急いでいる朝に限って「自分で履く!」…たった1分待つだけで子どもの挑戦心が育つ理由

丘山亜未
2025.12.10 13:25 2025.12.22 11:50

玄関先でぐずる子ども

忙しい朝に限って自分でやりたがる子どもに、焦ったりイライラしたりしてしまう親御さんは多いでしょう。

急いでいるときほど「早く!」と声をかけたくなりますが、子どもの「自分でやりたい」をたった1分待つことが、成長の鍵なのだそうです。モンテッソーリ教師の丘山亜未さんの著書から、モンテッソーリ流・子育てのヒントをご紹介します。


※本稿は、『1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと』(丘山亜未/青春出版社)から一部抜粋・編集したものです。

1分だけ、子どもを待ってみる

「ジブンで!」
玄関で靴を手にした瞬間、子どもが言いました。
よりによって時間がないときに限って言うのです。

急がないと電車に間に合わない、遅刻してしまう……。
大人が手伝えば一瞬で済むのに、とイライラがふくらみます。

「今じゃなくてもいいでしょう!」
そう言いたくなる気持ちは、きっと誰にでもあるでしょう。

けれど、この「自分でやりたい」という声は、とても大切な合図です。なぜなら、子どもがいろいろなことが「できる」ようになるのは、大人がやらせようとしたときではなく、子どもが自分で「やりたい」と感じときだから。
その言葉が出たら、「今」が、任せるタイミングです。

もちろん、すぐにはうまくいきません。時間がかかったり、手間取ったり、思わず手を出したくなる瞬間もあるでしょう。でも、1分でもいいから待ってみてください。毎日ほんの少し、子どもに「時間のプレゼント」をするつもりで。それはお菓子やおもちゃには代えられない、未来へと続く特別な贈りものです。

「やりたい」を待ってもらえた経験は、やがて「できた!」の瞬間につながります。その喜びは、小さな達成感と自信を連れてきて、「またやってみたい!」につながります。

その“ジブンで”は、未来へ続くいちばん大切な種。
今日、1分どこかで待ってみませんか?

「早く!」と言う代わりに、できていることを伝える

真剣な顔の子ども

ゆったりした動きのハル君。お母さんはつい「マイペースなんだから」とぼやいてしまいます。
けれど、ハル君はやることがわかっていないわけでも、話を聞いていないわけでもありません。ただ、自分のリズムでじっくり取り組んでいるのです。

時間感覚がまだない子どもにとっては、「今この瞬間」がすべて。
大人から見ると「早く!」と言いたくなる場面でも、子どもは自分の歩調で世界と向き合っています。1つひとつ、見て、ふれて、動かして、やってみて、物事を理解しようとしているのです。
その最中に、「急いで!」「いいから!」「貸して!」とリズムを崩されたり、取り上げられたりすると、「自分」のペースで進めないことにいら立ちを感じたり、やる気がなくなったりしてしまいます。

思い返せば、私たちにも、そんな頃がありました。
どんぐりをポケットいっぱいに集めたこと。ただ雲を眺めていたこと。アリの動きをいつまでも追いかけていたこと。
「意味」や「効率」なんてなく、ただ「今」を、心いっぱいに味わっていた頃。
それが保証されるのは、子ども時代の特権です。

大人になった今、私たちは時間や予定に追われて、毎日を過ごしています。
だからこそ、少しだけ意識して子どものリズムを思い出したいものです。
「早くして!」と言う代わりに、「片方履けたね」と声をかけながらほんの少し待ってみる。急ぐときには、事情を説明する。
そんな小さな時間が、子どもの「自分で進みたい」という力を育てていきます。

丘山亜未

株式会社kototo代表。モンテッソーリ教師。
モンテッソーリ幼児教室「ちいさないす」および、モンテッソーリの学びを広げる教育事業「kototo Montessori Life」を主宰。
会社員として15年ほど勤務し結婚・出産。娘の入院生活をきっかけに、乳幼児の発達や育ちについて学びはじめる。知識が増えるごとに子育てがラクになったことから、学びのシェア会を開催。次第に問い合わせが増え、乳幼児教室をオープン。どうすれば親子が幸せに暮らせるかを模索する中、モンテッソーリの「平和は教育でしかなし得ない」という言葉に出会い、モンテッソーリ教師となる。
子どもの“好き”や“才能の芽”を丁寧に育て、親が自分らしいまなざしで子どもと向き合えるようになるための教育・支援を行っている。モンテッソーリ教育と心理学の視点を組み合わせ、子どもの安心と成長を支える独自のプログラムや講座を展開。これまでに25,000組の親子を支援し、幼児教室・オンラインセミナー共に常に満席となる。

Instagram:@amiokayama

1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと

1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと』(丘山亜未/青春出版社)

本書では「モンテッソーリ流・子育てのヒント」を100個紹介。
忙しい方でもできるように、最短10秒でできるような「簡単でシンプルなことだけ」を厳選してまとめました。
どこから読んでいただいても構いません。空いた時間に、1日たったひとつでいい。そのひとつで、子どもとの暮らしがガラリと変わります。
気になったものから、試してみてください。