東大医学部生はどうやって進路を決めた? きっかけは「ワクチン直後の失神」

上田彩瑛
2025.04.24 17:34 2025.05.03 11:50
数学を武器にしてみよう!
撮影:稲垣徳文
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人生を変えるきっかけはどこにあるかわかりません。上田彩瑛さんは、東京大学理科三類を目指した理由として、思いがけない「路上での失神」を挙げています。このエピソードを通して、進路選びに悩む中高生に向けた上田さんのメッセージを、著書より抜粋してお届けします。


※本稿は、上田彩瑛著『数学を武器にしてみよう! 東大理三・ミス東大が教える、誰でもできる勉強法』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。

人生を変えた「路上での失神」

ここで、私が東京大学理科三類を目指した理由をお話ししたいと思いますが、そもそも「理科三類って何?」と思われたかもしれません。

東京大学に入学したら、最初の2年間は全員、教養学部前期課程に所属することになります。この教養学部前期課程が、文系の「文科一類」「文科二類」「文科三類」と、理系の「理科一類」「理科二類」「理科三類」に分かれています。

その後、3年生から文系なら法学部や経済学部、理系なら理学部などの学部に所属することになっているのですが(これを「進学振り分け」と言います)、「文科一類」であれば法学部、「理科一類」であれば理学部か工学部といった具合に、科類によって進学しやすい学部が大体決まっています。

そして、「理科三類」に進学すると、ほとんどの場合は医学部に進学することになります。ですから「理科三類」を目指すということは、ほぼイコール医学部を目指すということになるのです。

では、私が医学部を受験するきっかけになった出来事について、振り返りたいと思います。

高校1年生の冬に、インフルエンザワクチンを打ってもらったのですが、そのあとの帰り道、路上で失神してしまったんです。急に視界が暗くなり、意識が遠のいてしまって……。

幸い、母が横にいてくれたので大事には至らなかったのですが、失神したこと自体初めてでしたし、しかも路上でいきなり倒れるなんて、かなりショッキングな経験でした。

今から思えば、おそらく「迷走神経反射」だったのでしょう。何らかの刺激に対する防御反応として血圧と脈拍が低下してしまい、脳に血液が十分供給されなくなるという現象です。

今はそのことがわかるのですが、当時はなぜ自分が倒れたのか、見当もつきませんでした。自分の体のことなのに、体の中で何が起こっているのかがわからない。そのことに怖さも覚えましたし、悔しいとも思いました。そこで、医学部に入って自分の体について勉強しようと考えたのです。

もともと「資格のある職業に就きたい」と漠然と考えていたことも、医学部を目指した理由の一つです。また、私は大阪市にある四天王寺高校(女子校)に通っていたのですが、同級生に医学部志望が多く、それほど抵抗なく医学部を目指すことができたという面もありました。もし、周囲に医学部志望の生徒が全くいなかったら、受験のチャレンジに気後れしてしまったかもしれません。その点では、同級生に恵まれていたと言えるでしょう。

環境の運不運があることは否めませんが、少なくとも「周りに同じような進路を選ぶ人がいないから」という理由でやりたいことをあきらめるのはもったいないな、と思います。「大学でこれが学びたい!」という目標があれば、勉強を続けるうえでのモチベーションになりますから。

ただ、「私には特に大学で勉強したいことはないんだけど」と思われている方もいるかもしれません。というより、多くの受験生は大きな目標など持っていない、と思います。東大生も同じです。むしろ東大生のほうが、他大学の学生より目標を持たない傾向は強いかもしれません。それは先ほど話した「進学振り分け」があるからです。

進学した科類によって所属学部が大体決まってくると言いましたが、振り分けの制度があるため、どの学部に進学するかは東大に入ってから考えようという構えの学生も少なくありません。他方で、オーソドックスな学部を選ばず、転部するケースもあります。文科一類に入っても法学部には進学せず経済学部に入ったり、理科一類に入っても文系の教育学部に転じたり……。

私も、大学などの教育機関は結局「環境」ですから、自分に合った環境を選ぶのが一番いいのでは、と考えます。雰囲気が自分に合っている、カルチャーが肌に合いそう、やりたい部活がある……こうしたことで高校や大学を選んでもいいのではないでしょうか。

上田彩瑛

2000年大阪生まれ。四天王寺高校卒業後、東京大学教養学部前期課程理科三類に現役合格し、医学部医学科に進学。1 年生のときに「東大ミスコン2019」でグランプリを受賞。その後、テレビ朝日系『クイズプレゼンバラエティー Q さま‼』、読売テレビ『そこまで言って委員会NP』などのテレビ番組に出演。

数学を武器にしてみよう!

数学を武器にしてみよう! 東大理三・ミス東大が教える、誰でもできる勉強法』(上田 彩瑛著/PHP研究所)

「大学入試の受験生に課される問題の99%は、今まで学んできた数学の『例題』にあてはめたり、あるいは例題の解き方を組み合わせたりすることで、解くことができると思っています」 数学を解けるか解けないかは、センスの問題ではないし、 「ひらめき」なんて、必要ない! 現役で東大理三に合格した著者が、誰でもできる数学の勉強法を開陳!
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