「発達障害もどき」の原因は生活リズムの乱れ? 小児科医が教える改善ポイント
「落ち着きがない」「集団行動が苦手」「ミスや忘れ物が多くなる」など、定型発達の子に発達障害のような特徴があらわれる「発達障害もどき」。その原因は、子どもの脳の発達バランスの乱れにあります。
しかし、子どもの脳は、「生活習慣の見直し」によって育て直すことが可能です。
本記事では、医師・成田奈緒子先生の著書から、生活改善の大きな効果と、実践のポイントをご紹介します。
※本書は、成田奈緒子(著)このえまる (イラスト)『マンガでわかる! 「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版)より一部抜粋、編集したものです。
※「発達障害もどき」は、診断名ではありません。成田奈緒子先生が診療を通して出会った子どもたちの症候を見る中でつくった言葉です。
生活改善で脳は驚くほど変わる
子どもの脳を育て直すためには、何をすればいいのでしょうか。
行うべきことはただ1つ。「生活の改善」です。生活を改善すると、次にあげる3つのよいことが起こり、子どもの言動が驚くほど変わります。
1.からだの脳を育て直すことができる
からだの脳(生きるのに欠かせない機能を担う。呼吸・体温調整· 体を動かすこと/起床・就寝/食べることなどを司る)を育てるのに最も重要なのは、五感(味覚、嗅覚、視覚、触覚、聴覚)からの刺激です。この刺激を一番効率よく、たくさん入れられるのが「規則正しい生活のくり返し」。規則正しい生活に改善することで、脳を育て直すためのよい刺激を多く得ることができます。
窓から入ってくる朝日(視覚)、朝食をつくる音(聴覚)、朝ごはんを食べること(嗅覚、味覚、視覚、触覚)など……。こうした五感からの刺激が多ければ多いほど、からだの脳は発達します。
このような話をすると、多くの刺激を得ることが大事だというのなら、夜更かしして行うゲームや動画視聴でもいいのでは……? と、言う方がたまにいますが、そうではありません。
人間は本来、昼行性の動物です。昼間は活動し、夜が来ると休む。こうした自然なリズムに従う中で得られる刺激が、脳を育てるために重要なのです。
このような刺激が脳に入ると、体内時計が正常に働くようになり、体内環境を調整するために欠かせない物質を適切に分泌できるようになります。
2.セロトニン神経を育てられる
「セロトニン」は幸せホルモンとも呼ばれます。体と心を安定させ、安心·安全な気持ちをつくり出す神経伝達物質です。
このセロトニンを分泌する「セロトニン神経」を育てると、からだの脳、おりこうさん脳(言葉· 計算の能力、手指を動かす力、知識を蓄えそれを使って考えるなど、勉強やスポーツに関わる)、こころの脳(想像力を働かせる、判断する、円滑なコミュニケーションをとる、論理的に考えるなど、「人らしい能力」を司る)すべての働きがよくなります。セロトニン神経はからだの脳から、おりこうさん脳を通って、こころの脳まで走っていて、そのすべてで重要な役割を担っているからです。
そして、このセロトニン神経を育てるときにも、自然のリズムに合わせた規則正しい生活が欠かせません。朝には日の光を浴び、暗くなったら眠る。こうした生活によって、脳内でより多くのセロトニン神経のつながりをつくれます。
セロトニン神経のつながりがしっかりできれば、からだの脳が正常に働くようになり、調子のよい状態でいられるように。また、困ったことが起きて不安になっても、それを解消する考えを自分で編み出せるようになるでしょう。
発達障害もどきによくある「姿勢がダラッとしている」「落ち着きがない」などの気になる言動も、改善していくはずです。
3.睡眠が安定する
生活の改善は、睡眠の改善につながります。
睡眠が改善される、つまり質のよい睡眠をたっぷりとれるようになると、「落ち着きがない」「かんしゃくを起こす」「偏食」など、発達障害に似た症候が改善されることが多々あります。
睡眠不足が子どもの気になる言動を引き起こしているといっても過言ではないでしょう。
生活改善 3つのポイント
生活を改善するために押さえるべきポイントは3つ。それぞれ簡単にお伝えしていきます。
1. 朝日を浴びる
朝日を浴びると、脳内のセロトニンが増えて、セロトニン神経のつながりが強くなります。
また、私たちの体内時計は、地球の自転にぴったり合った24時間ではなく、実は少し長めに設定されています。このズレを整えるためには、朝目覚めたら太陽の光を浴び、脳に「朝だよ!」と知らせることが大切です。そうしないと、体内時計が乱れたままになってしまいます。
2. 十分に眠る
十分な質と量の睡眠を確保することで、生活リズムが整います。
小学生の場合、22時には深い眠りについているのが理想的です。
3. 規則正しい時刻に食べる
体内時計や自律神経が正常に働いていれば、朝起きたらお腹が空きます。もし、朝に食欲がないとしたら体内時計が狂い、体が正常に働いていない可能性が高いのです。
決まった時刻にきちんと食事をとると、からだの脳によい刺激を与えられます。特に朝食をしっかりとることで体内時計が刺激され、本来のリズムで動き出すのです。体内時計が整えば、朝食後に自然と排便が促されるでしょう。
人として本来あるべき生活を心がけることが、生活改善であり、脳を育て直す第一歩だと言えます。
成田奈緒子(著)このえまる (イラスト)『マンガでわかる! 「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版)
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35年以上の臨床経験をもつ小児科医が 増え続ける発達障害児の中にいる「発達障害もどき」について解説します。
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