その怒りに点数をつけると? “記録”がキレる子を変える理由

戸田久実
2025.09.18 11:30 2025.09.19 19:00

頭を抱える男の子

子どもも大人もなかなかコントロールできない「怒り」という感情。
しかし、自分の怒りの“クセ”を知ることができれば、それに対する対処法を見つけることができます。

アンガーマネジメントを広める戸田久実さんに、自分の「怒り」を把握する方法や、気持ちをしずめるテクニックについて解説していただきます。

※本稿は、戸田久実『まんがでわかる 子どものイライラが消える本 13歳までに身につけるアンガーマネジメント』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

自分の「怒り」を把握する

怒りを日記のように記録しよう

勉強する子ども

どんなことに怒りを感じたのか日記のように書いてみることは、アンガーマネジメントでは基本の方法です。

【効果】
・書くことで気持ちが落ち着く
・どんなことに怒りがわくのか、わかるようになる
・自分が何に怒りやすいのか、自分の「べき」がわかる

【例】
7月7日
教室で友だちに「おはよう」と言ったけれど、返してもらえなくてイラッとした。
なんで挨拶くらいしないんだろう?
怒りの強さ:2点

7月8日
家でお母さんに、「テストでこんな点数をとって!」と怒られた。
そんなふうに怒らなくたって…。難しかったのに…。
怒りの強さ:5点

7月9日
ゲームをしているときに、親に電源を切られた。
いいところだったのに。そんなふうに急に切らなくてもいいじゃないか。
怒りの強さ:7点

ただ、「ムカつく!」「バカやろう!」という言葉ではなく、何に腹が立ったのか感じたことを書いてみるといいですよ。

怒りは突然わいてくることがあります。それに振り回されてつい言いすぎてしまったり、とんでもない行動をしてしまったりすることもあるかもしれません。

だからこそ、自分の「怒り」について知っておきましょう。

自分の怒りについての取り扱い説明書をつくろう

■怒りっぽくなる場所は?
学校、家、学校の行き帰りの道、お店、電車のなかなど

■相手は?
親、きょうだい、友達、先生など

■どんなとき?
誰かと比べられたとき
~と言われたとき
話を聞いてもらえないとき
テストの成績が悪かったとき
スポーツの試合で負けたとき
ルールを破る人がいたとき
お腹が空いているとき
疲れているとき、など

■ 怒ったときにどう思った?

■どうしてほしかった?

うれしかったこと、うまくいったことをメモしてみよう

いいことを見つけてみる

勉強する女の子

日常の生活では、イライラすることばかりでなく、うれしかったこと、うまくいったこともたくさんあるはずです。

そんな、「しあわせだ」と感じられることや、「ラッキー!」「よかった!」と思うことを書いてみる。そしてうまくいったことを書いてみる。どちらも書き続けることで、プラスに目を向けられるようになっていきます。

「友だちと遊んだことが楽しかった」「朝、早く起きることができた」「ご飯がおいしかった」など、小さなことでいいのです。

ノートなど、自分が書きやすいものに記録すればOKです。

【効果】
・よかったことを書き出すと、小さなことにも「しあわせだ」と感じられるようになる
・うまくいったことを書き出すと、自信を持てる
・どちらも続けていると、怒りを感じにくくなる

怒りに点数をつけよう

ここからは、6秒間怒りをやり過ごすための「6秒ルール」のテクニックをいくつか紹介していきますよ。

怒りは目に見えないため、扱いづらく、振り回されやすいものです。

そこで、点数をつけることで、自分の状態がわかって、どうしたらいいか考えやすくなります。

たとえば、天気予報で「今日は35度」と聞けば、「かなり暑いんだな」と判断して、「薄着にしよう」「日傘を持って行こう」、20度より低ければ「少し薄い上着を着て行こう」と対策を考えます。

そのときの気温によって、何をすればいいのか、自分の行動も変わってきますね。

怒りがわいたときにも、点数をつけて考えながら行動してみましょう。

【効果】
・点数をつけることに意識を向けるので、怒りにまかせた行動をしにくくなる
・何にどれくらい怒りを感じやすいのか、自分の怒りのクセがわかる

数の数え方

【1】歩きスマホをしている人がぶつかってきた
例)しかも、ぶつかってきたのに謝らないで、「チッ」と言われた
※にらみつけるのは×

【2】頭のなかで、怒りの点数を思い浮かべる
例) 「いまのは6点くらい」

【3】 冷静になる

【点数の目安】
0 … まったく怒りを感じていない状態
1〜3 … イラッとするが、すぐに忘れてしまえる程度の軽い怒り
4〜6 … 時間がたっても心がざわつくような怒り
7〜9 … 頭に血がのぼるような強い怒り
10 … 絶対にゆるせないと思うくらいの激しい怒り

■数を数えて気持ちをしずめよう

怒りを感じた時、頭のなかで数を数える方法もおすすめです。
そうすることで、怒りにまかせた行動を防ぐことができるようになります。

1、2、3、…と数えるより、100から3ずつ引き、100、97、94…というように、少し考えないといけないような数え方の方が、怒りに引っ張られなくなります。

また、同じ数え方を続けると、無意識でも数えられてしまうので、たまに変えるといいですよ。

【効果】
・数を数えることに意識が向くので、怒りの気持ちから少し離れて落ち着いてくる

数の数え方

【1】◯◯さんにもらった貴重なチョコなのに!

【2】197、194、191、188… 少なくとも6秒は数えるようにします

【3】「大事にとっておいたチョコなんだよ。だから黙って食べないでほしかったな「ごめん」

※いきなり「バカ!」と怒鳴るのは×

戸田久実

アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。

立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現 セイコーグループ株式会社)にて営業職、音楽業界の企業にて社長秘書を経験しながらコミュニケーション研修に携わる。

2008年、アドット・コミュニケーション株式会社を設立。2015年、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の理事に就任した後、2024年より代表理事を務め、協会運営とアンガーマネジメントの普及に尽力している。

大手民間企業や官公庁を中心に、研修講師として活躍するほか、書籍も含め、親や子ども向けのアンガーマネジメントコンテンツも提供している。講師歴30年以上、登壇数は4500回を超え、指導人数は25万人に及ぶ。

まんがでわかる 子どものイライラが消える本 13歳までに身につけるアンガーマネジメント

戸田久実著『まんがでわかる 子どものイライラが消える本 13歳までに身につけるアンガーマネジメント』(かんき出版)

「どうして、あんなに怒ってしまったんだろう……」
「なんで、あの子はすぐキレるんだろう……」
子どもの怒りも、大人の戸惑いも、ちゃんと理由があります。
本書は、子どもが自分の〝怒り〞と向き合い、気持ちをうまく伝えられるようになる
ための最初のガイドです。

心理学に基づいた“アンガーマネジメント”を、子どもにもわかるように、楽しいマンガと会話形式でやさしく解説。子どもも、大人も、一緒に学べる一冊です。