たった“ベッド1台分”でOK? 思春期の子に必要な“自分だけの空間”の作り方
思春期の子どもにとって、“自分だけの空間”は心の安定を保つために欠かせないもの。しかし、「家が狭くて子ども部屋を用意するスペースがない…」という家庭も多いかもしれません。たった“シングルベッド1つが置ける広さ”でも十分なパーソナルスペースは作れると、一級建築士であり模様替え作家でもあるしかまのりこさんはいいます。
限られた間取りでも子どもが安心して過ごせる“心の逃げ場”の作り方を、具体的な広さや配置の工夫とともに紹介します。
※本稿は、『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(しかまのりこ/彩図社)から一部抜粋・編集したものです。
思春期の子どもにとってパーソナルスペースは必要不可欠
パーソナルスペースとは、一般的には他人に近づかれたくない距離、という意味で使われますが、ここでは一人になるためのスペースという意味で使用します。
子どもが中学生になる頃には、プライバシーの確保が大切になります。とくに思春期の子どもは、親と適度な距離を保つための空間が自宅にないと、干渉されているように感じストレスを溜めやすくなります。そのため心の逃げ場としての、自分だけの安全なパーソナルスペースが必要になります。
このパーソナルスペースですが、子どもの数だけ部屋があれば、1人に一部屋、子ども部屋をパーソナルスペースとして与えることができますね。しかし、現状の住宅事情では難しいことも多いかと思います。その場合は、1つの部屋を仕切るなどしてパーソナルスペースを作る必要があります。
シングルベッド1台分の広さがあればよい
では、子ども1人のパーソナルスペースは最低どのくらいあればよいのでしょうか?
子どもの性格にもよりますが、一人で眠れる空間=最低でも部屋の内寸で“シングルベッド1つ(≒幅1メートル×奥行2メートル)が置ける広さ”が必要です。約2㎡ですので、1畳を1.62㎡だとすると、1畳より少し大きい程度の広さです。(図2-1)
このシングルベッドが置けるスペースがあれば、布団敷きにすれば折り畳みのデスクも置くこともできます。またロフトベッドなど高さのある家具を使えば、下部にデスクなどを置くこともできます。
さらに部屋に余裕があれば、幅1メートル程度のデスクを置ける広さを追加し、幅約2メートル×奥行約2メートル、つまり約4㎡、2〜2畳半の広さをパーソナルスペースとして確保できるとよりよいでしょう。この広さを確保していればデスクの代わりに大きめの収納を置くこともできます。(図2-2)
子どもが複数人いる場合は
間取りにもよりますが、子どもが2人以上いる場合は、先ほどの寸法を基準にして、子どもの数でかけ算をすれば必要なスペースを計算することができます。
ただし、間仕切りや間仕切り収納を入れたい場合はその寸法(約15〜40センチ)を足してください。また間取りと家具の置き方によっては動線が出てきますので、動線が必要な配置になる場合は幅60〜70センチ程度の動線スペースも計算しましょう。(図2-3)
するとたとえば子どもの数が2人の場合は2倍、つまり2畳半に間仕切りを加えて3畳あれば最低基準は満たせます。
もし部屋が狭くてシングルベッドと机分のスペースを人数分取ることができなくても、ベッドを二段ベッドなどにすることでパーソナルスペースへの対応は可能です。二段ベッドは、カーテンを付けたり蚊帳を付けたりすることで、プライベート性が増します。
これならなんとかなるご家庭は多いのではないでしょうか。
子ども2人用として5畳半程度の部屋(内寸が3メートル四方)が準備できる場合は、間取りにもよりますが、二段ベッドにしなくても机と寝床を備えた2人分のパーソナルスペースを作ることが可能です。(図2-4)
間仕切りをしたい場合は、前述のように間仕切りの厚さを足してください。
このように計算すると、もし4人子どもがいたとしても、12畳の子ども部屋があれば少し余裕のあるパーソナルスペースを用意してあげることができるとわかります。(図2-5)
狭い部屋でパーソナルスペースを確保する際の注意点
パーソナルスペースを作る場合、窓の位置や照明・コンセントの位置にも注意してみましょう。
窓はできるだけ家具でふさがないようにするのがベストです。
また照明はダクトレールを使えば複数個に分割できます。
コンセントは延長コードを使用するのが一般的ですが、延長コードは邪魔になりやすく、転倒やショートなどの危険もあります。そのため、持ち家なら電気店やスキルマーケットなどの電気工事士にコンセント増設工事を依頼するなども検討しましょう。
『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(しかまのりこ/彩図社)
「おもちゃや絵本、学用品があふれていて家が片づかない!」
「子ども部屋を作ってあげたいけれど家が狭くてスペースがない」
そんなお悩みを、一級建築士であり模様替え作家でもある著者が解決。さまざまな家族構成と間取りの実例を掲載したので、役立つヒントが満載です。