「なんで私みたいにできないの?」我が子にイラっとしたら試したい“過去の自分振り返りメソッド“

上村公亮

「私が子どものころはできたのに」「つい厳しいことばかり言ってしまう」
我が子に対して、そんなもどかしさ感じることはありませんか?

子どもにイライラしてしまったり、必要以上に厳しくしすぎてしまう…その原因はもしかしたら、ママ・パパの子ども時代にあるかもしれません。
元小学校教諭の上村公亮さんがおすすめする「タイムトリップ日記」で、一度じっくり過去の自分と向き合ってみませんか?

子どもとの関り方を見直すための日記活用法を『不登校児ゼロ教師が伝える 親子の幸せな関係と居場所をつくる「子ども日記」』からご紹介します。

※本稿は上村公亮(著)鎌田和宏(監修)『不登校児ゼロ教師が伝える 親子の幸せな関係と居場所をつくる「子ども日記」』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

「なんで私は…」と思ったら始めたい「タイムトリップ日記」

「私はできたのに、なんでこの子はできないんだろう?」

そんな風に感じたことはありませんか?

「自分の子どものころは、これぐらい普通だった」とか、つい昔の自分とお子さんを比べてしまう方は少なくないと思います。

そういう方にぜひ試していただきたいのが「タイムトリップ日記」です。

「タイムトリップ日記」は、親が自分の子ども時代を客観的に振り返る日記です。

この日記は、「過去を振り返ることで未来を変える」ためにつくりました。

普通、日記は今起きていることを書くものなので、過去に起きたことを書くのは異色かもしれません。

「日記」という名前がついていますが、毎日、過去を振り返って日記を書く必要はありません。一度だけでもかまいませんし、何度も立ち止まって、過去を振り返るために書いている方もいらっしゃいます。

「なんで、こんなに子どもに対して厳しいことばっかり言ってしまうんだろう」
「なんで、子どもが謝ってるのに、許してあげられないんだろう」

自分の言動に疑問を感じたとき、過去にその問いの答えがある場合が多いのです。

「タイムトリップ日記」はこんな人におススメ

自分のことを棚に上げている方

「もうっ、早くしなさい!」ともたついているお子さんに声を荒らげたとき、「あ、自分も親に同じことを言われた」とハッとすること、ありませんか?

自分は夏休みの宿題をいつも2学期が始まる直前になってからやっていたのに、子どもには「計画的に進めなさい」と諭したり、自分は会社で叱られたら凹むのに、家では子どもを叱り飛ばしたり。人は矛盾だらけの生き物です。

「自分を棚に上げないと子育てなんてやっていけない」という声が聞こえてきそうですが、子どもは大人の矛盾に気づくものです。

一度、棚に上げている自分自身を見つめ直してみませんか?

「お兄ちゃんなんだから、我慢しなさい」と繰り返し言い聞かせるのは、自分が過去にそう言われてきたからかもしれません。自分の言葉の裏側にはなにがあるのか探ってみたら、過去に原因がある場合も多々あります。

親と同じことをしたくないと思っている方

たとえば、ご両親が共働きで、子どものころは鍵っ子だったという記憶から、「子どもには寂しい思いをさせたくない」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

その考え自体はいいのですが、あまり思い入れが強すぎると、逆に自分を縛ってしまう可能性もあります。ずっと子どもにつきっきりで世話をしているうちに、お子さんが依存体質になってしまう……なんてことになりかねません。

「親と同じことをしたくない」と思っている自分自身とまず向き合わないと、子どもとの適切な距離感はなかなか見つけられないでしょう。「タイムトリップ日記」はそういうときに役立ちます。

子どもに対して反省しても同じことをしてしまう人

スーパーで大泣きしているお子さんを𠮟りつけた後で、「こんな自分がイヤ」と自己嫌悪に陥る方もいるでしょう。怒鳴りたくないと思っていても、お子さんがまたわがままを言ったらイライラして、感情が爆発。

その原因は、お子さんではなく、もしかしたら皆さんの過去に関係しているのかもしれません。

「タイムトリップ日記」を書いてみると、子どものころに自分も同じことを親からされていたと気づく場合もあります。そこに解決のカギが隠されているかもしれません。

自分の親は毒親だったと思っている人

虐待やネグレクトを受けていた場合、当時を振り返るのはかなりつらい体験だと思います。それでも、我が子への接し方で苦しんでいるなら、「タイムトリップ日記」を書いてみると、気持ちに変化が起きるかもしれません。

当時は毒親だと思っていなくても、今振り返るとそうだった、という場合もあるでしょう。今の自分ならそれをどう感じるのか、向き合ってみるのも一つの方法です。

親を許し、自分を許せれば、子どもと自分との未来を考えられるようになります。

とくに親の影響は受けていないと思っている方

「うちは毒親ではなかったから影響は受けていない」と思っていても、知らず知らず影響を受けていることもあります。親の影響を受けない人はいません。

「タイムトリップ日記」で深掘りすると、「今、私が子どもを叱っていることって、自分が子どものころに親からよく言われていたことだ」のように思い出すこともあります。

「タイムトリップ日記」の書き方

過去にあったことをできるだけ具体的に思い出す

これだけでもいいと思います。

日記に「小学2年生のとき、こんなことで親から叱られた」「中学のとき、親と部活のことでケンカした」と、記憶に残っている出来事をできるだけ具体的に書いていきます。

また、当時の気持ちも覚えているなら、「こちらの話を聞いてもらえずにショックで大泣きした」のように、できるだけ詳しく書きましょう。

嫌だった親の関わりにどう対処していたかを書く

親に厳しくしつけをされていたのなら、「これ以上怒らせないために黙って従っていた」のように、当時の自分の行動を書きます。その抑圧された思いが、今の子育てに影響しているかもしれません。

今、親に伝えたいことを書く

当時、親に本当はどうしてほしかったのか、もしくは親の態度や言葉にどれだけ傷ついたのかなど、思っていることをすべて吐き出しましょう。

子ども時代の話だけではなく、最近起きたことを書きこんでもかまいません。

そのメッセージを実際に親に伝えるかどうかは、ご自身で判断していただきたいのですが、日記に吐き出すだけで気持ちは軽くなるはずです。

「タイムトリップ日記」に書いたら、目線を変えてみる

あなたが幼少期、親にされて「悲しい」「むかついた」と感じたこと

「買い物でダダをこねたときに、大泣きしているのに置き去りにされた」
「悪いのは私ではないのに、妹ではなく私が叱られた」
「テストで悪い点を取ったら怒られた」

このような親にされたことによる怒りや悲しみ、寂しいなどの感情とともに記憶している思い出を、できるだけ具体的に書き出したら、「自分はそのときどう感じたのか」「今はどう思うのか」を考えてみます。

「自分も今、子どもがテストで悪い点を取ったら怒っている。親がそうだったからかもしれない」のように客観的にとらえられたら、「自分も親と同じように子どもを追い詰めているのでは」と今の自分に目を向けられるようになるでしょう。

当時の親の気持ちを考えてみる

「親になったら、当時の親の気持ちがよくわかる」と言いますよね。

時間が経ったから見えてくることもある。

もし、受けとめられそうなら、「あのとき、自分を叩いた親の気持ちになってみる」のように、つらい体験を振り返って親の気持ちになってみるのも一つの方法です。

もしかしたら、「あのときのお母さんは余裕がなかったんだ」などと見えてくるものがあるかもしれません。それをきっかけに、同じ物事でもとらえ方が変わる可能性があるのです。

過去を冷静に分析する

気持ちが高ぶっているとなかなかできませんが、落ち着いたら過去の出来事を冷静に分析してみましょう。

「転校が多かったから、仲のよかった友達とも別れなくちゃいけなかった」
「父も母も新しい土地で一から始めないといけなかったから、大変だったのでは?」
「だからうちはいつもピリピリしていたのかもしれない」

このように一つずつ振り返るうちに、今まで気づかなかった背景が見えてくるかもしれません。それも過去のとらえ方を変えるきっかけになります。

「過去」と「今」のとらえ方が変わればOK

ここまで読んできて、「タイムトリップ日記」は親に対するネガティブなことを書くものだと思われたかもしれませんが、そんなことはありません。

親を尊敬していた、大好きだったというのも大事な感情です。

「大人になったら、お母さんみたいになりたいって思ってたっけ」と思い出したら、それだけで温かい気持ちになれるでしょう。そういった前向きな思いもとことん書いていただきたいと思います。

「タイムトリップ日記」を書いた後、ムリにネクストプランにつなげなくてもいいですし、前向きな思考になれなくても問題ありません。

過去の事実は変えられない。けれども、自分のとらえ方は変えられると思っただけでも、大きな前進です。

子どもへの接しかたが変わるのがベストですが、「タイムトリップ日記」だけではそこまで行かない場合もあります。

自分の過去に問題がありそうだと思ったら、「タイムトリップ日記」で無意識レベルを探ってみる。すると、それまでは子どものせいだと思っていたことが、「もしかしたら自分の過去に関係しているのかもしれない」ととらえ方が変わるかもしれません。

そのように、少しずつ日常に変化が起きていけば、「タイムトリップ日記」は十分役割を果たしていると思います。

不登校児ゼロ教師が伝える 親子の幸せな関係と居場所をつくる「子ども日記」

上村公亮(著)『不登校児ゼロ教師が伝える 親子の幸せな関係と居場所をつくる「子ども日記」』(かんき出版)

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