小学校から私立&習い事で教育費はいくらかかる? 実例から見えた合計金額

西岡壱誠, 布施川天馬

子どもに色々な習い事をさせたり、小学校から私立に通わせることを検討する親御さんもいることでしょう。その場合、教育費はどのくらいかかるものでしょうか? 私立小学校の受験を経て、高校まで一貫の私立に通い、現在慶應義塾大学の理工学部に在籍中の男の子を例に考えます。教育歴とお財布事情とは?
西岡壱誠(著)布施川天馬(著)『幼稚園から大学まで 勉強にかかるお金図鑑』から紹介します。

※本稿は、西岡壱誠(著)布施川天馬(著)『幼稚園から大学まで 勉強にかかるお金図鑑』(笠間書院)から一部抜粋・編集したものです。

イントロダクション

東京23区生まれの片岡さんは、本書でも珍しい私立小学校の受験を経て、小学校から高校まで一貫した私立で過ごしました。現在慶應義塾大学の理工学部に在籍中。

音楽の素養があり、小さな頃からフルートやクラリネットなど、様々な習い事をしています。

今回は塾や予備校など、勉強に関わる習い事の費用のみ集計しましたが、これらも含めると総合教育費はさらに上をいくでしょう。彼の教育歴を振り返ります。

家から近い私立名門小学校に進学

片岡さんは2歳から2年間ほど幼児教室へ通い、その後私立幼稚園へ入園。彼の通っていた幼児教室は幼稚園受験志望者御ご 用よう達たしの名門で、ここから彼の通った名門小学校・中学校を目指すルートが確立しているとのこと。

ただし、彼がその私立幼稚園へ行った理由は名門ルートをたどりたかったわけではなく、家から一番近くてしっかりした幼稚園がそこだったからだそうです。とはいえ、幼稚園頃からくもんに通いながら勉強もしていたようです。

小学校も「家から近いから」と、私立の名門校を受験。そのために小学校受験用の塾にも通ったそうですが、あまりにも先生との相性が悪く、半年程度で退塾。小学校受験には面接などでの受験態度を見る項目があり、そのためのしつけ方法や方針が、どうしても合わなかったといいます。

塾をやめてからは受験勉強に打ち込む日々。受験会場では積み木をしたり、おとなしく座っていられるかを試されたり、様々な試験が課されました。日々の努力の甲斐もあって、見事合格。

さすが名門小学校だけあって、勉強はそれなりに難しかったといいます。ここから別の名門中学を目指して受験する子も多く、普通は塾通いもするそうですが、彼の場合は塾に通いませんでした。

なぜならば、彼は外部の中学ではなく、附属の中学校への進学をすでに決めていたからです。そもそも彼がこの名門小学校に進学したのは「エリートになりたかったから」ではなく「家から近かったから」。

いくら名門でも、わざわざ家から遠い別の中学校へ通う意味がなかったのです。幼稚園から続けたくもんも、小学校高学年の頃にはやめています。

附属中学校から附属高校へ

附属中学校へ進学した彼は、習い事と部活動に打ち込む日々を送りました。音楽に興味を持った彼は、小学校からフルートやクラリネット、ピアノなど様々な楽器に触れ、芸術的感性を磨きながら育っていきます。

もちろん、部活動も音楽系。大学に進学した今でも音楽活動を続けているそうで、音楽が彼のライフワークたる存在であることがわかります。

彼の通う中学には、高校も附属しています。やはり家から近いため、小中高一貫で同じ系列の学校に通うことを選択。中高一貫教育を受けられることや、中学時代の友人と離れることに抵抗があったのもまた理由となりました。

内部進学は比較的成績要件が緩いこともあり、中学時代も塾には通っていません。

東大を志望するも、担任の助言で慶應を受験

高校も同じ部に所属した彼は、高校2年生の引退まで音楽活動に打ち込み続けます。彼には独学が肌に合っていたようで、塾には通っていませんが、この頃には東京大学出身の家庭教師が1人ついていました。

その教師から東大の魅力を語られた彼は、いつしか東大のみを志望するように。成績もメキメキと上昇していき、東大は十分射程圏内に入りました。

今でこそ勉強好きな彼ですが、受験当時はノイローゼ気味で勉強嫌いになるほど追い詰められていたそうです。

どうしても現役で決めたかった彼に、成績を見た担任が「一応、早慶も受けてみたら?」と打診。最初は東大一本にこだわりましたが、あまりに頼み込まれるので「そこまで言うなら……」と慶應義塾大学の理工学部を受験。

東京大学理科二類は、惜しくもわずかに手が届かず、不合格となりましたが、現在では滑り止めだった慶應義塾大学に通っています。

結果的には、担任の助言が彼の浪人生活突入を回避させた形になりました。

ちなみに、理系の最高峰と言えば医学部であり、彼の両親ともに医学部出身ですが、「医者になれ」とは言われなかったそうです。

また、彼自身も最初こそ「空気を読んで医学部に行こうか」と考えたそうですが、医者になりたいモチベーションがわかず、最終的には自らの興味をもとに専攻を選んだとのこと。

下手に空気を読むのではなく、自らの考えや趣味嗜好に基づいて、やりたいことを探究する姿勢が大事なのでしょう。

大学に入学するまでの合計金額

彼の教育費総額は1672万円。幼児教室が80万円、私立幼稚園が60万円、私立小学校が660万円、私立中高一貫校が合計555万円。

小学校受験用の塾が半年で30万円、くもんが8年間利用で80万円、家庭教師が年間100万円として、1年で100万円。彼は中学在学中に1か月留学していますので、100万円。大学受験関連費用が7万円。

小学校から高校まで私立に通っていますが、塾にほとんど通っていないことから、思ったより抑えられている印象です。

ただし、彼の場合は習い事を複数やっており、音楽系の習い事とスイミングはマンツーマンレッスンとのことでしたから、これらを教育関連費用と見なすのであれば、さらに総額は跳ね上がります。


西岡壱誠(著)布施川天馬(著)『幼稚園から大学まで 勉強にかかるお金図鑑』(笠間書院)

塾・家庭教師・受験料・入学金……子どもの勉強や受験にはお金がかかります。本書は、累計50万部「東大シリーズ」著者で東大カルペ・ディエム代表・西岡壱誠と、貧しい家庭に生まれながら東大合格を果たした著者・布施川天馬が、「子どもの勉強・受験にかかるお金」の問題に特化し、経験と膨大なデータをもとにまとめた一冊です。