子どもの不登校、親は家にいるべき? 約20%が退職・休職の今、親に伝えたい「手を抜く勇気」

福田遼
2025.11.05 14:28 2025.11.21 19:00

小学生の女の子を見つめる母親

この記事の画像(2枚)

わが子が不登校になると、「仕事を辞めて家にいたほうがいいのだろうか」と悩む親御さんも少なくありません。
実際、子どもの不登校をきっかけに約20%の親が退職・休職しているという調査もあります。

けれど、不登校の子どもに寄り添ううえで、親がずっと家にいることが本当に最善なのでしょうか?
不登校支援の専門家・福田遼さんの言葉から、そのヒントをお届けします。

※本稿は、福田遼著『不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方』(KADOKAWA)より一部抜粋、編集したものです。

子どもをひとりにしてもいい。自分の時間を大切にしよう

わが子が不登校になったとき、「仕事をやめないといけないだろうか」と悩む親御さんはとても多いです。幼い子どもが常時家にいることになるため、勉強を見たり、世話をする必要がある。ときには学校への送り迎えが必要になることもあるでしょう。ですから、離職も自然と頭の中に浮かぶ選択肢なんだと思います。

ある調査(※1)によれば、実際に子どもの不登校をきっかけにして、約20%の方が退職・休職し、約14%が雇用形態を変更しているといいます。早退・遅刻・欠勤が増えた方なども含めると、就労状況に影響が生じているご家庭は約7割にのぼります。

けれど、僕は不登校だからといって、ずっと親が家にいなくてはならないわけではないと思っています。もちろん、お子さんの年齢や状況などさまざまな事情があるとは思いますが、基本的にはお子さんを家にひとりにしてもいいと思っているんです。

なぜなら、お子さんによっては、親が家にいてくれること自体が、学校を休む大きなメリットになることもありますから。

それに、不登校であっても、そうでない子と同じように、いつかの自立に向けたステップをふんでいかなくてはなりません。 一生親が付きっきり、というわけにはいきませんよね。

「家に子どもひとりにさせたらなにをしているかわからない」「ゲームばかりしているかも」なんて心配も無用です。ちゃんとやるべきことがわかっていたら、子どもはしっかりやれる力がありますから。つまり、自宅でやれる行動の一覧(メニュー表)をつくっておけば、それで大丈夫なんです。

不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方

そもそも「家にいるなら学校と同じスケジュールで過ごすべき!」「しっかり管理して勉強をやらせなくちゃ!」と考えてしまうから、親も子もしんどくなってしまうんだと思います。「仕事をやめて面倒をみるべき」という考えも、ここに起因するのではないでしょうか。

そうではなくて、「メニューの中のひとつでもできていたらいいよね!」というヨイ出し(※)のスタンスで考えましょう。すると、子どもは楽しく自分なりにがんばれるし、親御さんの負担も少なくて済みます。手を抜くことは悪いことではないし、子どもから離れて見守るのはほったらかしとは違います。仕事をしたり、趣味に没頭したり、友だちとゆっくり話したり。自分自身の時間を持つことは、みなさんの人生にとってとても大切です。

※ヨイ出しとは、お子さんの行動の良い側面を積極的に探し出し、それに対して肯定的な言葉をかけるコミュニケーションの方法です。

大丈夫です。時間はかかるかもしれませんが、「好きなことから」「スモールステップで」できることをやっていけば、必ず自己効力感が育まれます。ヨイ出しの視点を持って接することで、親子の土台をたしかにしていくこともできる。お子さんはどんどん意欲的に、生き生きと成長してくれるはずです。

反対に、厳しく管理して、無理に学校と同じだけ勉強させたとしても、すぐに再登校できる保証はありません。むしろ、親子共に傷だらけになったり、ぐったり疲弊してしまうリスクのほうが大きいと思います。

そもそも、親の思い詰めた顔を見て、子どもは幸せを感じられるでしょうか?答えははっきりNOです。どれだけ言葉で繕っても、子どもは親の表情から、敏感に感情や考えを察知しています。親がイライラしていたり、忙しそうだったり、つらそうだったりしたら、その感情が伝播するものなんです。「僕のせいでお母さんがつらそうだ」と自分を責める子もいます。

親が自分の時間を持つ。親が幸せな表情で過ごす。 そうすることで、子どもは自立していくし、心から笑顔になることもできるんだと思います。

不登校の子を支えるみなさんに大きな声で伝えたいです。もっと手を抜いて、もっと自分自身の笑顔を意識していきましょう。 あなたの心の負担を減らすことが、お子さんの幸せにもつながるのですから。


福田遼

福田遼

1995年福岡県生まれ。九州大学教育学部卒業後、5年間の小学校教諭を経て退職。その後8カ月にわたり世界各地の教育施設を訪問。 2023年4月に旧友・秋山とともに始めた『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』ではMCを務める。24年に株式会社Teacher Teacherを組織し、無料オンラインフリースクール「コンコン」をスタート。

不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方
福田遼著『不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方』(KADOKAWA)

不登校の児童は増え続け、いまや全国で30万人を突破。
「原因がわからない」「どう支援すればいいのかが見えない」
現代の“令和型不登校”は、従来とは異なる複雑さを抱えています。
それなのに、「親のせい」「育て方が悪い」という空気や発言がいまだに見られることも事実です。

本書の著者・福田遼さんは、元小学校教諭。憧れだった教員に​なって、「不登校問題」に直面しました。
学校に行けない子どもたちを救うことができなかったと、自分の無力さを痛感。
大好きだった教員を辞め、不登校問題をなんとか解決できないか、新しい仕組みを学びたいと、世界18カ国の教育現場を回りました。
そして、注力していた不登校支援を実践するべく、無料のオンラインフリースクール「コンコン」を立ち上げたのです。
子どもが自分の進みたい方向を見つけ、一歩踏み出す自信と力をつけられるように、日々子どもたちに向き合っています。

この本では、福田さんがこれまで培ってきた知識・経験・実績を総動員し、「不登校は親のせいでも子どものせいでもない」という前提のもと、
子どもが自信を取り戻し、将来幸せに生きていくためのメソッドを具体的にお話していきます。

どうにかまた学校に行ってほしくて、あれこれ子どもに働きかけている方。
いろいろやり尽くして、子どもの再登校はもう諦めたという方。
「学校に行きたくない」と訴える朝が増えて、不登校を間近に感じている方。

そんな方に、ぜひ読んでいただきたい内容になっています。

子どもの未来を諦めないすべての方へ。
不登校という状況を、自信を取り戻すチャンスに変えるための1冊です。