かんしゃくには「泣いていいよ」がベストアンサー? 子どもにイライラしないための声掛けを精神科医が解説

オ・ウニョン
2025.04.28 17:15 2025.05.02 11:50

イライラするお母さん

子どもに感情的に怒りたくないのに、ついつい声を荒らげてしまう……と悩んでいませんか? 韓国で「国民的子育てメンター」と呼ばれる精神科医のオ・ウニョンさんは、「言葉を少しだけ変えれば、育児は大きく変化します」と言います。70万部超えのベストセラーとなったオ・ウニョンさんの著書『こんなとき、どうしたらいい? 子どもも親も幸せになる子育て』より、怒らなくても効果的な言葉かけを紹介します。

※本稿はオ・ウニョン著、吉川南 翻訳『こんなとき、どうしたらいい? 子どもも親も幸せになる子育て』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

「時計の針がここまできたら出かけるよ」

目覚まし時計を手に持つ女の子

学校の教科書を見ると、単元の最初に「学習目標」が書かれています。学習目標とは「この単元を通して何を学ぶのか」という意味です。子どもに何かを教えるときも、「教育目標」を決めるといいでしょう。
目標といっても、難しく考える必要はありません。問題を前にしてしばし立ち止まって、「いま、この状況で教えるべき一番重要なことは何か」を考えてみることです。一つの状況について一つだけ、当面の教育目標を決めましょう。

たとえば、外出しようとしているのに、子どもがなかなか着替えません。ここで教えるべきことのうち、一番重要なことが何かを考えましょう。「約束の時間に遅れないよう出かけること」。それを子どもに教えるのです。
「時計の針がここまできたら出かけるよ。それまでに着替えてね。もし準備できなかったら、パパが抱っこしてでも行くからね」。そう言えばいいでしょう。そのとき、「まだ着替えもできないの?」とか、「ご飯も一人で食べられないの?」とか、「ご飯を食べながらテレビを見るのはやめなさい」などと言う必要はありません。いまの教育目標はそうではないのですから。それ以外のことは、また別の機会に目標を定めて教えればいいのです。

なかには「着替えなかったらどうするの?」と聞き返す子もいるかもしれません。そんな場合は、「着替えを持ってでも出かけるよ」と言ってもいいでしょう。本当に着替えるのを待ってやれない状況なら、そのことを事前に教えておいて、言ったとおりに行動しましょう。
ときにはせっかく考えた教育目標でも、うまくいかないことがあります。それでも教育目標はいくつも決めるより、一度に一つだけにしましょう。

声に出してゆっくり読んでみましょう。

「時計の針がここまできたら出かけるよ。その時間までに着替えてほしいんだけど、準備できてなかったら抱っこしてでも行くからね」

「思い切り泣いていいよ」

泣いている子ども

子どもがわけもなく(もちろん親の立場から見て)かんしゃくを起こしています。「なんでかんしゃく起こしてるの?」
子どもが泣き出しますが、あなたから見れば話にならない理由に、こう言います。「いいかげんにしなさい! なんで泣いてるの? どうしたの?」思わず言ってしまう言葉です。

子どもが泣いている理由は、何か思いどおりにならないから? おもちゃを買ってもらえないから? スマートフォンを触らせてくれないから? あなたは泣き出す直前の状況を知らないはずがありません。
ただ自分の感情を表現している子どもに、「なんで?」「どうして?」と尋ねるのはナンセンスです。そんな感情を抱いたから、それを表現しているだけなのに、どうしてそんな感情を持ったのか聞かれたら、どう答えたらいいのでしょうか。いまの状況が悲しくて涙が出るのに、どうして悲しいのかと問い詰められても困るでしょう。

感情というのは、その人だけの固有のものです。怒っている人に「どうして怒っているの?」と聞けば、ほとんどの人は「私がいま怒らないでいられると思うの?」と返します。急に怒るのをやめて、「なぜ私が怒ってるかというと……」と論理的に説明できる人はあまりいません。
子どもがかんしゃくを起こしたり泣いたりしているとき、なぜ私たちは子ども本人ではないのに、どうしていいかわからず、耐えられないほど嫌な気持ちになるのでしょうか。それは、子どもの感情を自分のものであるかのように背負いこむからです。その感情はときに間違ったものであっても、その人だけのものです。その感情が自分に向かっているからと、過度に反応する必要はありません。

ゆっくり声に出して、こう言ってみてください。

「あら、いっぱい涙が出るね。思い切り泣いていいよ。気がすむまで待っててあげるからね。泣き終わったらお話ししようね」

そして、じっと見守ってあげましょう。こう言ってあげるだけでも、子どもはずいぶん落ち着くはずです。

オ・ウニョン

精神科医、児童青年精神科専門医。医学博士。延世大学医学部卒業、同大学大学院修士号、高麗大学大学院医学博士号を取得。新村セブランス病院精神科専攻医、サムスンソウル病院小児・青少年精神科専任医および臨床教授を経て、亜洲大学医学部精神科教授を歴任。現在は延世大学医学部客員教授を務める。オ・ウニョン小児青少年クリニック、学習発達研究所所長、オ・ウニョンアカデミー院長としても活動している。
育児テレビ番組「うちの子が変わりました」「60分 親」「最近の育児 大事な我が子」「オ・ウニョンの大事な我が子の相談所」「オ・ウニョンリポート」など、メディアや講演を通して「子育てメンターNo.1」「育児の神様」と呼ばれ、特に子育て世代から絶大な人気と信頼を得ている。『朝鮮日報』『東亜日報』など、メジャーな新聞社やインターネットのプラットフォームで子育て情報をシェアしている。
2017年「今年のブランド大賞」の幼児教育専門家部門で大賞、2021年緑の傘子ども財団の緑の傘アワードで「私たちの偶像」賞、2021年と2022年「今年のブランド大賞」(専門家エンターテイナー部門)、2021年MBC放送芸能大賞時事教養部門で「ドキュメンタリーフレックス」プログラム特別賞、2022年大韓民国教育大賞人格教育大賞(青少年人格部門)、2022年第17回親が選んだ教育ブランド大賞で「今年の教育人賞」を受賞。

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