは決して言わないと心に決め、いつも名前で呼ぶようにしています。
お姉ちゃんには、陰でたくさんご褒美をあげる
──馬場先生のコメント
これは、お姉ちゃんあるあるだ。
長女、長男ほど“しっかりしなければいけない”という思い込みが強くなり、周りの目を気にしすぎたり、相談が苦手になったりする。自分が楽しむことより、周りを楽しませることばかり意識してしまい、甘えるのが下手でストレスを溜めやすい。そして何より、適当にやるのが苦手にもなる。
現代社会では、実は「適当さ」はとても重要だ。「適当」と「雑」は違う。適当とは、無理をしないことであり、“よい心の状態を維持できる程度”だと思ってほしい。何事もしっかり完璧にやろうとすると、必ず適当を超えてしまう。近年は心の病気も増え、5人にひとりが患うと言われている。その最大の原因も「適当」がわからなくなるからだろう。
お姉ちゃんは立場的に損に思うことがあったり、寂しさを感じやすいかもしれない。だからお姉ちゃんには、陰でたくさんご褒美をあげるのがいい。今の時代、長男長女のみならず、生真面目な性格の子どもには、「なんとかなるさ」「これでいいのだ」「ほどほどにね」を口ぐせにして伝えてあげてもいいかもね。
『親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』(馬場啓介/あさ出版)
子育てには正解もなければ、完全無欠の成功者もいない。
「あなたらしいのが一番」「頑張ればできるよ」……。
無意識に使いがちな親の口ぐせが、子どもを苦しめているかもしれない。