「うざい」「育ててくれと頼んでない」…子どものきつい言葉を“反抗期だから“で片づけないほうがいい理由

こど看
2025.12.18 11:20 2025.12.19 11:50

高校生の男子

時に強い言葉を投げつけてくる10代の子ども。しかし、「反抗期だから仕方ない」という言葉で片づけてしまうことで、子どもが発している大切なサインを見逃してしまうことがあります。

精神科認定看護師として多くの10代と向き合ってきたこど看さんが、強い言葉の裏に隠されたこどものSOSについて解説します。

※本稿はこど看著『児童精神科の看護師が伝える 10代のこわれやすいこころの包みかた』(KADOKAWA)より一部抜粋、編集したものです。

どうして「反抗期」があったりなかったりするのか

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いわゆる「反抗期」はあったほうが良いのでしょうか、それとも無いほうが良いのでしょうか。この問いに答える前に、私が勤務している児童思春期精神科病棟の現場のことをお話しさせてください。

実はこの「反抗期」という言葉、私の勤める病棟ではあまり耳にしないのです。というのも、この文章を書きながら、ふと「あれ? そういえば使っていないな……」と気付いたからなのですが、これは単なる偶然ではなさそうです。なぜなら、この「反抗期」という言葉は、子どもの反抗的な言動への理解を妨げてしまう可能性を大いに秘めた言葉だからです。

例えば、子どもが「クソジジイ」「育ててくれなんて頼んだ覚えはない」などの強い言葉をぶつけてきたとき、私たち大人は傷ついたり、イライラしたり、落ち込んだりするものです。私自身も、新人の頃に子どもの反抗的な言動に対して「今なんて言ったの!?」と感情的に反応してしまい、帰りのバスで毎日セルフ反省会を開催していました。バスに揺られながら、「どうしてあんなひどいことを言えるんだろう……」「大人だって傷つくんだからね!?」「まあ、反抗期だから仕方ないのかな……」と脳内で自問自答していたのですが、もし、あの頃の自分にひとことだけ声をかけられるとしたら、「子どもであっても、理由なき反抗はないんやで」という言葉を贈ります。

「言い訳はいいから」と子どもの話を遮ってしまうのは簡単です。しかし、子どもの話に耳を傾けると、「あ、そういうことだったんだ」と納得する瞬間が、意外と、というか、かなり多いのです。

例えば、「あの先生はうざいからもう挨拶しない」と高らかに宣言したAくんがいたとします。このような強気の宣言を受けると、大人は「先生には挨拶しなきゃさ……」とすぐに正論&お説教モードになりがちですが、まず大切なのは「なぜAくんは先生のことをうざいと感じているのか」に関心を向け、理由を聞くことです。実際にAくんの話を聞くと、その先生にはちゃんと挨拶をしたのに「声が小さい」と何度もやり直しをさせられたそうです。Aくんは「どうして僕の声は先生に届いているのに怒られなきゃいけないの?」と納得できず、「挨拶しましたよ?」と返したそうです。しかし、先生は「挨拶の声は大きくないとダメ」と、理にかなっていない説明を繰り返すばかりなので、Aくんにとってその先生は「うざい先生」になってしまったのです。

このように、大人には「言い訳」に聞こえる子どものやや強引な言い分は、子ども自身が抱えている「納得できない思い」や「わかってほしい気持ち」の表れかもしれないのです。自分の思いをわかってもらえない苦しさから、時に強い言葉や態度を出すことで、「わかってくれよ!」と大人に助けを求めている可能性があります。

だからこそ、「反抗期だから」とその子の状態を決めつけたり、子どもの話を「言い訳だ」と安易に判断して話を遮ったりしないでほしいのです。おそらく、そのような決めつけをする大人に対して、子どもはより反抗をすることでしょう。なぜなら、その大人は自分という存在ではなく、「反抗期」という言葉だけを見ているからです。

発達心理学上では、幼児期のいわゆる“イヤイヤ期“を「第一反抗期」、思春期のいわゆる“反抗期“を「第二反抗期」と呼びますが、それぞれ必ず出現するものではありません。そのため、「反抗期」というラベルを一方的に貼ってしまうと、(P20の「思春期」と同様に)その子が見えなくなってしまう可能性があるため、私はこの「反抗期」という言葉を慎重に取り扱うというか、ほとんど使わないのです。

冒頭にあったように「反抗期はあったほうが良い、無かったら良くない」といった話もよく聞きますが、正直な話、私は「反抗期」という言葉にとらわれること自体が、目の前にいる子どもの思いや気持ちを軽視することにつながるのではないかと思うのです。大切なのは、「反抗期かどうか」ではなく、「この子が今、どんな気持ちでこの言動をしているのか」に目を向けることではないでしょうか。

子どもであっても、理由なき反抗はありません。その子が示す反抗の裏には、切実な思いが隠れているかもしれないのです。だからこそ、正論や説教で子どもを押さえつけたり、ましてや「反抗期」とレッテルを貼ったりするのではなく、子どもの主張に耳を傾け、しっかりと受け止める。その姿勢こそが、子どもの反抗を理解するための基本姿勢だと私は思うのです。

こど看

精神科認定看護師。精神科単科の病院の児童思春期精神科病棟に10年以上勤める。現在も看護師として病棟勤務しながら、「子どもとのかかわりを豊かにするための考え方」をSNS等で精力的に発信中。著書に『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)がある。メンタル系YouTuberの会所属。一児の父。

X:@kodokanchildpsy

児童精神科の看護師が伝える 10代のこわれやすいこころの包みかた

こど看著『児童精神科の看護師が伝える 10代のこわれやすいこころの包みかた』(KADOKAWA)

「反抗期」「思春期」というラベルを外してみよう

累計6万部突破の『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』に続く第2弾。
今回は10代、主に「思春期」や「反抗期」と呼ばれる時期にさしかかった子どもたちとその保護者のために、著者がやさしく語りかけます。
親子のあいだはもちろん、学校や友人とのあいだでもとにかくトラブルが起こりがちなのがこの時期。子どもたちとの向き合い方に加え、スマホやSNS・ゲームと課金、不登校・OD(オーバードーズ)・自傷行為など、今どきの子どもたちを取り巻く背景や事例を取り上げ、気持ちのもちようと子どもへの寄り添い方、解決策を探ります。
大人が思うよりもこわれやすい10代の子のこころを、包み込んでくれるような一冊です。