ご飯を投げる、お風呂で遊ぶ…「子どもにイラっとする場面」での上手な対象法

高祖常子
2023.12.12 15:37 2024.01.18 11:50

ごはんを拒否する幼児

子どもがなかなかごはんを食べてくれない、何度ダメだと教えてもいけないことをしてしまう……。まだ小さいのだから仕方ないとは思っていても、やっぱりイライラしてしまうことも少なくないですよね。

そんな、日々の生活の中での子どもへの困りごとに対して、どのように対応し、解決していくのがベストか、子育てアドバイザーの高祖常子さんに伺いました。


※本稿は高祖 常子著『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

ごはんを食べず、スプーンを投げる子どもにイライラ…

ごはんを食べる女の子

私がきちんと手間をかけて作ったときほど食べない。そして投げる。フォーク、スプーンをポイポイ投げ、拾っても投げる、の繰り返し。目を合わせて低めの声で「投げちゃダメ!」と言うと、視線をそらし、またポイ! 食べ物だけを投げることもありますし、ときには、皿ごとテーブルから落とされて、味噌汁や牛乳などが、床に散らばって大変なことになります。床から何から、拭き終わり、食事を再開したとたん、また落とされるとイライラも限界に……。(1歳半女の子)

子どもの気持ち

「ママのお顔が、怖いよ」「おなかが空いてないんだもの!」

手間をかけることを少しお休みしてみては

悩む女性

「きちんと手間をかけて作った」ということで、もしかしたら「しっかり食べなさい」という感じで怖い顔になっていないでしょうか。

子どもの食が進まないときによくあるのが、ママやパパが怖い顔で食べさせようとすることです。

低めの声で「投げちゃダメ」と言う場面では、もしかしたらお子さんは、ちょっと楽しくなっている可能性もあります。「視線をそらし、またポイ!」という場面では、ママにはとても反抗的に映るかもしれませんが、子どものほうはまだそのような意識はありません。投げるとママが反応してくれる、だからまたやってみるというループになっているのかなと思います。

手間をかけて作ることを、少しお休みしてみましょう。

まずは、「手間をかけて作ったのに」という思いが強いなら、しばらくは、ちょっと手抜きをしてみるのもおすすめ。でも、手作りが大好きで、気分転換になるなら、もちろん手作りでいいと思います。要は、ストレスにならないほうを選んでみることです。

そして、1日の食事時間を見直してみましょう。おなかが空いていないから、あまり食べずに遊んで(投げて)しまうのでしょう。おなかが空いていたら、投げる前に食べるはずです。食事時間の間隔や、おやつの時間や量も客観的に見直してみたり、体を動かす時間を増やしてみましょう。

こぼされてもいいように敷物を準備

手づかみでごはんを食べる赤ちゃんおなかが空いていそうな時間に食べさせることにして、あとは環境整備です。1歳半くらいは、まだ手づかみ食べの時期ですから、手づかみしやすい形にするなど工夫してみましょう。

さらにこぼされてもいいように、床にシートや新聞紙を敷きましょう。シートにすると洗ったり拭いたりが大変なら、新聞紙のほうが、そのまま捨てられていいかもしれません。

汁物がこぼされてばかりなら、テーブルに並べずに、しばらくは様子を見て与えるようにしてもいいですね。

子どもを育むためのヒント〜食事の時間〜

子どもと野菜

・食事の時間を規則正しく
1日の生活リズムを整えて、なるべく食事の時間を規則正しくする(たまには時間がずれてもOK)。

・食事の時間におなかがすくように、日中活動的に過ごす
おなかが空いている状態になることが、食事に集中できることにもつながる。

・食事の時間の目安を決める
食べてくれないからと、長い時間かかって食べさせるのではなく、遊び食べが始まって、あまり食べたがらないと感じるなら、食事を切り上げることも大事。

・食事の時間を楽しく!
ママやパパがしかめっ面で食べさせていては、食が進まないことも。
「おいしいね~」と、食事の時間を楽しく過ごそう!

お風呂で遊び出してイライラ

お風呂に入る赤ちゃん

カランの使い方や、給湯器のボタンを押すことを覚え、シャワーを全開にしたり、私がシャワーを使っているときにカランを切り替えたり、水に切り替えたりして、とにかく何もスムーズにできない。時間があるときは楽しく遊んでいると思い大目に見られますが、時間がないとイライラします。(1歳半女の子)

子どもの気持ち

水が出てくるのは楽しいし、スイッチも大好き。たくさん水遊びをしたいという気持ちでしょう。ママがなぜ怒っているのかわからないかも。

触られたくないものは見えないようにする

子どもがルールを守らずにイライラ…そんな場面を減らす環境作りとはの画像1

お風呂の形状によって、可能かわかりませんが。時間がない、短い時間で入浴したいというときには、興味があるカランやスイッチが子どもの視界に入らないように、ママの背中で隠したりして、入浴できたらいいですね。

触っていいもの、いけないものを明確に

子どもの人差し指

「楽しそうだから、触ってみる、やって(スイッチを押して)みる」。これは探求心の現れ。基本的には、子どもの成長発達にもとてもいいことです。でも、絶対に触ってはいけないのなら、「これは危ないから触っちゃダメ」「熱湯が出るかもしれないから触らないよ」などと禁止する声がけをしましょう。


「楽しく遊んでいる」と思って許している日もあれば、NGの日もあるなら、乳幼児の場合は「昨日は遊べたのに、今日はダメなの?」と混乱します。触っていいもの、いけないものは、決めておきましょう。

時間がないときは事前に説明する

身支度する男の子とママ3歳ぐらいになれば、「今日は時間がないから、お風呂で遊ばないよ。明日はゆっくり遊ぼう」などと事前に説明してみましょう。

すんなりいかないこともありますが、事前に伝えて、てきぱきと準備してお風呂に入れば、子どもも「急ぐときは、こうするんだな」と次第にわかってくれるでしょう。

子どもを育むためのヒント〜お風呂タイム〜

子どもがルールを守らずにイライラ…そんな場面を減らす環境作りとはの画像2

・パパもひとりで入れられるように
ママとパパの連携で入れるのもいいけれど、時にはパパがひとりで一連のお風呂タイムを担当してみるのもおすすめ。ママが仕事で出張に行ったり、病気になったりすることだってあるのですから。

・乳幼児期は、楽しい雰囲気作りを
お風呂タイムはコミュニケーションタイム。子どもによって、お風呂が怖かったり、嫌いだったり、水が怖いということも。ペットボトルやジョーロなどを利用して遊ぶのもGOOD。

・子どもが自分で洗えるように
子どもの成長に応じて、自分で体を洗う練習も少しずつ、やり方を見せてチャレンジさせてみよう。

家の中で、イライラしない環境を作る

料理をする男の子とママ

まずはイライラしない環境を作って「対処する」ことが大事です。
おもちゃをなかなか片づけられないなら、片づけやすいように箱などを工夫してみる、よく忘れ物をするなら、忘れないように工夫してみるということです。

私事ですが、子どもが保育園時代、持ち物が多くて、忘れてしまうこともしましば。そのときから私がするようになったのが、持っていくものを忘れないように玄関の真ん中に置いておくということ。玄関は必ず靴を履くときに通るし、真ん中に置くのはあえて邪魔になるところに置いて、気が付くようにするためです。


ある日、2つの荷物を持っていくのに、玄関に並べておいていたにも関わらず1つしか持って行かなかった私(汗)。その翌日からは、複数ある荷物は、持ち手を縛っておくことにしました。それ以降、用意しておいたものは、忘れずに持参できるようになりました。

ご飯を前に表情を歪める子


刺激を与えるものを隠す作戦もあります。


あるパパは、食事のときに子どもがテレビばかり見ていて、なかなか食事が進まないことにイライラ。そこで食事のときにはテレビに布をかけてしまったそうです。そこにテレビがあると、ついリモコンでスイッチを入れてしまいますが、布をかけると視界に入らなくなるので、あえて布を取ってまでテレビを見ようとはしなくなるようです。


手が届かないところにあっても、見えていると触りたくなりますし、取ってくれと要求します。おやつを棚の上に置いていて、子どもが指さしてあれを取って! と騒いだりするのもよくあることです。

触られたくないものは、「見えない、届かないところにしまう」を基本にしましょう。 このように、行動するときに、忘れがちなことを自ずとするようになる環境作りをする、または視界に入らないようにして刺激を減らすという工夫をしてみましょう。

高祖常子

高祖常子

資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級、キャリアコンサルタントほか。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。リクルートで編集にたずさわったのち、育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク、NPO法人ファザーリング・ジャパンなどの理事ほか、「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)、「幼児期までの子どもの育ち部会」委員(こども家庭庁2023年~)など、国や行政の委員を歴任。編集、執筆、全国で講演を行っている。3児の母。

X:@tokikok

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こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て(かんき出版 )
メディアに話題になった『イラストでわかる 感情的にならない子育て』(2017年)の第2弾。
著者は、前作同様「どならない、たたかない子育て」を推進し、4万6000人のママとパパにアドバイスしてきた、子育てアドバイザーの高祖常子さん(育児情報誌miku元編集長)。
セーブ・ザ・チルドレンジャパンの2万人アンケートによると、約6割が子どもへのしつけとして体罰(叩くこと)を容認しているという結果が出ているとのこと。 「毎日イライラ」「たたきそうになった」「どなってばっかり」と自己嫌悪するママやパパに贈る、「子育ての困った」をまるっと解決してくれる1冊です。