高校受験ならではの良さは? 一貫校の教員が実感した「内部生と外部生」の違い

中学受験ブームの一方で、実は高校受験だからこそ得られる力があることは、あまり語られていません。中高一貫校に中学から入学する生徒と、高校受験を経て入学する生徒。その両方を見てきた一貫校の教員が感じた、「高校受験でしできない体験」とは?
一貫校教員の谷咲先生の著書よりご紹介します。
※本稿は、谷咲著『中学受験に向いてる子 向いてない子』(Gakken)より一部抜粋、編集したものです。
一貫校の教員だからこそわかった「高校受験の良さ」

実は私立の中高一貫校といっても、いくつかのタイプに分かれることをご存知でしょうか。その分け方はさまざまですが、中でも「高校募集があるか・ないか」はかなり大きなポイントです。
近年、公立の一貫校も含めて、高校募集(高校受験で入学者を選抜する)を行っていた学校が、完全6年一貫(中学受験でしか選抜を行わない)に変更するという傾向が見られます。しかし依然として高校受験での進学者を受け入れる学校もあります。たとえば私立だと、開成高等学校、慶應義塾女子高等学校、渋谷教育学園幕張高等学校、国立ならば筑波大学附属駒場高等学校など。各校、その意義について思いがあることがうかがえます。
私はこれまで、「高校募集のある学校・ない学校」両方の学校での勤務経験があります。その経験を通して、中学受験で入学した生徒と高校受験で入学した生徒ではそれぞれ、入学後の様子に大きな違いがあることを感じてきました。中学受験と高校受験は、「どちらが良い・悪い」という評価ではなく、「どちらのほうが、その子に合っているか」で判断すべき、ということに気づかされたのです。
高校受験のほうが自立心が芽生える可能性も高い

高校受験の最大の特徴は、「自分の意志と行動で進路を切り拓く経験」ができることです。
中学受験では、受験生の年齢上、どうしても親の関わりが深くなり、塾との調整や志望校選びは親主導で進むことが多い傾向にあります。もちろん、家族でチームとなって目標に向かう、その時間はかけがえのない経験です。
しかしその構造上、「親の意思が色濃く反映された受験」になることもあり、場合によっては、最後まで本人が「受験を自分事にできない」「自分で決めた、という実感を持てない」で終えてしまうケースもあるようです。
高校受験は、まさにその逆となります。主役は完全に本人。どんな環境で、どんな学校生活を送りたいのか。そのためにはどのくらいの努力が必要で、どれほど自分を追い込むことができるのか。進路を自分事として考え行動する、またとない実践の機会になるのです。
自分で学校を調べ、説明会に行き、先生や先輩の話を聞く。そして当然、必要な知識を身につけ、入試に備える。つまり高校受験は、「誰かにやらされるもの」ではなく、「自分のためにやるもの」という意識を自然と持たせてくれるプロセスなのです。
高校受験時の年齢も、非常に大きな意味を持ちます。個人差はあるものの、中学生の頃には思春期を迎え、親への反発心が生まれ出す頃です。親として「失敗してほしくない」「その後の進路まで考えると、高校受験ではこうすべき」といった意見を伝えたくても、聞き入れるかは本人次第。つまり、コントロールしたくても、親の思い通りにはいかないのが高校受験といえます。
私が教員として勤務経験のある私立一貫校の一つに、高校からの募集も行う学校がありました。中学受験を経て入学する生徒の「内部生」と、高校受験を経て入学する生徒の「外部生」がともに学ぶ環境で、気がついたことがあります。
たとえば、定期テストや課題提出では、後述の通り、「高校受験」を経験してこそ培われる力によって、外部生の取り組みの質の高さに驚かされることが多かったのです。
内部生の中にも、もちろん力のある子はいます。しかし、「中学から高校へ流れで進級した」という意識でいる子も少なくないのが実情です。高校受験をしないことは悪いことではありませんが、進級がある程度保証されている環境によって、「意志ある選択や行動」の意識が薄れているともいえるでしょう。
私が情報発信をする中で知り合った方の一人で、お子さんの中学受験と高校受験、両方を経験された方の印象的なエピソードを紹介します。
「息子の中学受験の時は私が先導して、毎日の勉強や時間の管理をしていました。もちろん中学以降に備えて、谷さんに教わったステップで自学自習できるようになるための準備はしていましたが……。今、娘の高校受験は、思春期ということもあり口出しはできません。この前は少し声をかけただけで、『信じてないの!?』とへそを曲げられてしまいました。高校受験はひたすら見守る、ですね。でもその分、勉強にはあまり積極的でなかったわが子が自分で動くようになった変化も見られ、日に日に成長を感じています」
「親」が舵取りをする中学受験。一方で、行き先もそこへどうたどり着くかも「子どもが自分で」舵取りをする高校受験。当然、親の役目はそれぞれ全く違ってきます。子どもの年齢が上がるにつれ、親の出番が少なくなることに不安を覚える方も多いかもしれません。
しかし、子どもが自分で決めた道を自分で歩いてゆく経験は、その後の大学受験、就職活動、自分の人生をどう豊かに生きていくかを考える際にも、得るものが大きいのではないでしょうか。
合否という結果ももちろん大切です。しかし15歳という年齢で「自分の決断と行動に責任を持つ」経験ができるのは、高校受験だけ。そしてその経験は子どもにとっても、親にとっても、人生の大切な節目となり得るのです。
谷咲著『中学受験に向いてる子 向いてない子』(Gakken)
私立中学校・高教の両方で教鞭を執った現役の教員だから知っている!
【中学受験「後」の実態】に焦点を当て、中学受験向き・不向き(=高校受験向き)の子の適性を解説。
最善の進路や、受験や将来に向けた最善の対策を指南する。






























