「子どもの免疫力が大人より低い」は誤解? 小児科医が伝えたい「病気と免疫の正しい理解」

吉澤恵里

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RSウイルス、手足口病、マイコプラズマなどの感染症が異例の広がりを見せ、多くの保護者が不安を抱えています。

 「子どもの大人に比べて免疫力は低い。感染症や病気から子供を守り、健康を維持するために免疫力を高めなければいけない」と考える親も多いと思います。ただその「免疫」を具体的に理解しているでしょうか?竹内小児科内科クリニック院長の五藤良将先生にお話を伺いました。(取材・文/吉澤恵里)

子どもの免疫システムにとって「集団生活」が重要である理由

―― 子どもの免疫について教えてください。

「免疫とは、私たちの体に備わっている自己防衛機能です。外から入ってくる細菌やウイルスを見極めて、排除しようとする働きですね。例えば、風邪をひいた時の症状を考えてみましょう。咳やくしゃみ、鼻水は、体が細菌やウイルスを排除しようとしている証なのです。ノロウイルスなどで下痢や嘔吐の症状が出るのも、同じ理由です」

―― よく『子どもは大人に比べて免疫力が低い』と言われますが、本当なのでしょうか。

「それは正確な表現ではありません。子どもの免疫システムは『低い』のではなく『発達途上』なのです。大人の免疫システムと比べること自体に無理があります」

―― 保育園や幼稚園に通い始めると、よく風邪をひくことを心配する声をよく聞きます。特に今年は手足口病やマイコプラズマなどの感染が広がりましたが、集団生活で注意する点はありますか?

「集団生活では、様々な細菌やウィルスに触れる機会が増えます。これは免疫システムにとって重要な学習の機会なのです。熱を出すのは、免疫機能がウイルスや細菌と戦っている証拠。この経験を通じて、子どもの免疫力は少しずつ強くなっていきます。ただし、重症化を防ぐための適切な予防と対策は必要です。具体的には、やはり手洗いの徹底が最も重要です。特に外から帰ってきた時、食事の前、トイレの後は必ず行いましょう。

手足口病やマイコプラズマなどの感染症は、子ども同士の密な接触で広がりやすい特徴がありますので、特に発熱や発疹などの症状がある場合は、重症化を防ぐためにも早めに医療機関を受診し、他のお子さんへの感染予防の観点からも、しっかり休ませることが大切です。

ただし、過度に神経質になる必要はありません。感染症との出会いは、子どもの免疫システムが発達していく上で必要な経験でもあるのです」

子どもの免疫力を高めるために大切なポイント

―― 子どもの免疫力を高めるために、親ができることはありますか。

「基本は三つです。『よく食べる』『よく動く』『よく眠る』。これが免疫力の土台となります。特に外遊びは重要です。太陽の光を浴びることで体内時計が整い、成長ホルモンの分泌も促されます」

―― 具体的な生活面での注意点を教えてください。

「一日3食、バランスのよい食事を心がけましょう。野菜に含まれるビタミンは免疫力を高める効果があります。また、乳酸菌や発酵食品は腸内環境を整えるのに役立ちます。

睡眠も重要です。良質な睡眠により成長ホルモンが分泌され、これは免疫力アップに欠かせません。そして、意外と見落とされがちなのが心の健康です。過度な制限や叱責は、子どものストレスとなり、免疫力の低下につながることがあります」

―― 最後に、保護者へのメッセージをお願いします。

「過度な心配は禁物です。子どもの体には素晴らしい力が備わっています。その力を信じながら、バランスの取れたサポートをすることが大切です。そして、体調の変化に気づいたら、躊躇せず医療機関を受診してください」