「字が上手に書けない子」にやってはいけないことは? モチベーションを引き出す学び方のコツ

小泉敏男
2025.05.16 16:44 2025.05.29 11:50

鉛筆を手に勉強する男の子

小学校に入る前に字が書けるようになってほしいけれど、実際には「字らしい字が書けない」「書くことに興味がない」と悩んでいる親御さんも多いのではないでしょうか。東京いずみ幼稚園の園長、小泉敏男先生は、そんな子どもたちに対して「余計な指導はしない方が良い」とアドバイスしています。

これから字に挑戦する子どもたちへの上手な関わり方を、先生の著書から抜粋してご紹介します。

※本稿は、小泉敏男著『自分で考えて動く力がつく 最高の育て方事典』(講談社)より一部抜粋、編集したものです。

いつ「書く」を学んでもらえばいいか

文字が読めるようになった子には、「書く」ことも教えたいと考えはじめるのが親というものです。では、子どもに書字を教えるのはいつからがいいでしょうか。

最良のタイミングは、「子どもが字を書くことに興味を示したとき」です。

まずは子どもが2~3歳くらいのころから、五十音表を家のなかの目につく場所に貼って、子どもが文字に気づき、興味を抱くような環境を整えるのが第一歩です。

そして子どもが五十音表を見て平仮名を「描き」はじめたら、余計な口出しはせずに見守ってあげましょう。間違っても、大人が「書きなさい!」と無理強いしてはいけません。

逃さずに活かしてほしいのは、子どもが自発的に「書きたい!」と言い出したときで、それこそまさに、書字にチャレンジする絶好のチャンスです。

余計な指導はせず「見守る」のが基本

お絵描きする子どもたち

「手紙」というものの存在を知ると、子どもは自分も書きたいと思うことが多いようです。

実際、園では園児が大好きな先生に「おてがみ」を渡したり、仲のいい子同士で「おてがみ」のやり取りをしたりしていて、それを見た子が「自分も書きたい!」と言い出すことがめずらしくありません。それ以外にも、

●年末に自分から「友達に年賀状を送りたい!」と言う子
●祖父母から手紙(あるいは年賀状)をもらって、「自分で返事を書く!」と言う子

などの話をよく耳にします。せっかく子どもが意欲的になっているのですから、ぜひ後押ししてあげましょう。子どもが手紙を書くそばで、親が一字一字教えてあげる必要はありません。五十音表を活用してください。壁に貼ってあるなら文字を指さして、

「『せんせい』の『せ』は、これだよ。書いてみよう」

と、文字を書き写すように子どもを促します。手元に置いて参照できる大きさの五十音表を子どもに与えたり、机や卓袱台(ちゃぶだい)に透明なテーブルマットを敷き、そこに挟み込んでおいて、すぐ見られるようにしたりするのもいいでしょう。

ポイントは、子どもが参照できるものを用意しておくこと。そして、どこを参照すればいいか気づかせてあげて、自分で文字を探し、書き写せるようにしておくことです。

大人がよかれと思ってする指導は、ともすれば子どもの「やる気」「興味」を挫いてしまいます。あくまでも本人の意欲と本人のペースで書き進められるよう環境だけを整えて見守りながら、必要な援助や手助けだけをするのが上策です。

上手く書けないときどう教えるか

とはいえ、子どもがどうしても書けず行き詰まって困っているときや、「どう書くの?」などと尋ねてきたときは手助けしてあげてください。

あらかじめメモ用紙とペンを用意しておき、たとえば子どもから、

「カタツムリの『む』がわからない!」
「『はしる』って、どう書くの?」

と問われたら、メモ用紙にむ、あるいは走ると大きめに書き、「こう書くんだよ」と子どもに渡して書き写してもらいましょう。

子どものそばにピッタリついて、書く様子をじっと見ているわけにはいかない、という忙しい親も多いはずです。ですから先回りして教えたり、代筆してあげる必要はありません。

お手本を示し、子どもに自分で書いてもらえば十分です。ただ写すだけであっても、子どもが主体となって書いたほうが学びは深まります。

親子で取り組み、あとで「ほめる」のが大事

勉強する子

最後は、たとえ書いたものが文章の体をなしていなくても「よくできた!」と子どもをほめてあげましょう。正しく書けたかどうかなど、二の次でいいのです。

「書く」というのは、子どもにとってはとても難しいことです。にもかかわらず果敢にチャレンジしたこと、それ自体を高く高く評価してあげてください。

ほめられて「字を書く=楽しいこと」と子どもが認識すれば、あとは親が何も言わなくても、自発的に書くようになります。そして書き続けていれば、書字は間違いなく上達します。教えるよりも、モチベーションに火をつけることが大事なのです。

以上、あれこれと説明を重ねてきましたが、とはいえ、

「子どもが書きたがるのを待ってなんていられない。何か教えたい」
「うちの子は、書くことへの興味が薄いみたいで心配」

という読者がいるかもしれません。

であれば、子どもをちょっと誘ってみてはいかがでしょうか。子どもが手紙やプレゼント、あるいはお年玉などをもらったら、その機会を逃さず「返事を書こう」「○○くんも、お手紙を書いてみようか」と声をかけ、短くていいので親子で一緒に礼状を書くのはどうでしょう。

「返信する」という習慣があることをまだ知らない子もいるので、大人のほうからはたらきかけるのは重要です。

あるいは、大人が書いた手紙の最後に、1~2行、子どもに何か書いてもらうという手もあります。親子で書く経験を積み重ねれば、やがて子どもは文字を書くことを楽しむようになるでしょう。

子どもが嫌がらないのであれば、平仮名や運筆のドリルをやってみる、というのも悪くありません。

やる気に火をつける「マルのつけ方」

「読み先習」を推進するいずみ幼稚園でも、書字の教育は行っています。

年少では直線や曲線を描いて運筆を練習し、おもに年中以降で平仮名を書く練習へ移行していますが、市販のドリルを使い、薄く印刷された線や文字をなぞるなどオーソドックスな練習をしているだけで、特別なことは何もやっていません。

ただし、子どもが練習したあとのマルのつけ方にはちょっとだけ工夫をしています。上手に書けた文字を円で囲い、周囲に花びらを書いて花マルにする、というルールでマルつけをしているのです。

文字に重ねるようにマルをつけてしまうと、せっかくきれいに書けた文字が隠れてしまいます。

どの文字が「きれい」かわかるように、また、子どもがあとから見返してお手本にできるように、文字を隠さないマルをつけるのです。

こうしておくと、書き方が雑なときに花マルがついた字を子どもに示して、

「これと同じように書けるよう、もうちょっとがんばろうね」

と励ますこともできるので、おすすめします。

小泉敏男

1952年、東京都生まれ。東京いずみ幼稚園園長。大学在学中に「小泉補習塾」を開設。卒業後の1976年、父とともに「いずみ幼稚園」を創設し副園長に就任、1995年より現職。石井式漢字教育、ミュージックステップ、アイデアマラソンなどを取り入れ、屋内温水プールを設置するなど画期的なプログラムを次々と導入し、2004年には幼児教育界では初となる「音楽教育振興賞」を受賞した。2008年、「学校法人小泉学園 東京いずみ幼稚園」に改組、これまでに5000名を超える子どもたちに独自の幼児教育を実践してきた。著書に『東京いずみ幼稚園式 美しい日本語が、心の強い子を育てる』(単著、宝島社)、『国語に強くなる音読ドリル』(小泉貴史との共監修、致知出版社)がある。

自分で考えて動く力がつく 最高の育て方事典 どんな子も必ず伸びる56のメソッド

小泉敏男(著)『自分で考えて動く力がつく 最高の育て方事典』(講談社)

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