赤ちゃんが感染しやすいRSウイルス、重症化を防ぐ方法はある? 医師が解説する「母子免疫ワクチン」登場の意義

吉澤恵理
2025.09.26 09:52 2025.09.25 12:00

泣く赤ちゃん

赤ちゃんにとって、RSウイルス感染症は決して軽く見てはいけない病気です。毎年多くの乳児が感染し、なかには入院や重症化に至るケースもあります。近年はその流行時期にも変化が見られ、以前は秋から冬にピークを迎えていたものが、2021年以降は春から初夏にかけて増加し、夏に流行のピークが来る傾向が報告されています。

ただし、年や地域によって流行の時期や規模は異なるため、注意が必要です。さらにコロナ禍が明けたことで、ここ数年は大きな流行が起きており、低年齢での発症や重症例が増えていることも懸念されています。

これまでRSウイルスの予防は感染リスクが高い赤ちゃんを対象とした抗体製剤に限られていましたが、2024年に「母子免疫ワクチン」が登場し、より幅広い赤ちゃんを守る新しい選択肢が加わりました。今回は、三軒茶屋Artクリニック院長の坂口健一郎先生に、RSウイルス感染症の基本から、従来の予防法、そして母子免疫ワクチンの意義まで詳しく伺いました。(取材・文/吉澤恵理)

鼻水、咳から始まり重症化する可能性も

寝ている赤ちゃん

――RSウイルス感染症とはどんな病気ですか?

RSウイルスは、2歳までにほとんどの子どもが一度はかかる呼吸器感染症の原因ウイルスです。鼻水や咳などのかぜ症状から始まりますが、乳児では気管支炎や肺炎に進み、入院が必要になることもあります。特に生後6か月未満の赤ちゃん

吉澤恵理

吉澤恵理

1969年生まれ、1992年東北薬科大学卒業。薬剤師として長年医療に携わった経験から医療領域、また教育領域を得意とするジャーナリスト。メディアでの執筆、連載やTV出演など多数。プライベートでは、結婚、妊娠、出産、離婚、介護と様々な経験を経て、現在4人の子を育てるシングルマザー。

坂口健一郎

三軒茶屋ARTレディースクリニック院長。防衛医科大学校を卒業後、九州大学付属病院などで研鑽を積む。専門は生殖医療・腹腔鏡下手術。患者一人ひとりに寄り添う診療を大切にしている。